プロローグ
拙い文章ですが、楽しんでいただければ幸いです。
とある森の中を、2人の人影が走り抜けてゆく。1人はガタイのいい中年の男、もう1人は幼い少女。見たところ2人は親子のようだ。その2人のあとを魔獣の群れが追いかける。
「お父さん、怖いよ・・・」
「もうちょっとだ、頑張れ!」
とは言うものの、相手は魔獣。子供を守りながら逃げるのにも限界がある。瞬く間に親子は魔獣の群れに囲まれてしまった。
「くそ!なんなんだこいつら」
「お父さん、怖いよ・・・!」
「大丈夫だ、父ちゃんが絶対に守ってやるからな!」
いくら男性のガタイがいいと言っても相手は魔獣、しかも数も多い。2人とも無事では済まないだろう。2人も、もうダメだと諦めかけていた。
「おーい、ふせてくださーい」
どこからか間の抜けたような声が聞こえてきた。一瞬遅れて、男性が娘を抱えて地面に伏せる。
その直後、一瞬にして魔獣の群れが全滅した。
「な、何が起こったんだ?」
「お父さん、魔獣がみんな死んでる」
親子が驚いていると、森の奥から人影が近づいてきた。珍しい服を着た黒髪の少年だ。恐らく彼が魔獣の群れを殲滅したのだろう。
「怪我はありませんか?」
「あ、ああ。これ、あんたがやったのかい?」
「ええ、こういうのには慣れてますんで。お2人に怪我なくてよかったです」
「助かったよ。正直もうだめかと思っていたのでな」
「お兄ちゃん、ありがとう」
「どういたしまして。でもなぜあんなに魔獣が?」
少年が男性に尋ねる。
「それがわからんのだ。普通あの手の魔獣はあまり人里に近づかないのだが、最近魔獣に村人が襲われる事件が多発していてな、困っておるんだよ」
「・・・そうなんですか」
「まあ、このあたりの魔獣は今兄ちゃんが退治してくれたししばらくは安心だな」
「あはは、お役立てて良かったです」
「それにしても兄ちゃん、あんたとんでもなく強いな。冒険者なのかい?」
「いえいえ、そんな大層なものじゃありませんよ。ただの流しの旅人ですよ。……おっと、そろそろ行かなきゃ。では僕はここで」
「そうかい、本当にありがとうな。また会えたら次はちゃんとお礼させてくれ」
「はい、ぜひお願いします!では!」
「お兄ちゃんばいばーい!ありがとうー!」
こうして少年は2人の前から去っていった。
「お父さん、あのお兄ちゃんすごく強かったね!」
「そうだなぁ。まるでこの世のものとは思えないくらい強かったな」
などと話しながら、親子も帰路につく。
この世のものではない、2人がそう思うのも無理はないだろう。
なぜなら彼は、この世界の人間ではないのだから。
いかがだったでしょうか。
次回もお楽しみに。