第八十五話 Aクラス対Cクラス
マサト達がEクラス生徒と戦闘を行っている頃、タクミとミサキは迫り来るCクラスとの戦いに備えていた。二人が先へ進んでいくと、今までとは違い建物の数も減った開けた場所へと出た。
「この辺りには建物の数は大分少ないな。感じる魔力の距離感からもうすぐそこまで相手も来ているな・・・・」
「どうする、タクミ君?」
「とりあえずまずは身を隠そう。いくつか体を隠せる場所はあるからな」
タクミの言葉に頷くと二人は数少ない建物の内、一番大きな建物の陰へと隠れた。そして、そのすぐ直後にCクラスのハク達が現れた。
「(来たぞミサキ・・・・)」
「(うん・・・・)」
聞こえない様に小声で会話をする二人。
Cクラス生徒達は二人が魔力を極限まで抑え込んでいる為、未だに二人の存在には気が付いていない。
「みんな、辺りに気を付けて・・・・」
ハクの言葉に他の三人は頷いた。だがその時、前方の建物の影から大きな魔力が一つ放たれる。
「!、みんな!!」
突然感じた巨大な魔力に他の三人も身構える。
そして、建物の影からタクミが飛び出してきた。
「魔力砲!!!」
「!?、みんな避けて!!」
タクミは建物の影から飛び出すと同時に魔力を集中し魔力砲をハクたちへと放つ。
先程建物から感じた強大な魔力はタクミが技を放つ為に魔力を集中していたからである。しかし、建物によって視界が遮断されていた四人は警戒こそしたが不用意に近づこうとはしなかった。それ故にタクミはこの近くの距離感でも大きな技を放つ為の魔力を溜めることが出来のだ。
「うおっ!?」
「危ない!?」
しかし、いきなりの砲撃とはいえ代表に選ばれた彼女たち四人に当てるには砲撃を放った場所からそこそこの距離があったため、四人はタクミの砲撃の回避に成功した。しかし、全員がバラバラの方向へと跳んだ為、固まっていた四人がそれぞればらけた。
そして、これこそが今の攻撃の最大の狙いであった。
「いくぞッ!!」
――ドンッ!――
タクミは魔力砲だけにではなく、脚にも魔力を溜めておりその魔力を解放し、凄まじい速度でばらけた生徒たちの中で一番距離の近かった男子生徒へと迫る。
「くっ!うりゃあっ!!」
迫り来るタクミに強化した蹴りを放つCクラス生徒。
タクミはその蹴りを余裕で避け、そして魔力を手に集中した。
魔力を送り込まれたタクミの右腕が金色に光り輝く。
「≪ゴッドハンド!!≫」
――バシィィィィィィィィィッッ!!――
タクミの金色の光を宿した拳が目の前の相手の腹部に命中する。
凄まじい威力の光の拳、通常の強化した拳とは比較にならない衝撃がCクラス男子の意識を刈り取った。 たった一撃の攻撃で地面に崩れ落ちたクラスメイトの姿にハクたち他の三人は驚きを表しながらも三人同時に魔力弾による一斉放火を浴びせる。
「ちぃっ!」
タクミはその場から離れ、攻撃を回避しながら次に近くにいるハク目掛け、魔力を集中した大玉の魔力弾を投げ飛ばすように放った。
自分に向かってくる剛速球を回避するハク、だが――――
――くいっ――
「えぇ!?」
ハクの口から驚愕の声が漏れる。
なんと避けた魔力弾は方向転換し、再び自分の所にやって来たのだ。
「追尾型!魔力弾の軌道を遠隔で変えるなんて!!」
魔力を集約し、それを放つ技魔力弾。魔法使いにとっては基本の魔法であるこの技であるがそれを放つのと放った後のコントロールを取ることの難易度はまるで違う。魔力弾を放つのは体内の魔力を外側へと放てばいいが、体内からでた魔力を自在に操る事は凄まじく難しい。
「この・・・・っ!!」
タクミの放った大型の魔力弾にハクが同じく魔力弾を放ち続け撃ち落とそうとする。そして、一撃では止まらずとも大量の魔力弾を当て続けることでタクミの魔力弾は徐々に形状が崩れていく。だが、この際ハクは自分に向けられた攻撃に集中してしまったため、タクミ本体から数秒間意識を手放してしまう。
その隙にタクミは二人目のCクラス男子生徒へと跳躍する。
「ッ!させないわ!!」
仲間に迫っているタクミに現在攻撃の手が向いていないCクラス女子生徒がタクミに向かって魔力弾を放とうとするが、その時――――
――ボオォォォォォォォォッ!!―――
「なっ、火!?」
彼女に向かい突然炎が走って来る!
