むしゃくしゃしてやった反省はしていない。
名前考えるの苦手です
まさか、女の子とは思わなかったな。でも、なんでこんな子がこんな所をウロウロしてたんだろう。
「えーと、僕は百田遊助。君の名前を聞いてもいいかな?」
「……」
んー、流石にまだ警戒されてるのかな?さっきまで怖い思いをしていたんだ、当然か。ここは急かさずこの子が自分から話してくれるのを待つか。
などど考えていると女の子が賊たちをちらちらと怯えた目で見ているのに気づいた。
あ、もしかして……
「大丈夫、こいつらは気絶させたからもうしばらくは起きないよ。一応念の為に縄で縛っておこうか?その方が君も安心でしょ?」
「……(コク)」
少女が頷いてくれたので僕は賊たちをロープで縛り、路地の隅へと移動させた。さて、これでこのことしっかり話せるぞ。とりあえずさっきは急に名前を聞いて驚かせたろうから謝らないとなぁ。
「さっきはいきなり名前を聞いたりしてごめんね。君が話したくなった時に教えてくれればいいからね」
「……マナ」
「え?」
急のことで驚いてしまった。もしかして名前を教えてくれたのかな。
「えっと、マナ、ちゃん?」
「……(コク)」
僕が尋ねるとマナちゃんは小さく頷いた。やだ何この子。超可愛いんだけど。……おっといかんいかん。
「えっとマナちゃんはなんでこの人達に捕まってたの?」
ぐぅうううう
マナちゃんに質問していたら、大きな音が鳴った。なんの音だ?
おや、マナちゃんが顔を赤くして俯いている。もしかして今のはマナちゃんのお腹の音かな?
「……お腹すいたの?」
「……(コク)」
マナちゃんは顔を伏せて、申し訳なさそうに頷く。
「そっか、じゃあお話はあとにしてご飯食べようか」
そう言うと、マナちゃんは驚いた顔をして僕を見つめていた。
ん?なんでそんなに驚いてるんだろう。まあ、気にしないでおこう。
とりあえず宿屋に戻ってご飯を作ってもらおう。
そうして僕はマナちゃんを連れ宿屋に戻ってきた。
「すみませんー」
「おや、おかえり、はやかったね。……ん?その子は?」
「実は訳ありで、お腹空かせてるみたいなのでなにか食べさせてあげてください。もちろんお代は払いますから」
「よく分からねえが、そういうことなら少し待ってな」
そう言うと店主は厨房へと消えていった。そしてしばらくして、ご飯を作って持ってきてくれた。あ、僕の朝ごはんと同じだ。
「あいよ、お待たせ!沢山食いな」
マナちゃんは自分が食べていいのか?とでも言いたげな顔でこちらを見ていた。
「うん、これはマナちゃんが食べていいんだよ。遠慮せずにお食べなさいな」
そう言うとマナちゃんは1口また1口と、ご飯を頬張っていた。ポロポロと涙を零しながらご飯を頬張っているマナちゃんを僕は無言で見守っていた。
食事が終わると、マナちゃんは電池が切れたかのように眠ってしまった。きっと疲れていたのだろう。僕は自分の部屋のベッドにマナちゃんを運び寝かせた。そして、店主にこれまでの事情を説明した。
「なるほどなぁ、そんなことがあったのかい」
「ええ」
「でも、多分あの子はそいつらに襲われる前にもなんかあったんだろうな、見た感じ何日もまともな飯を食ってないようだ。それはお前さんも気づいてただろ?」
「ええ、部屋に運んだ時すごく軽かったので」
「まあ、すぐに解決できる問題でもねえだろうが、あんたがちゃんとあの子を守ってやんな」
「はい、そうします。…それじゃ、そろそろ」
「ん?どっか行くのかい?」
「はい、賊からもうちょい詳しく話聞いてきます」
そして僕はちょっと寄り道をして、賊を放置した裏路地へと向かった。僕がつくとちょうど賊たちも目を覚ました頃だったらしい。
僕はリーダーの男にいくつか質問をした。
「ねえ、なんであの子を襲ったんだい?」
「金のために決まってんだろ」
まあ、これは本当だろう。さっきも言ってたし。
「人をさらって奴隷商人に売りつけてることについてはどう思う?」
「んなこと知るか!この世界に人間なんてはいて捨てるほどいるんだ、奴隷が一人増えたところで誰も何も思わねえよ」
もういいや、聞いてるとイライラしてくるな。さっさと終わらせよう。はー、まだかなー。
もうそろそろのはずなんだけど。
「こんにちはー」
そんなことを考えていると、誰が声をかけてきた。
「こんにちはー、えっと、バロンさんであってますか?」
「はい、私がバロンです。あなたはユースケさんでよろしかったですか?」
「ええ、急にお呼びしてすみません」
「こちらこそ準備に手間取りまして、お待たせしてすみません」
いきなり話し始めた僕らを、賊の男たちはわけがわからなそうに見ている。
「それで、お話にあったのは」
「ええ、こいつらです」
「なるほど」
「お、おい、てめぇ、まさか……!」
男達が僕を鋭い目で睨みつけてくる。どうやら僕がしようしてたことに気づいたようだ。
そう、僕はこいつらを奴隷商に売り渡すためにバロンさんに来てもらったのだ。
「まあ、男なんでいくらでも使い道はあるでしょう。それで、おいくら位で買い取るのが希望ですか?」
「いえ、希望はないです。いくらでも構いません」
「てめぇ!ふざけてんじゃねえぞ!なんで俺達が奴隷にならなきゃいけねえんだ」
「何言ってんのさ、お前達もそうやって今まで何人もの子供たちを奴隷にしてきたんだろ?なのに自分が奴隷になりそうになったらいい訳か?男らしく覚悟決めなよ。それに……」
「な、なんだよ」
「この世界に人間なんてはいて捨てるほどいるんだから、奴隷が一人増えたところで誰も何も思わないんだよね?」
「!?」
「頑張ってご主人様のために働きなよ。奴隷君」
ハンムラビ法典には、同害報復の原則が示されている。目には目を歯には歯を、罪のない子供たちを奴隷にするような悪党にはそいつらが奴隷になる苦しみをってね。人を撃っていいのは撃たれる覚悟のあるやつだけ。むしろ、処刑とかでない分感謝してほしいくらいだ。
あ、そうだ、いいこと思いついた。
「バロンさん、すみません。さきほどの買取の希望額なんですが、可能な限り高くできませんかね」
「それは構いませんが、どうされたんです?」
「ええ、少し思いついたことがあって」
今回もお付き合いいただきありがとうございます。
次回もよろしくお願いします。