番外編 第六話 魔道具を買おう
久々の番外編です。いや・・・久々でもないですかね?
アタラシス学園の一年生行事、〝クラス別魔法戦闘〟が終了したその日。惜しくも優勝を逃してしまったタクミたちAクラスではあったが、今の自分たちの持てる全てをさらけ出し、そして戦った。故に、悔しさこそあれど後悔はなかった。
だが、この大会の参加選手の一人であったレンはある問題を抱えていた。
「はあ・・・」
大会が終わったその日の午後、彼らは学園を出た後、〝安らぎ公園〟と呼ばれる名前の公園で今日の大会についての話をしていた。その中でレンは大会により発生した自分のある問題についてため息を吐いていた。
親友のその姿にミサキが一体どうしたのかと疑問を投げかける。
「どうしたのレン、そんなため息ついて。大会の結果は確かに優勝できなかったけど・・・」
「ああ、違う違う。そのことで悩んでるわけじゃないよ」
「じゃあどうしたんだ?」
タクミがそう聞くと、レンはため息交じりに答える。
「大会で私の愛用していたハンマーが壊れたからさ、新しいの買い替えないといけなくて・・・はぁ~、私のお小遣いから買わないといけなくて、出費が・・・」
レンは〝インパクトハンマー〟と呼ばれる魔道具を愛用の武器として使用している。しかし、今回の大会でそれも壊れ、新しい武器を買い替える必要があるのだ。彼女はこうゆう時の為、通常よりも多くのお小遣いを貰っているので、自分で自腹を切らなければならない。彼女のため息はそれが原因であった。
そんな落ち込んでいるレンを尻目に、タクミは今更ながらある疑問を抱く。
「なあ・・・今更だけど、ああいう魔道具ってどこで手に入れるんだ?」
「え・・・このE地区にいくつかそういうの置いてある専門店あるんだよ。タクミ君、知らなかったの?」
「ああ、俺は魔道具の類って基本使わないから」
タクミは個性魔法が使用出来る為、武器となる魔道具は基本使わない。
当然、そのような物が置いてある専門店にも入った経験はない。ミサキもその様な店が存在している事実は知っているが、直接足を踏み入れた事はなかった。
「そうだ、今日は時間あるしこれから私、見繕いに行くつもりだったんだけど二人も来る?」
「え、ん~・・・」
レンの提案に一瞬悩むタクミとミサキであったが、このまま帰っても何か用事がある訳でもないので、レンについていく事にした。何より興味もある。
「よしっ、俺も付き合ぜ」
「私も気になるし・・・」
「よし、決まりね! じゃあ私の馴染みの店があるからそこに出発!!」
こうして三人はレンの言う馴染みのある魔道具専門店へと向かって行った。
「よし、着いた~」
レンの案内の元、彼女の後に続いてその専門店へと辿り着いた三人。
だが・・・・・。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
レンに案内された店の前ではタクミとミサキが引きつった顔をしてその店に目を向けていた。
レンの馴染みのある店・・・その店は入る前から外観を見ただけでも・・・・すごく胡散臭さを感じる物であった。
その店は木造建築で、外観は随分とボロボロとなっており、そして何より掲げられている看板に記載されている名前・・・・・〝DESTINY・TOOL〟、運命の品物・・・という事だろうか。
「「(胡散臭い!!)」」
外観もそうだがそれ以上にこの店名、胡散臭すぎる。何故木造建築で英語の店名なのか。
しかも運命の品物って・・・・・。
「レン・・・ここがあなたの馴染みのお店?」
「場所間違えているんじゃないのか?」
むしろそうであって欲しいとすら思う二人。
しかしレンはそんな二人の希望を打ち消すかのように首を横に振った。
「いや、ここで合っているよ」
「「あ・・・そう」」
「何でそんな事聞くの?」
「「いや・・・何でって・・・」」
二人は改めて店構えを確認した。
「「何でって・・・」」
改めて同じ言葉を繰り返す二人。
見た感じでもう色々とアウトだからなのだが・・・。
そんな二人のことを不思議そうに見ながら、レンは入り口の扉の前まで行き、扉に手を掛ける。
「お邪魔しまーす」
レンは扉を開けるとそのまま中へと入って行った。
「行くか・・・」
「うん・・・」
二人も覚悟を決め、レンの開けた扉を潜り、店の中へと侵入した。
店の中は意外なことに整っており、色々な道具が置いてあった。
すると、店の奥から一人の老人が出て来た。レンはその人物の姿を確認すると、手を振りながら元気よく挨拶した。
「あ、おじいさ~ん! また来たよ!」
「おおレンちゃん、よく来たねぇ。後ろの子は友達かい?」
「あ、初めまして、久藍タクミです」
「黒川ミサキといいます」
老人に軽く会釈をして挨拶をする二人。
そんな二人に老人も自己紹介を始める。
「初めまして、わしはこの店の主人の・・・聖闘士グルザルグというモンじゃ。よろしくのぉ」
「・・・えっ、何て? せ、聖ん・・・?」
「ほっほっほっ、自分の名ながら言いずらい名前じゃからのぉ」
「いや・・・言いづらいというか・・・」
今のソレは名前なのか!? 聖闘士グルザルグが名前なのか!? と、予想外過ぎる名に思わず内心でツッコミを入れるタクミ。ミサキもどう言えばいいのかわからずその場で黙り込んでいる。
「「(胡散臭い・・・)」」
ここに来て五分も立っていない内から二人は既に最大限までこの店、そして主人に対して不信感を募らせていた。
番外編では本編とは違い、少しギャグも盛り込んでいきたいと思っています。