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せっかく異世界に来たので好き勝手やりたいと思います。  作者: 東雲
第1章 こんにちは異世界
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奴隷解放!

タイトルだけ見ると革命でも起こしそうですね。

もちろんそんな大層なことはしませんが

それから僕がしたことは別に大したことじゃなく、ただ奴らに今までさらわれた子供たちを奴隷から解放した、それだけだ。バロンさんに頼んだら本当に高く買ってくれて驚いた。バロンさんとは今後もいい付き合い方をしていきたいものだね。


それからはその金で今まで奴らがさらってきた子供たちを奴隷から解放するだけの簡単なお仕事だ。奴らが人さらいを始めたのが最近になってからで助かった。人数もそれほど多くなかったしな。多かったら心折れてたわ。


その後僕は子供たちを一人一人、家まで送り、彼らの親に事情を説明して回った。涙を流しながら抱き合う親子を見て、やってよかったなと思う。

やっぱり家族は一緒にいるのが一番だよね。

そして各家族からお礼にと大金を渡されたのだが、これを断るのが1番苦労した。正直族を相手にしていた方がまだ気が楽だった。しかも相手も好意で渡してくれているのでなおさら断りづらい。

仕方が無いので彼らの提示した金額の半分を頂くことにした。とは言っても、子供たちの各家族から頂いたので結果僕は大金を手にしたわけだ。

まあ、せっかくの好意だ、受け取らないとバチが当たるってもんでしょう。


さて、全員送り届けたし、僕も宿に戻るとするか。そろそろマナちゃんも目を覚ましているかもしれないしな。


「おう、おかえり」

「ただいま戻りました」


宿に帰ると店主が出迎えてくれる。


「あ、そうだ、あの子の分も部屋お願いします」

「おう、わかったぜ。それなら2人部屋が一部屋空いてるしそっちに移りな。別々の部屋より一緒の方があの子も安心するだろう」

「わざわざすみません」

「いいってことよ、部屋の準備してくるからしばらく待っててくれや」

「じゃあ、1度部屋に戻りますね」

「おう、準備が出来たら呼びに行くよ」


そう言って僕は部屋に続く廊下へと歩き出した。

部屋に入ると、まなちゃんがベッドの上に座ってこちらを見ていた。

よかった。さっきより顔色がいい。


「ただいまマナちゃん。よく眠れた?」

「……(コク)」

「そっか、よかった。なら少しお話しようか」


それから僕はマナちゃんに自分のことを話し始めた。もちろん異世界から来たことは話していないが。マナちゃんは静かに僕の話を聞いていた。そして、僕が話終わると、その重たかった口を開いた。


「……マナは、逃げて、来たんです」


それからマナちゃんは今までのことを話してくれた。

マナちゃんはここから少し離れた村で生まれた。しかしある日、村に盗賊がやってきた。盗賊たちは村の子供たちを奴隷にするためにやってきたそうだ。

その盗賊があいつらだ。なんだっけ、あのダサい名前の……。思い出せないからいいや。

奴らは子供を1人差し出せと村人達に命令した。村人達はどうか見逃してくれと奴らに頼んだが、奴らはそんなこと聞かなかった。そして問題は誰を差し出すかということになった。

そこで差し出されたのがマナちゃんだ。マナちゃんは昔から勉強や運動が得意でそれをよく思わない奴らがいた。そいつらがマナちゃんを奴らに差し出したというわけだ。なぜ彼女の両親は反対しなかったのか気になったが、マナちゃんの両親は病気で既になくなっているらしい。

彼女は、奴隷商人に売られる直前に奴らのすきを見て逃げ出した。

しかし、子供の足では遠くまで逃げることも出来ずにこの街で隠れていたところをヤツらに見つかり、…そこに僕が通りかかったということらしい。


「そっか、大変だったね」

「……(コク)。……なんで、マナを助けてくれたの?」


マナちゃんの真っ直ぐな瞳が僕に問いかける。ここで適当にごまかすことだってできるけど、それをしてはいけない質問だと悟った。


「助けたかったから、かな。僕は正義の味方じゃないし悪が許せないから君を助けたって訳じゃない。ただ、僕がそうしたかっただけだよ」

「そうしたかった?」

「うん、マナちゃんを助けたかったから助けた。それだけ」


そう。これが僕の嘘偽りのない本心。僕は正義感なんてものは持ち合わせていないし、正義の味方になるつもりもない。いつでも自分がやりたいようにするだけさ。


「それで、マナちゃんはこれからどうするの?」

「マナには、帰るところも、行くところもありません。だから、その……マナのそばに、いてくれませんか?」

「え?」


マナちゃんがそう言ってくるとは予想外だった。家に帰りたいとかだったら、送り届けるつもりだったけど、そんな村なら帰りたくないよね。

そりゃそうだ。でも、大丈夫かな。色々と。


「マナと、ずっと一緒に、いてくれませんか?」


マナちゃんが瞳を潤ませてこちらを見てくる。

うん、まあ、あれだ。可愛いからいいか!


「わかった。マナちゃんと一緒にいよう。約束する」


そう言うとマナちゃんは初めて笑ってくれた。

え?なにこれ可愛い。


「もうひとつ、お願いが、あるの……」

「ん、まだあるの?いってごらん?」

「マナの、……お、お兄ちゃんに、なってください」


なん……だと……。

可愛いにも程がある。こんなの断るわけがないじゃないか!


「わかった。マナの好きなようにしていいよ」

「……!うん!!」


さっき以上の笑顔で笑うマナ。


とりあえず異世界で、妹が出来ました。

今回もお付き合いいただきありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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