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魔法ができてしまったこの世界で  作者: 銀色の侍
二学期 クラス対抗戦編
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第八十六話 それぞれの戦場

 ハクの発動した個性魔法によりすべてが白く染まった空間。

 全員の視界が完全に断たれ、タクミとミサキは周囲を警戒しながら互いに呼びかけ合う。

 

 「ミサキ、大丈夫か!?」

 「うん、平気だよ!!」


 ミサキの声を聴きとりあえず安堵するタクミであったが、まだ油断はできない。この場から退避する為の煙幕かもしれないが、もしかするとこの視界の閉ざされた自分たちに不意を突いてくることも十分あり得る。そしてなにより気になるのは・・・・・・。


 「この煙、辺り一面からあの華美って呼ばれていた子の魔力に満ち溢れて他の人間の魔力が埋もれて感知しずらい・・・・」


 そう、個性魔法によって生み出されたこの煙にはハクの魔力が練り込まれている為、この煙内に居る魔法使いの魔力が埋もれてしまっているのだ。

 周囲を警戒するタクミとミサキ、二人は迂闊には身動きが取れず、その場で辺りの警戒をする。




 「・・・・居た!」


 その頃、この場から離れようとしていたハクであったが煙に埋もれたAクラスの二人が身動きを取ろうとしていなかった為、ハクは同じクラスメイトの救出に行動選択を変更した。

 自分の個性の力であるため、ハク本人はこの煙内でも他の人間の魔力を探知する事が出来る。ハクは同じクラスの女子生徒に近づき、彼女に声を掛ける。


 「大丈夫・・・・ここから離れるよ」

 「華美さん、まったく・・・・早く逃げなさいよ」


 呆れながらも救助に来てくれたハクに感謝するCクラス女子。二人は煙に紛れてその場から魔力を極力消した状態で離れて行った。

 そこにアナハイムからの報告が入って来る。


 ――Cクラス生徒二名脱落しました、残り人数二十名です――


アナハイムの声が生徒達の居る空間に響き渡った。




 煙が晴れ、視界が回復するタクミとミサキ。


 「けほっ・・・・大丈夫かミサキ?」


 視界が回復した事でミサキの姿を確認するタクミ。しかし、周辺に居る生徒はミサキだけでCクラス生徒の二人の姿はもうどこにも見当たらなかった。

 アナハイムからの報告では他の二人は脱落した事は確認できたが・・・・・・。


 「タクミ君ごめんね、目の前で戦っていたのに逃がしちゃった・・・・」

 「別にミサキが謝ることじゃないだろ」


 ぽんぽんとミサキの頭に手を置くタクミ。

 Cクラス生徒がいなくなった以上、他の場所に比べ見晴らしのいいこの場所からは離れた方が良いだろう。タクミとミサキは一先ず別れたマサト達と合流を目指し元来た場所まで戻ることにする。


 「よし、行くかミサキ」

 「うん」


 仲間達との合流を目指し移動を開始する。

 一方、タクミ達よりも先に戦闘が終了したマサト達はというと、タクミたちがCクラスとの戦いを終わらせた頃、再び戦闘を行っていたのだ。

 その相手クラスは――――


 「喰らいなさいッ!!」


 ≪換装≫によって呼び出したガトリング砲をマサト達目掛けて撃ち続ける少女、クルミ。その攻撃を個性の盾で遮断するメイ。盾の後ろにはレンも一緒に隠れている。

 その近くではマサトが群青と呼ばれる男子生徒と他一人の生徒、つまり二対一の肉弾戦を行っている。

 現在マサトたちはEクラス生徒との戦いが終わり、移動をしている最中にBクラス生徒三人からの奇襲を受けたのである。

 三人目掛けてクルミがガトリングを容赦なく放ち、Aクラスの戦力を削ごうと考えていたのだが、メイの持つ個性により奇襲攻撃は防ぐ事に成功した。しかし、クルミの攻撃の手は緩むことなくメイとレンに浴びせ続ける。


 「ちぃ!ばかすかばかすか撃ってきてぇ!!」

 

 いつまでも止む気配の無い銃弾の雨にレンが愚痴りながらマサトの方へと視線を向ける。メイも盾を展開しながらマサトの事を心配そうに見つめていた。

 クルミが大量の連射によりメイたちをこの場に留めておくことでマサトは一人で倍の相手を請け負う必要がある。

 