そしてそれと同時に感じるもう一つの魔力。
「はあぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
「くっ、まだ敵が居たの!?」
今まで魔力を殺し隠れていたミサキがここで姿を現した。
タクミからの大まかな作戦は最初に彼が突っ込んで行き場を荒らし、そして戦場に居る敵の注意が自分に集中したタイミングでミサキが登場し、タクミの援護をするというものであった。
Cクラス生徒もこのような展開を全く考えていなかった訳ではない。だが、目の前で仲間が一撃で倒された事から冷静さを欠きタクミに意識を向けすぎてしまったのだ。
「≪火炎弾!!≫」
「このっ・・・・!」
ミサキの炎の弾丸と相手の女子生徒の魔力弾がぶつかり合う。しかし、両者の弾丸の威力はミサキの方が上回っていた。
「タクミ君!この人は任せて!!」
「ああ、頼む!!」
自分を狙っていた女子生徒をミサキに任せ、タクミはCクラス男子へと向かって行く。
「≪ゴッドハンド≫!だりゃぁッ!!」
「ちぃぃぃぃっ!!」
タクミの振りかぶった右腕が金色に光り輝き出す。Cクラス男子は先程一撃で仲間がやられた場面が頭によぎり、タクミに向かい魔力弾を連射する。
だが、タクミの光り輝く右腕が信じられないことに巨大化し、向かってくる弾丸を全て防ぐ。
相手の予想外の変化にCクラス男子は思わず口を開いて驚愕した。
「喰らえぇぇぇぇぇッ!!」
「うおおおおおおおお!?」
タクミは光り輝く巨大なその右腕を相手の男子生徒へと叩き付けた!!
――どずぅぅぅぅぅん!!――
「うごぉっ!?」
真上から巨大な腕を叩き落され、潰されるCクラス男子。
潰されたカエルの様な情けない声を出しながら彼の意識はそこで途切れていった。
「っ、とお!?」
目の前の敵を片付けたと同時に真後ろから魔力弾で狙撃されるタクミ。その攻撃をなんとかスレスレで回避するタクミ。
「くっ、外れた!」
追尾していた魔力弾を対処したハクが攻撃をしてきたのだ。
そこへミサキと戦っている女子がハクに向かって叫ぶ。
「華美さん、あなたは逃げて!!」
「な、何を!?」
ミサキと戦っているCクラスの女子は彼女の炎を対処しながらハクに逃げるように促す。
「このままじゃ全滅よ!あなたは桜田君と合流して、少なくとも今は身を隠して!!」
「で、でも・・・・・・」
「クラスの優勝の為よ!!」
仲間のその言葉にハクは一瞬悔しそうな顔をするが、仲間のその想いに報いる為にも決断をする。
タクミがこの場からの退避はさせまいと再び追尾型の魔力弾を放とうとするが、その時ハクの魔力の質が変化した。そう、この感じる魔力の感覚は・・・・・・。
「個性魔法か!!」
「個性魔法発動!!」
ハクが地面に両手を設置し魔力を解放する。
その瞬間、ハクの両手から大量の煙が辺り一面に噴出し、彼女達の居る空間が全て白一色へと染まった。