試し書き
僕の彼女
僕は地味だ。
群れるのは苦手だし、初めての人と話すのも苦手。そんな僕も、今年で16歳になる。
やっとの思いで賢い高校に入り、高校デビューをしようとして失敗した僕は、中学となにも変わらず地味なままでいる。当然彼女なんていない。
これは、そんな僕のお話。
ピピピッピピピッピピピピピピピピピピピピ……
カチッ
なんだか、どうしようもなくありきたりな音で目が覚める。文字にしてずっと眺めていたら気分が悪くなりそうな音だ。大体「ピ」ってなんだよ。音楽使えよ。そこからして地味なんだよ。(全国の「ピ」で起きている人ごめんなさい。)と、そう思いながらゆっくりと起き上がった。
ここで僕は、あることに気づく。
悠人「あ、そっか。今日から2学期か。」
そう。悠人は昨日まで夏休みだったのだ。
僕の名前は堺悠人高校1年生。身長は162㎝で、太ってはいないが、痩せてもいない。髪型はふわっとした黒色で、どちらかと言えば可愛い感じの顔だと思う。現在、彼女いない歴を進行中である。
悠人「さてと、下に降りるか」
悠人の家は二階建ての一軒家で、悠人の部屋が上にある。因みに、悠人は一人っ子である。
ご飯を食べ、身支度をしていると、家のチャイムが鳴った。誰が来たのかはすでに分かっていたので、僕は急いでカバンを持ち、玄関に向かった。きっと、あいつが迎えに来たんだろう。
悠人「行って来まーす!」
そう言って家を出た。まぁ、家には誰もいないんだけど。余談だが、実は両親共に朝早くから仕事に向かうため、いつも僕が起きる時間にはいないのだ。朝ご飯を作って出て行ってくれるので別にいいのだが。
家を出ると、予想通りの女の子が立っていた。
咲希「おはよう悠人!」
悠人「お、おはよう。」
この子は佐々木咲希僕と同じ高校一年生。同じ高校だが、クラスは別になった。身長は僕より少し小さいくらいで、髪はツインテールの黒色。顔は可愛い方だと思う。だが、胸は残念ながらそんなに無い。因みに僕と咲希は物心つく前から一緒に居る、いわば幼馴染という奴だ。
僕は、挨拶と同時に少し憂鬱な気分になり、少し下を向きながら歩き出す。
悠人「はぁ……」
僕は心配してくれと言わんばかりのため息をついた。
咲希「ん? どうしたの? 」
咲希が少し前かがみになりながら少し下を向いた僕の顔を覗き込む。
悠人「いやぁ、学校が憂鬱でさ。いいよね、咲希は学校が楽しそうで。」
僕は嫌味まじりにそう言った。
咲希「そんな事言わないでさ、元気出しなって!」
ここでいつも、というか毎年この時期になると咲希は僕を励ましてくれる。こうして学校に行く活力を付けてからでないと夏休み明けは特に元気が出ないのだ。
こうして咲希と雑談をしながら登校し、僕達の学校である、浅見高校に着く。他の学校よりも一回り広いこの学校は、普通科の高校であり、全日制である。
クラスが別なので、階段を登るとすぐに別行動になる。すると突然、あの重い感覚に陥る。クラスに友達が1人もいない僕には、教室に入って席に着くだけで気が重かった。
席に座って先生が来るのを待つ。今日は始業式だけなので、先生が来たらすぐに体育館に移動し、校長の話を半分寝ながら聞いてから、また教室に戻る。
教室に戻って約10分が経過した時、先生がやって来た。自然とうるさかった教室が静かになる。すると、先生が口を開いた。
先生「え〜今日はなんと、転校生が来ています。」
教室がまた少しうるさくなる。
先生「では、入って来なさい。」
先生の一言と共に教室の扉は開き、同時にみんなも黙る。だが、みんなが黙ったのは、ほんの一瞬だけだった。
長く艶やかな金色の髪と、長い足。かと言って身長は高すぎる事はなく、丁度良い高さに収まっている。胸もまた然り。顔はおっとり可愛らしく、見事な美少女だ。
僕には一生関わりが無さそうなタイプだ。
この美少女が先生の横に立つと、先生がめっちゃブスに見える。先生の名前は大西だってよ。ただでさえ地球外生命体みたいな顔してるのに、美少女が横に立つともうブス極まりないな。
すると、さっきまで美少女だった彼女が、何かに囚われたように狂い始める。
美少女「ぎゃぁぁぁ!気持ち悪いぃぃぃ!」
と、叫んでいる美少女の顔がとてつもなくブサイクだったので、偶然持っていたナイフをぶん投げて、大西を殺した。
完
ひっつき虫
夕方六時。太陽が沈みかけ、夕日がとても綺麗な時間。そんな時間に、公園のブランコで3人の家族が遊んでいる。
微笑ましい。
子供は5歳くらいだろうか。お父さんにブランコを押してもらっていて、とても楽しそうに笑っている。その笑顔を、お母さんがカメラで撮っている。
可愛いなぁ。
高い高いしてあげたい。てかもう……
薫「子供欲しい……」
千花「えっ!……どうしたの?いきなり…… 」
薫「い、いや! なんでもねぇよ! ……んで、話ってなんだ?」
そうだ。俺は幼馴染の千花から話があると言われたので、学校の帰りにこうして公園に立ち寄ったのだ。だが、なぜか千花は何も話そうとしない。どうしてだ?
千花「えっと……それはその……」
千花はまだ何も話そうとしない。本当にどうしたんだろう。千花といえば、美人でスタイルも良くて、ショートカットがすごく似合ってんだけど、胸とか身長とかは全然ない女の子だ。中学の時くらいから人気があったから俺みたいな普通な奴とは関わんねぇと思ってたが、同じ高校に入ってからは、少しずつ話すようになった。
薫「もう帰るか? 」
千花「それはダメっ! もうちょっとだけ待って?」
薫「わ、分かった。」
ブランコに居た家族も、もう帰ってしまった。誰も居なくなった公園で夕日に照らされた千花の頬が、少しだけ赤くなった気がした。そんな時だった。
千花「好きです! ずっと前から……!」
薫「えっ?」
とっさに反応する事ができなかった。いつも可愛くて、素直で、今では学校のアイドルみたいな奴からの告白だからだ。そんな奴が俺なんかに……
正直、自信がない。
俺は顔も良くないし、ひねくれてるし、良い所なんてどこにもない。そんな俺と付き合って千花にメリットなんてあるのか?
薫「ごめん……えっと、その……」
千花「私じゃダメ? 」
少し涙を溜めた目で俺を見つめる。身長に差がある為、自然に上目遣いになる千花は本当に可愛い。
でも……
薫「少し考えさせてくれない?」
千花「うん、、分かった。」
そうして、家に帰ることになった。
千花「ただいま〜」
母「お帰り〜今日は遅かったわね? どこ行ってたの? 」
千花「ん?ちょっと買い物〜」
母「そう。もうちょっとでご飯できるから、すぐ降りてくるのよ〜」
千花「はーい。」
私は階段を登って部屋に入り、ベットへダイブする。
千花「私の告白を保留にするとか本当……
死ねばいいのに。」
ん?違う違う。私そんな事考えてない。今のなに……?
忘れよう。
私はご飯を食べた。