第百十八話 大乱戦
学園から突如として飛ばされたタクミ達、周りは森林に包まれた場所、突然の出来事に戸惑うタクミ達。 その中で唯一ケシキだけは相も変わらず無表情のまま、魔力を放出し続けている。
「な、何だ?」
しかし、驚いているのは飛ばされた本人たちだけではない。
タクミたちが飛んできた場所には他にも大勢の人間が居た。
アヤネ率いる魔法警察達、そしてソレと対峙している暗夜ホセ。
アヤネ達は突然現れたタクミ達に驚いていると、ホセは笑みを浮かべながらこの場所へとやって来た少年を呼び寄せる。
「こちらへ来い! 夏野ケシキ!!!」
ホセがケシキの名を呼ぶと、彼はホセの元まで一瞬で移動する。
「ケシキ!?」
弟が謎の男の言葉に従っている事にナツミが彼の名を呼ぶ。
しかし、やはりナツミの呼びかけに彼は相変わらず答える様子がない。
「なんだよこれ! どういう状況だ!?」
「私だって解らないよ! 何、何なの!?」
「え、えっ~と・・・!」
正直、タクミ達には何が何だかまるで状況を飲み込むことが出来なかった。
だが、唯一自分たちがまるで違う場所まで一瞬で飛ばされたことをタクミとミサキは理解した。かつて、ミサキとタクミはこのような現象を引き起こせる人物、金沢コンゴウと戦った事があるため、この現象に関しては理解できたのだ。
「これは・・・別の場所に〝転送〟させられたのか?」
「うん、金沢先生の時と同じみたい・・・」
「え、何々?」
タクミとミサキの会話についていけず、頭の上に疑問符を浮かべるレン。
そして同じくこの場所までやって来たナツミはホセの傍にいる弟へと声を掛ける。
「どうしたのケシキ! 何故その男の命令を・・・まさか!!」
「おや、この子の知り合いか? 残念だが今の彼にはこの俺の声以外は届きはしない」
「!・・・そうか、あなたが一連の事件の犯人という事ね!!」
ナツミは弟を苦しめたきっかけを与えたホセを射殺さんばかりに睨み付けた。
その様子を見ていたアヤネ達はおおよその事情を読み取った。
どうやら、此処に現れた五人の男女の内、ホセに付き従っている少年もまたこの男の被害者なのだろう。
「さて、これで終わりではないぞ!!!」
するとホセは大量のどす黒い宝石を辺りへと散りばめる。
地面に落ちた宝石はみな、怪しい光を放ちながら形を変え始めた。全ての宝石は粘土細工の様に変形し、そのサイズも人間台の大きさまで膨れ上がっていく。
「なんだ・・・・?」
アヤネは目の前に出現した粘土細工の様な物体を注意深く観察する。
ソレはまだ形状を変化し続け、そして最終的には人の形を型どった。そこに色素が加わり、その変形した物が正体を現した。
「なっ! 人間になった!?」
レンの驚愕を含んだ声が辺りに響く。
そう、小さな宝石は質量まで変えて人間と変化したのだ。しかし、それらは全て瞳に光が宿っておらず、ましてや心そのものすらあるように思えなかった。
その時、ミサキがその人形の一つを見てタクミの肩を叩く。
「タ、タクミ君、あの人って・・・」
「なっ! あの時の!!」
変形した人形の一つを見てタクミは文房具店での激闘を思い出す。
「あの時の・・・暴徒じゃないか」
人形の一人にはタクミが鎮圧した暴徒の青年の姿が確認できた。
それに続けるよう、アヤネも口を重ねる。
「こいつら・・・全員この事件で意識不明となっている者達ではないか!」
「その通り」
ホセはニヤニヤと笑いながら、自分がばらまいた魔道具の説明を入れて来た。
「俺の持つこの魔道具は〝LIFE・GIVE&POWER・TAKE〟・・・己の命を差し出す事でその見返りに力を引き出す道具だ」
「なっ! 命を!?」
ホセの言葉を聴いたナツミの顔から血の気が引いて行き、その顔は青くなっている。
だが、ホセはそんな彼女の様子を見て説明を続ける。
「まあ落ち着きなさいっての。今は意識不明の連中やここに居る夏野ケシキの命に直接被害はない。命を奪うのは、意識が途切れてからも魔力を吸い続けるこの魔道具の魔力の徴収に肉体が耐え切れなくなった場合に死ぬという事だ」
ホセの言葉にとりあえずほっとするナツミであったが、しかしすぐに気を引き締めた。
逆に言えば、この魔道具は延々と魔力を吸収し続けるという事。意識が無い人間からすらも魔力を吸収し続ければ、たしかに命に係わる。
すると、今度はナツミから疑問が投げかけられた。
「力を引き出す・・・ならばそこにいる人形共は何だ?」
ホセはアヤネの方に振り返り、その答えを言う。
「この魔道具は二組で一つでね。片方が魔力を吸い取り、もう片方が力を引き出す効果を持つ。俺が渡してきた方は力を引き出し、俺自身携帯していた方が定めた相手の魔力を吸収する」
ホセは人形達に視線を向ける。
「そして、この魔道具は吸収した魔力を元にその人物の姿を再現できる。ここに居る人形共がそれだ」
「じゃあケシキがあなたに従っている理由は何!」
「それもこの魔道具の力の一つ・・・」
ホセは嫌らしい笑みを浮かべながらそばで控えているケシキの頭をぺしぺしと叩く。
その行為にナツミは歯ぎしりをしながらホセのことを睨み付ける。
「この魔道具全てにはあらかじめ俺の魔力を潜ませている。その結果、これを使用した者は力を引き出すだけでない・・・この俺の魔力を取り込み、俺の操り人形となる」
「ぐッ!?」
「さて、他には何か質問は?」
おどけた様な態度でそう言うホセの態度にナツミは拳を強く握りしめる。
「(こんな、こんな奴に私の弟は!!!)」
彼女の握りしめている拳には爪が食い込み、出血している。
彼女と共にやって来たタクミたちもホセに対して怒りの瞳を向けていた。
「状況はよく解んないけどさ・・・あいつがクソだって事はよく解ったよ」
「ああ、レンに同意だ」
レンとタクミがそう言っている二人の後ろでは、なにも言ってはいないがミサキも同じ思いを抱いていた。
そこへ、アヤネがホセに拳銃を突き付けながら一つの答えを事前に求めた。
「私から最後に質問がある。ここでお前を捕まえその魔道具を破壊すればお前の毒牙にかかった者達は元に戻るのか?」
「・・・・・ああ、そうだね」
「!・・・そう、安心したわ」
ホセの言葉にナツミは〝換装〟の魔法を使用し両手に双剣を呼び出した。
「ここであなたを斬ればケシキも元に戻るのね?」
「待て! ここは我々で対処する、キミ達は下がっていろ!!」
「うるさいッ!!!」
ナツミはアヤネの制止も聞かずにホセへと迫って行く。
しかし、そこで人形達が彼を守るように展開する。
「ちぃッ! 全員、暗夜ホセの身柄を押さえろ! あの少年以外は人形だ、遠慮する必要もない!」
「「「了解!」」」
アヤネ率いる魔法警察の者達もホセの身柄確保のために動き始める。
「ちっ! うちの学園の生徒が操られているんだ、俺も加勢するぜ!!」
「同じく、あの男に一発ぶち込んでくるわ!」
タクミとレンの二人もナツミの後に続く。
その背後ではミサキも炎を展開させる。
こうして、学生、警察、犯人による大乱戦が幕を開けた。




