06話 トライアル
3人のみが分かったように昔を懐かしみ話を進める中、呆気にとられていた馨が正気に戻る。
「綺羅君は、如月のお姉様達と知り合いなんですか?」
するとその言葉に雅が振り返り、チッチッチと人差し指を振り
「飛鳥君は、なんとこの紫苑ちゃんの旦那さんなんですわ」
ババンッ! と交換音が付きそうな勢いで両手で紫苑を指し言い放つ。
「えっ! じゃあ綺羅君は逆玉って事?」
堂々と胸を張り雅は爆弾のような言葉を投下し、飛鳥と紫苑があっけにとられる中、馨は羨ましがり
「クックックッ、どちらかと言うと如月妹が玉の輿に乗ってんじゃないか?」
花蓮がしゃがみ込みそうな勢いでお腹を押さえ更なる個人情報を暴露する。花蓮の言葉に先ほどまで考え込むように唸っていた真人が椅子から立ち上がり
「そうか! 飛鳥って、あの綺羅か! 医療は愚かアーム業界、最も有名なのが航空業界。その綺羅グループの御曹司って事か?」
雅と花蓮は何をいまさらって顔をして、紫苑、馨は驚いたような顔をする。
「まぁ、隠すことじゃないしね。紫苑とみや姉には後で説明するよ」
飛鳥の言葉に紫苑と雅が頷く、すると扉から鈴が入って来て、ずかずかと花蓮の前まで歩き寄ると頬を膨らませ
「も~花蓮ちゃん! 面倒ごとを鈴に押し付けて、何を楽しんでいるですか!」
「何を言っている? あの場の責任者はお前だろう?」
鈴は花蓮を怒鳴りつけ、花蓮は何食わぬ顔で言葉を返した。
「う~~~もういいです。終わりましたからいいですよ~~~だ」
鈴は拗ねた様に花蓮から離れ救護室から出ていこうとして、その場でくるりと振り返り紫苑の方へ顔を向け
「あっ! そ~です。忘れるとこでした。紫苑ちゃんは【トライアル】どうするですか?」
鈴の言葉に紫苑の表情が曇り、その紫苑の表情から雅は紫苑が置かれている現状を察する。
「やっぱり去年のことが尾を引いてますの?」
雅の言葉に紫苑は素直に頷くと、状況を理解できないでいた真人が口を開いた。
「去年? 何かあったんすか?」
あまりにも軽々しく聞かれ、紫苑は更に顔を曇らせ、それを見た馨は怒り気味な顔となり、更に雅は真剣な眼差しで
「私のチームのメンバーとして参加したんですわ」
この雅の言葉で真人以外が察したにもかかわらず、真人は分からずに小首を傾げ更に疑問を口にする。
「それが何か問題でも?」
馨は額に手を当て
「無いわ」
飛鳥はため息交じりに
「無いな」
「無いですわね」
最後に雅が否定して、それを見た花蓮がまたもやお腹を押さえ声を押し殺し笑う。
「クックックッ、【トライアル】に2年は参加が必須だ。ここまでは良いか?」
真人を含め全員が頷く。
「そしてこの【サバイバル・トライアル】通称【ST】や【トライアル】と呼ばれるものなんだが、試験は集団行動が求められ基本4人から6人程度で参加するのが一般的になっている。1年は自由参加だが、2年は必須。ゴールまで時間内にたどり着くことで1年生は実技単位を全て獲得したことにでき、2年は3年への進級資格を得る。とまぁこんなとこだな」
花蓮が説明すると鈴はニヤリと口端を釣り上げ
「甘いのです! 甘味堂のイチゴ大福より甘いのです。今年から1年生はSクラスに限られるって変わっているのですよ! 知らなかったんですか、花蓮ちゃん! 知らなかったんですか?」
「甘味堂? それってどこだ?」
「突っ込むとこはそこじゃないでしょ? 全くアンタは・・・」
鈴の指摘にたとえに出された店の名前で真人は疑問を持ち、その真人に馨が呆れていた。
「なんだよ、そもそもSクラスなんて俺らには関係ないだろ?」
真人の言葉に担任である花蓮も呆れる。
「・・・鏑木、ちゃんと入学案内を読んでないのか?」
「え~と・・・はい」
花蓮の言葉に真人は過去を振り返り、恐る恐る読んでないことを肯定した。
