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魔法ができてしまったこの世界で  作者: 銀色の侍
二学期 クラス対抗戦編
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第八十三話 別行動

 ついに始まった〝クラス別魔法戦闘〟。

 それぞれのクラスは未だ行動は起こさず作戦を立てていた。


 Aクラスサイド――――

 タクミ達五人は大まかな作戦は訓練中に立てていたので相談時間は短い物であった。


 「始終全員行動という訳にはいかないだろうが、とにかく最初は五人で行動した方がいいだろうな」

 「そうだね、さすがに単独で動く奴なんていないでしょ」


 タクミのその言葉にレンがそう返した。

 確かに普通に考えて相手の使用する魔法やその実力が分からない以上一人で行動しようとする者達は中々居ないだろう。しかし、中にはそんな通常の思考から外れた行動を起こす者もいた。

 タクミ達五人は現在居る場所から移動を開始する。勿論、五人全員極力魔力は抑えた状態での移動だ。放課後の特訓の成果もあって五人の魔力のコントロールには一段と磨きがかかっていた。






 Cクラスサイド―――――

 Cクラスの生徒達は現在四人で行動をしていた。単独で別行動を取っているのはヒビキであった。彼は大会開始の合図が出た後、ハクたちの制止も聞かずに一人で単独行動を取っていた。

 完全にヒビキの姿を見失い、仕方なく四人と一人の二手に分かれて行動するCクラス。

 ハクと共に行動している生徒の一人が愚痴を漏らしながら足を動かす。


 「桜田め・・・・まぁ予想はしていたが・・・・」

 「・・・・兎に角、私たちは一緒に行動しよう。辺りの警戒を怠らないでね」


 移動するハクたち、このまま進んで行けば現在移動しているタクミ達とぶつかり合う事となるが、タクミ達はほぼ完全に魔力の気配を絶っている為、Aクラスの存在には未だ気付いてはいなかった。






 一方、密集する建物の陰に隠れながら魔力を消し移動するタクミたち。

 徐々に近づいて行く二つのクラス。そして、ついに片方のクラスが相手の存在を補足した。


 「!・・・・微かな魔力」


 ミサキがCクラスの生徒達の存在に先に気付いた。魔力を探知し、そして大まかな位置を割り出した彼女はタクミたちにその事を伝える。


 「みんな、ここから大体百メートル程進んだ先に三・・いや四人分の魔力を探知したよ。建物の影に隠れて見晴らしが悪いから姿は視認できないけど・・・・」

 「おぉ~、さすがミサキ!私には正直分からないけど・・・・」

 「わ、私も感知できた・・・・間違いないよ」


 ミサキに続きメイもCクラスの生徒達の魔力を感知でき、ミサキの言っている事が事実である事を確信させる。

 

 「よし・・・・このまま接近して――――」

 「・・・・待って、タクミ君」


 そこでミサキからストップの声が掛けられる。

 目の前のクラスとは別に、背後からも複数の魔力を感知したのだ。


 「後ろの方からも魔力が近づいて来てる・・・・」

 「ちっ・・・・どうするか」


 それぞれ迫り来るクラスの生徒達は自覚はしていないのかもしれないが、現在自分たちは二つのクラスに挟まれている状態だ。

 どちらか一方と相対しぶつかり合えば、近くまで来ているもう一つのクラスの方は自分たちの存在に確実に気付くだろう。戦闘になれば魔力をいやでも使ってしまうのだから感知されないわけがない。

 この状況にどう動くか迷っているタクミ。するとマサトからこんな提案が出される。


 「よっしゃっ、ここからは二手に分かれるのはどうだ?」

 「!・・しかし・・・・」

 「・・・・わ、私はマサト君に賛成」


 マサトの提案にメイがおずおずと手を上げて賛成の意を示してきた。


 「前から感じる魔力の気配は四人、後ろからは三人分の魔力を感じる。相手も人数を分断しているから、その、私たちも別れて戦うのも、その・・・・一つの手だと思います」


 控えめな声でタクミに意見をするメイ。

 彼女の言葉にレンもそうするべきだとタクミに言ってきた。


 「よし、分かった。なら前の四人は俺とミサキで、後ろの方の三人はレン達に任せていいか?」

 「二人で四人相手に大丈夫か?逆の方がいいんじゃねぇか?」


 マサトがそう言うとタクミがどんっと胸を叩いて三人の不安を消そうとする。


 「大丈夫だ、それに真正面から姿を堂々と晒す訳じゃない。この地形を利用してうまく立ち回るさ、それに・・・・・・」


 タクミはミサキの方を見ると小さく笑みを浮かべた。タクミのその笑みを見てミサキは小さく頷くと他の三人へと言った。

 

 「大丈夫だよ、タクミ君とならきっとやれる・・・・そんな気がするの」

 「ミサキ・・・・・・」


 親友の自信に満ちている顔を見てレンは小さく笑った。そしてレンはマサトとメイの二人に向き合いタクミとミサキに任せることにした。それに、マサトとメイは知らない事であるが、二人は夏休みの間に命からがらの困難を乗り越えて来た。少なくとも自分なんかよりもよっぽど頼りになる存在だ。

 マサトとメイも二人の言葉を信じ、それ以上の心配の声は掛けなかった。


 「よし、じゃあ別れるぜ」

 「ああ、気を付けろよ三人共」

 「ふっ、おまえらもな」


 こうして二手に分かれ移動を開始するAクラス。

 タクミ達はCクラスの生徒のいる方角へと移動し、そしてマサト達三人は――――。






 タクミ達にCクラスとは反対方向から迫り来る三人の生徒達。

 彼らはEクラスの生徒であった。男子が二人にそして女子が一人の構成である。

 慎重に歩を進めていたEクラス生徒達であったが、その中の男子の一人が目の前から迫り来ている魔力を感じ叫び声を上げる。


 「おいっ!、何人かこっちに来てるぞ!!」

 「「!?」」


 仲間の言葉に反応し魔力を解放する他の二人、自分たちの接近に気付いて教えた男子も魔力を解放して迎撃の体制を取る。

 そして、目の前の石で造られたように見える建造物の影から勢いよく三人の生徒が飛び出してきた。


 「!、やっぱ迎え撃つ気満々だったようだな!!」

 「うらぁッ!!」


 現れたのはAクラス三名の生徒、マサトとメイとレンであった。

 マサト達の接近にいち早く気付いた男子がマサトに拳を振るう。そしてそれに合わせてマサトも拳を放ち、二つの魔力を宿した拳が激しくぶつかり合う。


 「ぐぅっ!?」


 衝突で押されたのはEクラスの男子であった。

 マサトとぶつかった拳からは鈍い痛みが走る。


 「なんて威力だ・・・!!」

 「うらぁッ!!」


 ――バキィィィィィィッ!!――


 「ごぱぁっ!」


 Eクラス男子の頬に強力な拳を放ち、彼の体を吹き飛ばすマサト。


 ここに〝クラス別魔法戦闘〟の開始、最初の勝負が幕を開けたのであった。

 


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