 「おらぁッ!!」


 Bクラス男子を殴り飛ばすマサト。しかしもう一人の相手、群青がマサトを殴り飛ばす。


 「ちぃっ!!」


 二対一での肉弾戦では中々に厳しいと言えるだろう。相手は仮にも代表に選ばれた生徒、少なくともBクラス内に限っては上位の実力を兼ね備えているだろう。

 しかし、だからと言って引くわけにはいかない。


 「オオオオオオオオオオッ!!」


 マサトは腹の奥底から叫び声上げ、魔力を体中から迸らせながら目の前に相手たちへと向かって行った。

 Aクラス対Bクラスによる三対三の激闘は苛烈さを増して行った・・・・・・。






 マサト達と戦っているクルミたちとは別に、残りのBクラス生徒、カケルとシグレは別行動を取っていた。五人で固まるよりも、二手に分かれた方が得策だとチームで判断した結果だ。

 そして――――こちらでも現在戦闘が行われている真っ最中であった。


 「はあああああッ!!」


 シグレの矢継ぎ早に振るわれる斬撃、それを回避しながら強化した拳や蹴りで反撃を繰り出すケシキ。

 ここではBクラス対Eクラスによる二対二の戦いが開戦していた。


 「んっ・・・・!」


 カケルの振るった翼から放たれる綺麗な羽根、その見た目とは裏腹に強力な白い雨がもう一人のEクラス男子生徒へと降り注いでいる。

 

 「うっく!」


 その攻撃を必死に回避する男子生徒。

 しかし、この場の他の人間は知るはずもない事であるが、彼は戦う前からすでに大量の魔力を他の人間へと譲歩していたため、彼の魔力はすでに限界に来ていた。彼のそんな行いなど知る訳もないケシキは激を飛ばす。


 「おい、どうしたんだよお前!まるで腰が入ってねぇぞ!!」

 「隙あり!七連斬ッ!!」

 「ぐっ!?」


 勝負とは一瞬の隙が命運を分ける。激しい攻防の最中、味方に檄を飛ばす為に一瞬隙を見せてしまったケシキはシグレの七連続の斬撃の一太刀を右肩に掠める。深手ではないとはいえ、刃が肉体に掠めたことで僅かに出血するケシキ。


 「ちぃ!!」


 一旦距離を置き体制を整えようとするが――――


 ――どすッ!――

 「ぐ!?・・・・羽根!」


 ケシキの右腕に一本の羽根が突き刺さる。

 攻撃が来た方向に目を向けると、こちらに翼の矛先を自分に向けているカケルの姿が映った。その隣では同じEクラスの生徒が地面に横たわっていた。


 ――Eクラス生徒一名脱落しました、残り人数十九名です――

 「(くそがッ、あと俺だけしかいねえじゃねえか!!)」


 Eクラスで残っている生徒が残り自分一人だけとなり、ケシキの顔に焦りが表れ始める。

 そんな自分に尚もシグレによる斬撃が襲い掛かる。


 「はああああああっ!!」

 「ちっ、舐めんなッ!!」


 ケシキは手の平に魔力を集中し、そして大技を繰り出す!!


 「喰らえ、魔力砲!!」

 「何!」


 複数ではなく単独で魔力砲を撃ってきたことに驚くシグレ、しかし彼女の前にカケルが割り込んで来て翼を盾にし真正面からその砲撃を防ぐ。ケシキの攻撃が収まると、そこには翼を前面に展開して無傷で立っているカケルとシグレの姿が在った。

 自分の攻撃を真正面から防がれ思わず舌打ちが漏れる。


 「ちっ・・・・まいったぜ」

 「すまないカケル。大丈夫か?」

 「ん、問題なし・・・」


 こちらの戦況はBクラスが優勢だと言えるであろう。しかし、この三人は目の前の相手に夢中で気が付いていなかった。

 すぐ近くまで別のクラスが迫ってきている事に・・・・・・・・。


 開始から十分の時間が経過していた。

 残り時間は五十分・・・・・・果たして勝ち残るのはどのクラスになるだろうか・・・・・・・・。



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