第百二話 反撃開始!
身構えるタクミとミサキ。
二人は大きな魔力を肌で感じ取り、それだけでなく周囲の気温が下がっていっているのも感じた。
そして――――
「・・・・魔力が一つ増えていた事は気付いていたが・・・お仲間か」
全身から凄まじい冷気を放つ少年、桜田ヒビキが二人を見据える。
タクミとミサキはそれぞれ最大限まで魔力を高め、タクミからは金色のオーラが、ミサキからは炎が吹き荒れる。
「ミサキ、援護を頼む!!」
「うん、分かったわ!!」
タクミは目の前のヒビキに向かい魔力弾を放ちながら跳躍する。
しかし、ヒビキは自分の眼前に氷の壁、≪氷壁≫を作り出し進行を妨げる。
――ドドドドドドッ!――
魔力弾は全て分厚い氷の壁により遮断され、ヒビキは氷の壁から少し離れ、タクミを迎撃する準備を整える。
「ッ! そこか・・・」
ヒビキから見て氷の壁から右側方向からタクミが飛び出してきた。
現れたタクミに標準を合わせ、魔力砲を撃とうとするヒビキ。しかし氷の壁の反対方向の左側から通常より大型の魔力弾がこちらに飛んできた。それはタクミによって遠隔操作されているタイプの物だ。しかし、空いているもう片方の手で同じ大きさの魔力弾を作り出し、それを放つ。
ヒビキの放った魔力弾がぶつかり、相殺する。
そして、もう片方の手で魔力砲を放とうとするヒビキ。
「この程度のフェイントで・・・」
ヒビキはタクミに冷笑し、魔力砲を撃とうとする。
だが、攻撃が放たれるその刹那、タクミが小さく笑った。
「≪火炎連射弾≫!!」
「!!」
氷の壁の真上から、ミサキの声が聞こえて来た。
そして、それに伴い大量の火炎弾も自分に向けられる。
「ちぃッ!」
ヒビキはタクミへの攻撃を中断し、ミサキの放つ炎の雨を魔力弾で迎撃する。
だが、目の前のタクミはその隙を見逃しはしなかった。
「≪ゴッドハンド≫!!!」
タクミの金色に光輝く拳がヒビキに振るわれる!
「ぐッ!」
ヒビキは腕を氷で覆い、タクミの拳を受け止めた。
だが、そこでタクミの攻撃は終わりではない。
「≪金色百裂拳≫!!!」
――ズドドドドドドドドドッッ!!――
「ぐっ・・があ! このっ!!」
ヒビキはタクミの放つ連続の打撃を捌くが、そこにミサキの炎の弾幕がヒビキに向けられる。
「ちっ!!」
ミサキの炎の弾丸がいくつかヒビキの体を掠め、そして――――
「ハアッ!!」
――バキィッ!!――
「何ィッ!?」
ここにきてようやくタクミの攻撃がヒビキへと直撃した。
しかし、ヒビキはタクミの拳を掴み取り、そのままタクミをミサキに向かい投げ飛ばす。
「くっ」
そのまま氷の壁の真上に居るミサキの元まで飛ばされるタクミ。
そして、二人が同じ射線上に居る事を確認し、ヒビキは二人目掛けて特大の魔力砲を放つ!
タクミは飛ばされながらも同じように魔力砲を撃ち、迎撃する。
「喰らえッ!!」
「≪金色魔力砲≫!!」
――ブオオオオオオオオオオッッ!!!――
両者の放つ魔力の砲撃は地上と空中の狭間でぶつかり合う。
しかし、先程までとは違い、両手で放たれているヒビキの魔力砲はタクミの砲撃を上回っており、徐々に押されていくタクミ。
だが――――
「≪火炎集砲撃≫!!」
「ぐぅ・・・!」
タクミがヒビキの砲撃を食い止めている隙に、ミサキは氷の壁から降り、地上からヒビキの横から炎の砲撃を挟み込んできた。ヒビキは砲撃をしながらも氷の壁を形成し、ミサキの炎による砲撃を防ぐ。しかし、タクミの方に魔力を集中している為、通常の≪氷壁≫ならば確実に防げるのだが、片手間に作り出した壁は少しずつ亀裂が入って行く。
「チッ! 舐めるなぁッ!!」
ヒビキは魔力を最大限まで高め、二人の攻撃を喰い止める!
だが、ここでミサキが今日何度目かの奥底に秘めている力を解放した。
「いけえぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
ミサキの力、〝不死鳥の炎〟が発動し、ミサキの体から無尽蔵の魔力が溢れ、彼女の放つ≪火炎集砲撃≫がより熱く、より大きく、より強大なものとなり、ヒビキの張った氷の壁を砕き、彼に向かって行った。
「なんだと!?」
――ゴオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!――
「ぐああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
ミサキの砲撃に呑まれるヒビキ。それだけでなく、炎に包まれた事によりヒビキの魔力砲は途切れてしまい、そのままタクミの放っている≪金色魔力砲≫も彼に直撃した。
――ズドオオオオオオオオオオオンッッ!!――
二重の砲撃による攻撃の直撃により、周囲は土煙を巻き上げ、ヒビキの姿は見えなくなる。
タクミとミサキは攻撃が落ちた場所から距離を取り、様子を窺う。
「さすがに・・・効いただろ?」
「うん・・・でも油断しないでタクミ君」
「ああ、そうだな」
ヒビキの所属しているCクラスは皆、魔法陣に映し出されている映像にざわめいていた。
「まじかよ・・・」
「あの桜田が・・・」
彼の強さに関しては絶対とも言える信頼を寄せていたクラスの皆は、ヒビキがまさかやられたのではないかと驚いている。そんな中、東堂ムラクモだけは薄く笑いながら魔法陣に映し出される光景を眺めていた。
「(さて・・・どうなるかなぁ~)」
この場において、彼女だけは現状の出来事を楽しんでいた。
そして、既に脱落し、教室へと戻っていたハクとアクアはその光景を見て、小さく拳を握った。
「(桜田君・・・・・)」
例え彼が自分たちを見ていないとしても、ハクは今の光景を見て何も感じない訳がない。
彼女は彼の事を心配しながら、大会の中継を見守っていた・・・・・。




