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マインドアームズ~心の力  作者: あおい聖
入学編
3/20

03話 飛鳥と綾女

 首都【富士】地表階層、南部には空港、軍施設が有り、中央部に学園施設、北部には行政府、ならびに一部の商業駆が存在していた。そんな北西部にある商業駆でかなりの大きさを示す建物、そこは綺羅グループに所属する【キラ・アーム・ロックフュラー】【KAL】の所有施設。


 そこに新たに建設された大きな体育館のような建物の中、飛鳥は駆けていた。建物の中だと言うのに草原が広がり、所々には岩が障害物の様に転がっている。



「感触は本物に近いですね」



 足から伝わる感触を確かめるように駆ける飛鳥へ火の矢が3本飛来する。飛来する方向を見ずに既に気が付いていたかのように僅かな動きでステップを踏むかのように躱す。



 3本目を躱し切ったとこで飛鳥は右手を振るう。すると何もない空中に氷でできた矢が現れ火矢が放たれたであろう場所へ飛んでゆく。



「ぐはぁっ!」



 叫び声と共にドサリと何かが倒れる音がして、飛鳥は再び駆けだす。すると川のような水の流れる場所へと来ると、水の中から2つの人影が飛び出しガンタイプのアームを構え引き金を引く。するとそのガンの先より水の弾丸が回転するように射出され飛鳥目掛け襲い来る。



「まっ正面からですか? それは悪手ですよ」



 飛鳥の駆ける足の下に幾何学模様の光が一瞬見えたかと思うとアームを構えていた人影に向かって地面がら土の槍がせり出し貫く。飛来する弾丸は何事もないとばかりにそのまま突っ込み、飛鳥に当たるかと言うとこで何かに当たったように弾け飛ぶ。そのままの勢いを持って川を飛び越えた飛鳥は、機材などが並び白衣を着た研究員たちが集まる場所へと出る。そしてその中のモニターを見ていた髪の短い女性のとこまで行き



「どうでしたか?」



 飛鳥の言葉に女性研究員はモニターから視線を外し飛鳥へと顔を向け



「バッチリです。疑似フィールド、ならびにダメージ変換システム。双方ともに問題ありません。大成功と言えるでしょう。」



 女性研究員の言葉に周囲に居た研究員たちから歓声が上がる。



「これで軍の依頼は終了かな。後僕が確認しなきゃいけないことはある?」



 飛鳥の言葉に女性研究員は首を左右に振り



「いえ、本日の予定はこれで全てとなります。お疲れ様でした若様」



 女性研究員の言葉を合図としたように喜んでいた研究員たちも一斉に頭を下げ



「「「お疲れ様でした若様!!!」」」



「じゃあ、後のことはよろしくお願いします」



 照れたような表情で飛鳥は後のことを頼み出口へと向かう。すると出口の扉の陰から女性が飛び出し飛鳥へと抱き着く



「だ~れだ」



 目も塞がずに誰だなどない、飛鳥に抱き着いているのは綾女であることは誰にだってわかる。



「誰だって・・・綾女母さんですよね。姿が丸見えなんですから誰にだってわかりますよ」



「うん、飛鳥君は今日も大丈夫だね。それにしても・・・」



 綾女は飛鳥の瞳を覗き込み確認を口にすると飛鳥から身体を離し、施設内を見渡す。



「これで完成?」



「ええ、後は耐久テストを数回繰り返せば納品可能です」



 飛鳥の返答に綾女は口端をニヤリと釣り上げ



「私が全力出しても?」



「5分間程度ならまず問題ないかと。それ以上だと現段階ではダメージを【マインドエナジー】【ME】へと変換するシステムに負荷がかかりすぎるかと」



 【マインドエナジー】【ME】スキルを発生する際に体から発せられるエネルギー。これを凝縮した物が【MA】と言われている。



「なら大丈夫ね。明日からは私も実験に参加するから!」



 綾女の声に苦笑いを浮かべながら女性研究員は「はい」と力なく返事をした。



「それで綾女母さん、僕に何か用があったんじゃないですか?」



「う~ん、そうね入学祝も兼ねてどこかで食事をしましょう。うん、それが良いわ!」



 飛鳥の問いに綾女は飛鳥の腕を取り胸を押し付け引っ張るように歩き出す。飛鳥もしょうがないなと言った表情で歩き出し、建物を出るときに後ろへと顔を向けぺこりと頭を下げ綾女と共に施設を後にした。



