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魔法ができてしまったこの世界で  作者: 銀色の侍
二学期 クラス対抗戦編
129/200

第百七話 クラス別魔法戦闘、終了!!!

 ――ブオオオオオオオオオオッッッ!!!――


 タクミの放った≪金色魔力砲≫がヒビキを包み、その姿を隠した。

 彼の攻撃が通り過ぎ、魔力の奔流が流れ終わると・・・そこには――――


 「・・・・・・」


 ぼろぼろになりながらもヒビキが立っていた。

 

 「はは・・・なんて・・奴だよ」

 

 タクミはその場で地面に膝を付き、力なく笑った。

 そんなタクミの姿にヒビキは一つ、彼へと疑問を投げかけた。


 「お前がここまでやれたのは・・・お前が強く信頼している仲間とやらのお陰か?」

 「!・・・ああ、そうだ」

 「そうか・・・」


 ヒビキはそう呟くとタクミと同じくその場で膝を付いた。

 彼もまた、今の攻撃をまともに受け、もう戦闘不能直前の状態であった。


 「この俺を・・・ここまでにしたんだ。お前の言葉・・・馬鹿々々しいと素直に切り捨てられそうもないな・・・・・」


 ヒビキはタクミの姿を見る。そして、彼の状態はヒビキが改めて何故戦えたのか疑問を抱かざる負えなかった程に酷い物であった。

 最後の砲撃がぶつかり合う前から、至る所が傷つき、血を流し、特に頭部と背中からは大量の血が流れている。にも拘らず、最後の一撃で自分は負けた。そして、その時に見えた幻影・・・・・。


 「お前は・・・」

 「え・・・?」

 「お前は・・・お前達は凄いな」


 彼の口から発たれた言葉はAクラス五人に対する賞賛であった。

 その言葉を聴いたタクミは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに小さく笑みを浮かべた。


 「少しは・・・素直になれたみたいだな」

 「・・・ふん」

 「ははっ・・・」

 ――どさぁ・・・――


 最後に微かな声で笑うと、タクミはそのまま倒れて行った。


 ――Aクラス生徒一名脱落しました、残り人数二名です――


 そして、それに続くよう遅れてヒビキもその場で倒れて行った。


 ――Cクラス生徒一名脱落しました。残り制限時間四分三十一秒にてBクラス生徒、星野カケル以外の全生徒脱落。よって、優勝クラスは一年Bクラスとなります―― 






 アナハイムからの優勝報告約一分前、その優勝者、カケルは謎の少年と戦っていた。

 カケルの振るう羽根を全て手に持っている刀で切り捨てる謎の少年。


 「!・・・終わった様ですね」

 「ん?」


 少年はカケルから少し距離を置いて彼に話しかける。


 「ぶつかり合っていた魔力の反応が消えました」

 「ん・・・あっ、本当だ」


 目の前の相手に意識を集中していたため、離れで行われている戦闘が終了した事に気付くことが遅れたカケル。しかし、それは逆に言えばそれだけ集中しなければいけない程の相手であるという事でもある。

