第九十二話 仲間の為に
AクラスとBクラスでは現在、それぞれが相手を選び、ばらけて戦っていた。
こちらではAクラスのミサキとメイ対Bクラスのクルミとの戦闘が行われていた。
「ちいっ!なんて硬い盾なのよ!!」
クルミのガトリング砲を全て防ぐメイ。そして盾の影からミサキが顔を出し炎の弾幕で応戦する。ミサキの炎を回避しながらガトリング砲を連射するクルミ。
遠距離系統での魔法でぶつかりあう少女達、戦況的にはメイの盾で身を守られているミサキとメイが優勢であった。クルミもその事には気付いている為、内心では焦りを見せ始める。
「このままじゃこちらが不利だわ。ならば・・・・」
ここに来てクルミは奥の手を発動する。
ガトリング砲を放り捨て、≪換装≫を発動してクルミは新たな武器を呼び出した。
それは・・・・大きさはガトリング砲よりも僅かに小ぶりではあるが、それでも通常よりも大きな一丁の銃であった。
クルミは二人に向けて銃を構え、魔力を充填する。
「あの子の持っている銃、魔力がどんどん溜まっていっている・・・・」
「ま、まずいかも・・・・」
何やら大きな一撃が来そうな気配を感じたミサキはクルミに向かって大技を放つ!
「《火炎集砲撃》!!いけぇぇぇッ!!」
ミサキの手から炎の砲撃が放たれる。
だが、クルミは銃に魔力のチャージが完了し、迫り来る炎に銃の焦点を合わせ引き金を引いた。
「ファイアッ!!」
――ボシュウウウウウウウウウッ!!――
クルミの銃から凄まじい威力のレーザー光線が発射する!
レーザーは炎にぶつかると、そのまま炎を突き抜けミサキへと迫って行く。
メイはミサキの傍まで走り、急いで個性の盾を展開する。
「≪絶対防御・イージス≫!!!」
メイの盾の展開がすんでのところで間に合ったため、何とかミサキをあの凶弾から守ることが出来た。しかし、凶弾と言ってもアレは銃弾などという可愛らしい物ではないだろう。
初撃が防がれたクルミは再び銃の内部に魔力を溜め始める。先程よりも大量の魔力を銃へと送信するクルミ。
彼女のこの武器は〝魔力圧縮銃〟と呼ばれる代物であり、送り込んだ魔力を凝縮し、それを放てる武器である。しかし、この武器はある一定の量まで魔力を込めなければ使用できない欠点がある。だが、発射の為に必要な魔力以上に魔力を溜める事は出来る。先程の一撃は通常の魔力量であったが、今回は違った。
「(この一撃で終わらせる!!残り全ての魔力をこの銃に!!)」
どんどん魔力が溜まっていっている銃にミサキも危機感を感じ、攻撃が来る前に決着を付けようとクルミに攻撃を放つ。
「≪火炎連射弾≫!!!」
――スドドドドドドドドッ!!――
大量に迫り来る炎の弾幕。
クルミは移動しながら魔力の充填をするが、全ての魔力を自らの武器に送り込んでいる為、ミサキの攻撃を全て回避する余裕がなく、何発か受けてしまう。
「ぐうっ・・・・きゃっ!?」
炎の弾丸が自分の体をいくつも掠め、クルミの体にダメージを蓄積させていく。
そして、ついに決定的な一撃がクルミに直撃した。
――ズドォンッ!!――
「きゃああああッ!!」
モロに直撃を受けふらつくクルミ、だが、こちらもようやく準備が整った。
「はあ・・はあ・・喰らいなさい!!」
ミサキに銃を突きつけ、引き金を引いたクルミ。
そして、彼女の銃から先ほど以上の威力と大きさを兼ね備えた一撃が放たれた。
「くぅ、≪絶対防御・イージス≫!!!!」
――ズドォォォォォォォォォンッッ!!!――
「くっ!ううううううううううッ!!!」
クルミの全てをつぎ込んだ一撃は先程の比ではなく、メイの魔力もどんどん消費していく。メイの盾は全ての攻撃を防ぐほどの絶対的防御力を誇る。しかし、盾を出現させればさせる程にメイの魔力はどんどん削られていく。そして、その盾に力を入れれば尚更だ。
メイはミサキを守る為、必死に攻撃を防ぎ続けている。
「メイさん・・・・・・」
なんて自分は情けない・・・・友達がこんなに頑張っているのに、自分はただ守られているだけなのか。
「良い訳がない!!!」
ミサキは大声を上げ、メイの背中に手を置いた。
「ミサキさん!?」
「メイさん、私の魔力を使って!!」
かつて、自分は一度だけ引き出すことが出来た。この身に宿っている力、〝不死鳥の炎〟による無限の魔力を。仲間と共に戦う為、ミサキは己が内に眠る魔力を引き出そうとする。
「はああああああああっ!!!」
仲間を救う為、自分の全てを絞り出すミサキ。
そして、その強い想いは――――奥底に眠る力を引き出した。
――ぶああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!――
ミサキの中から止めどなく流れる川の激流の様にミサキの魔力が溢れ出、それが触れているメイにも流れ込んでくる。突然受け渡される膨大な量の魔力に戸惑いながらもその力を己の個性へと使用する。
メイの盾はより一層強固な物となり、クルミの一撃を完全に防ぎながら、尚且つメイの魔力もミサキからの譲歩により減少しなかった。
そして・・・・・・・・。
「くっ・・・・もう、駄目・・・・」
とうとうクルミの方が先に音をあげ、魔力の多大な消耗により意識が薄れ、その場で倒れた。
そして、倒れたクルミの体は少しずつこの空間から消えて行く。どうやら魔力がもう完全に枯渇した状態だとこの戦いを見守っている教師がこの空間から退去させているようだ。
その様子を見ていたミサキとメイはとりあえずほっと安堵の息を洩らした。
――Bクラス生徒一名脱落しました、残り人数十名です――
――キィンッ!!――
二つの獲物がぶつかり合い、辺りに響く金属音。
こちらではレンとシグレがぶつかり、火花を散らせていた。
互いの獲物を巧みに操り一進一退の攻防を続ける二人の少女。そんな中、二人にBクラス生徒クルミの脱落が知らされた。
「どうやらミサキとメイさんは勝った様だね!こっちも頑張りますか!!」
「ふん、見誤るな!そうやすやすと獲られるつもりはないぞ!!」
レンの発言にシグレはそう答えながら刀を振るう。
それをハンマーで防ぐレン。
「タクミ君の方も頑張ってるだろうし、私も良い所見せたいからね!!」
「ふん・・・・久藍タクミの実力は確かに中々光る物があるだろう。だが・・・・・・」
シグレはレンとぶつかり合いながら、口元に笑みを造ってレンに告げる。
「カケルの強さは本物だ・・・・」
かつて自分を救った際、そして特訓の際に見せたあの白猫の強さは信頼の置けるほどの物であった。しかも、特訓の時、彼はまだどこか本気ではなかった様にすらシグレは感じていた。
「随分あの猫ちゃんの事信頼してるじゃん!もしかして恋心でも抱いてる!」
「なっ!?何を言うか貴様!!」
レンの発言に顔を真っ赤にしながら切りかかるシグレ。その一撃は今までよりも一段と重く、さらには怒気まで込められていた。
レンはそれを何とか捌きながらまたもや余計な事を言う。
「おわッ!事実を言われて怒った!?」
「違うわァァァァァッ!?」
・・・・・・こちらの戦場は先程のミサキたちと比べて、なんだか緊迫してるのか緩んでいるのか微妙な空気が漂う戦いであった。