・・・・・・・・・・・・・・・



 洋食レストランの個室、薄暗いが温かみのあるロウソクの火の光の中、向かい合う形で飛鳥と綾女は食事をしていた。



「それで育成高校はどんな感じ? 友達は出来そう?」



 飛鳥は口の中の食べ物を飲み込み、ナプキンで口を拭い綾女を見据え



「ええ、問題ありません。それに1人、鏑木真人と言う気の合いそうな者も居ました」



 飛鳥は入学式の時の光景や教室での光景を思い出し頬が緩む。それを察したかのように綾女も微笑み



「そう、良かったわ。大丈夫そうで・・・あっそうだ。3年と2年に如月家の姉妹がいるから出来れば仲良くしてちょうだい。特に妹の紫苑ちゃんは何か悩んでいるみたいだから」



「前にあまり目立つなと言ってませんでしたか?」



 飛鳥の言葉に綾女はニヤニヤといやらしい笑みを浮かべ



「だって、飛鳥君、紫苑ちゃんが絡むと自重する気ないでしょ?」



 綾女がこう言うのには事情がある。2年前まで病弱であった紫苑がその年に体調が急変し危篤状態に陥った出来事があった。綺羅総合病院に運び込まれ入院していた事も有り、その紫苑の治療を飛鳥が行っていたのである。古代文明の機器や飛鳥のスキル【操作】を全開にして・・・オーバーテクノロジーともいえる設備に、チートともいえるスキルを駆使したことで紫苑の病気は完治したのだが、その後処理やら何やらで綾女は苦労したことを思い出し乾いた笑みをこぼす。まぁそのおかげで如月家との友好関係を築くことが出来たのだが・・・


 飛鳥は綾女の言葉に顔を反らし頬を赤く染める。



「皇じゃなくなったって、僕が彼女とした約束だから」



 その言葉を聞き綾女の口端がまたもやニヤリと吊り上がり小声で呟くように



「この分なら、あの話進めても問題なさそうね」



「何が問題ないんですか?」



 綾女の小声が聞こえたのか飛鳥が綾女に訊ねる。



「何でもないわ、何でも」



 綾女は何でもないと言い含みのある笑みを浮かべる。飛鳥はその綾女の顔が何でもないわけないと思いつつも、綾女は教えないだろうなと思い聞き返さなかった。



・・・・・・・・・・・・・・・



 食事も終わり店の外へと出る。店の前には迎えの車が横付けして男がその横に立ち待っている。



「じゃあ私は本社に戻るわ。お休み」



「お休みなさい」



 挨拶を交わし綾女は男が開けたドアから車内へと入り座席に座り



「出して(ちょう)だい」



「宜しいので?」



 運転士が外に居る飛鳥の方へとチラリと視線を送る。綾女も視線を向け手を振り



「ええ」



「分かりました」



 運転士は了承の言葉を発しアクセルを踏み込んだ。飛鳥から車が離れたのを確認した綾女は車備え付けのパネルを操作して通信を繋げる。



「如月の当主に繋げて頂だい」



『畏まりました。しばしお待ちくださいませ』



 モニターに映された執事風の男が頭を下げ画面が『しばらくお待ちください』と表示され緩やかなクラシック音楽が流れだす。



「さ~て、飛鳥君には内緒で話を進めて驚かせるわよ~」



 綾女の言葉に運転士は苦笑いを浮かべ、また飛鳥にサプライズをするのかと心で思い浮かべ



 ご愁傷様です若様。私ども使用人は陰ながらフォローはさせて頂きます



 その間も綾女は音楽に乗せ自身も鼻歌を歌っていた。

お読みいただきありがとうございます。


明日もUP予定ですのでもしよろしければお読みください。

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