「呆れたやつだな。【4月の月末の1週間を持ってランキング戦が行われ、上位10名が特待クラス、Sクラスへとクラス替えが行われる】って書いてあったはずだぞ? だから貴様にも可能性は低いがSクラスに入ることが出来るわけだ。分かったか?」
花蓮の説明に真人は勢いよく首を縦に振る。説明が終わったのを確認した鈴は紫苑に向け
「それより紫苑ちゃんはどうするのです? 必須ですから・・・1人で参加になってしまいますよ?」
「同じクラスで組めないんですか? 実力が無いといっても同じDクラスなら・・・」
鈴の言葉に疑問に思った馨が鈴に疑問をぶつけた。すると答えは鈴からではなく雅からもたらされた。
「で、私のチームに入ったというのが問題になってくるのですわ」
雅の言葉を聞き壁に寄りかかっていた飛鳥が壁から背を離し
「なるほど、上位クラスのチームで単位を楽に取得したと思われたわけですね」
「何だ、要はやっかみだろ? 嫌だね、ケツの穴の小さい野郎どもは」
飛鳥の言葉に真人は心底いやそうな顔をして紫苑のクラスメイトを貶す。
「クックックッ、ケツの穴が小さいと来たかクックックッ」
「もう! 花蓮ちゃん! 笑い事じゃないのです! 紫苑ちゃんにとっては進級問題なんですから!」
笑い出した花蓮に担任である鈴が怒り声を荒げた。すると花蓮の表情が変わり真剣なものとなり、飛鳥へと顔を向け
「悪い悪い、そうだな。飛鳥君、協力してやってはどうだろうか?」
花蓮に振られその場に居る者たちの視線が飛鳥へと注がれた。注目を集めた飛鳥は照れながら
「綾女母さんには、あまり目立つなって言われてんているんですけど?」
前置きお入れ飛鳥は周囲を確認し、一泊間を置き
「・・・まぁ、紫苑の為と言われれば自己責任で手伝いますけどね」
飛鳥の言葉に紫苑と雅は顔をほころばせ喜ぶ。そんな中、鈴は飛鳥の実力を確認しようと口を開き飛鳥を問いただした。
「簡単に言ってくれますね。Sクラスですよ? 学年トップ10ですよ? 貴方はそれになれるんですか? 勿論なれるんですよね?」
飛鳥は花蓮へと視線を送り、花蓮が頷くと、飛鳥は鈴を手招きして近づけ、真人や馨の陰になるようにして1枚の透明なカードを鈴に見せる。鈴は驚きカードの内容を口にしようとして飛鳥に口を押えられる。
「そこで声を上げたら他の人にわからないようにした意味がないでしょ」
鈴は花蓮に引き取られ、花蓮の腕を肩へと回されヒソヒソと小声で会話をする。
「分かりました。実力はとても高いと私も認めましょう」
振り返りそう口にした鈴はなぜか涙目であった。
脅されたな
脅されましたね
脅されたみたいだね
脅されたようですわね
それぞれが心の中で呟き、今後について色々と話し合うことにして放課後集まることになり場所をどうするのかと言う話になった。
「それでどこに集まりますの? 今日は生徒会の方も有りませんから私も参加いたしますわ」
「近場で人に聞かれないような場所・・・」
「それなら僕の家に来ますか? 丁度通学用のエレベーターの近くに有りますし、紫苑やみや姉と話すこともあるでしょうから」
雅の参加も決まり、真人が言うような傍聴されない場所と言う事で飛鳥が近場ということで自分の家を提案した。
「悪くありませんわね。丁度良いですし任せます」
雅が了承するとそれに続くように紫苑、真人、馨が頷いた。
「? 貴方方は関係ないのではなくて?」
「固いこと言うなって先輩。気の合う立ちの家へ行く・・・な? 問題ないだろ?」
「その心は?」
雅が【ST】についての話と飛鳥のことを聞きに行くのになぜついてくるのかと真人と馨に聞くと、真人は友達である飛鳥の家へ行って見たいからと答えたので、付き合いの長い馨が突っ込みを入れた。
お読みいただきありがとうございます。
明日もUP予定ですのでもしよろしければお読みください。