 すると、目の前の少年は懐から何かを取り出した。それは小さな球体。


 「魔道具、〝メモリークラッシュ〟。これに魔力を注ぎ込み破壊することで、魔力を注がれた対象者に関する記憶を消去します」

 「!?」

 「では、失礼します!」


 そう言って少年はその球体を手で砕く。


 ――ガシャアアンッ――


 砕けて四散した球体の破片から魔力が一面を覆い、カケルの意識を一瞬飛ばした。




 「ん・・・あれ?」


 飛んで行った意識が戻ったカケル。

 だが――――


 「えっと・・・?」


 自分の記憶が少し飛んでいる事にすぐに気付くカケル。

 確か、シグレがリタイヤしていき、その後Aクラスの人と戦い、そして自分の他に残っている他の二人の戦闘場所まで移動をしていた最中で・・・それで・・・・・。


 「ん~~?」


 こくんと首を可愛らしく傾げながら頭を悩ませるカケル。

 どうにも途中から自分の記憶が曖昧だ。そんな疑問を抱いているカケルの耳にアナハイムからの報告が入って来た。


 ――Aクラス生徒一名脱落しました、残り人数二名です――


 そして、そのすぐ後に続けてアナハイムの報告が入る。


 ――Cクラス生徒一名脱落しました。残り制限時間四分三十一秒にてBクラス生徒、星野カケル以外の全生徒脱落。よって、優勝クラスは一年Bクラスとなります――


 アナハイムから出て来た言葉は自分のクラスの優勝報告であった。


 「え・・・もう終わったの?」


 自分の意識があやふやな状態から目覚めた直後の優勝報告にカケルは再びこくんと小さく首を傾げた。






 アタラシス学園から離れた場所では、先程までカケルと戦っていた少年が学園の校舎を眺めていた。


 「最後のぶつかり合いで感じたあの魔力、凄まじい物でしたがまだ完全ではありませんね」

 

 少年は誰に話す訳でもなく、そう独り言を呟いた。

 

 「貴方はまだ、完全に個性の力を目覚めさせてはいない様ですね・・・兄さん」


 おかっぱ頭の少年はその言葉と共に、その場から消えて行った。






 「ん・・・ここは?」

 「おっ、目が覚めた」


 闇に沈んでいた意識が浮上するタクミ。

 彼は今、保健室のベッドの上で寝かされており、目覚めたタクミにレンが声を掛けて来た。


 「まったく、私以上の無茶するねタクミ君」

 「レン」


 目覚めの視界に映った人物は友人のレン。

 辺りをよく見渡すと、マサトやメイ、そしてミサキも保健室に居た。

 他の皆も目覚めたタクミへと近づき、声を掛けてくる。


 「よう、お目覚めの気分はどうだ?」

 「タクミ君、お疲れ様です」

 「マサト、メイ・・・・」

 

 「お疲れさま・・・タクミ君」

 「ミサキ・・・」


 供に戦った四人が自分へと話し掛けてくる。

 タクミはミサキに大会の結果を聞いた。


 「ミサキ、大会の方は・・・」

 「大会はBクラスが優勝したよ。タクミ君が倒れた後、Cクラスの桜田君も倒れて最後に星野君が残ったの」

 「そうか・・・」


 タクミは保健室の天井を見上げながら一言だけ口にした。そして、天井へと向けていた顔を下へと戻し、自分の傍にいる四人へと向かい合った。

 そして、申し訳なさそうな顔をするタクミ。


 「悪いなみんな・・・優勝できなかった」

 「なんでお前が謝んだよ?」


 マサトが呆れた表情をしてタクミに言った。


 「お前のせいで負けたわけじゃないだろ。ここに居るみんなで戦ったんだ。お前が一人で責任背負う必要はねえだろ」

 「そうだよタクミ君」


 ミサキが優しく笑いながらタクミに励ましの言葉を送る。


 「タクミ君は最後まで必死に戦っていた。それはここに居るみんなが知っているよ」

 「そーゆーこと」

 「立派でしたよ、タクミ君」


 ミサキの言葉にレンとメイも続く。

 タクミはみんなのその言葉に少しバツが悪そうな顔をしながらも、笑って答えた。


 「ありがとな、みんな・・・それから、お疲れさま」

 「お前もな、タクミ」


 マサトが口元に小さな笑みを浮かべながらそう返す。

 他の三人もそれに釣られて思わず顔がほころんだ。


 こうして、一時間にも亘る〝クラス別魔法戦闘〟は幕を下ろした。

 タクミたちは優勝を手にする事は出来なかった。もちろん・・・悔しさはある。五人全員精一杯戦っても勝利にはあと一歩届かなかったのだ。でも・・・悔しさの中に、五人には上手く表現できないが、一種の達成感があった。自分たちの持てる全てを使い、他のクラスの代表者達としのぎを削りあったからかは分からない。

 そして、新たな目標もできた。今回で自分たちに足りなかったものが、五人は漠然ながらも見えた気がしたのだ。それを伸ばし、今の自分よりも更に上の段階へと一歩を踏み出し、今の自分を超えていく事が彼らの新たな戦いであった。



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