お腹がぺこぺこです。
予想外に時間ができたので投稿しました。
「う? 」
どうやら、 睡魔に勝てずに眠ってしまったらしい。 煌夜の寝姿を堪能しようと思ってたのに。
残念と思って横を見たら、なんと!
煌夜がアルマジロになったまま、 私の腕の中に居た。 すぅすぅ寝息を立てているので、 どうやら寝ているみたいだ。
「寝てる……… よね……… コレ起きてたら怒られるヤツだぁ……… 」
思わず、 そう呟いたら煌夜が身じろぎをした。
「あっ……… 」
ヤバイと思って固まっていると、 寝ぼけ眼の煌夜と目があう。
「……… お、 おはよー? 」
「おは………よ………? うっ! 」
『うっ! 』 の所でガバっと煌夜が身体を起こす。 一瞬固まった後、 雷が落ちました。
「ましろっ お前はっ 何度言えば良いんだっ! 」
「煌夜、 元気になったんだね! 良かったぁ 」
「ご ま か す な! 」
うぅ。 ばれたし。 でも心配してたのは本当だよ? 昨日本っ当に変だったし。 元気になって良かったよ……… 煌夜が元気ないと、 寂しくて、 不安になる。 ていうか――― あれ?
「煌夜、 今私の事ましろって呼んだ……… 」
「う……… よ、 呼んじゃいけないのか? 」
目を丸くして言えば、 煌夜が真っ赤になった顔をそむけながらそう言った。
「ううん、違うよ! 嬉しいっ! 」
思わず満面の笑みで返せば、 ほっとしたような顔で煌夜も笑った。
「そ、 そうか……… その、 な。 昨日はごめん。 ましろ」
「うんっ! 今、 とっても嬉しかったから良いよ。 元気になってくれたしね」
ちょっと照れながらそう言ったら、 煌夜が慌てたようにソワソワしながら言った。
「なんか、 腹が減った気がするな? 」
「昨日何も食べて無いものね」
きゅうっと不満を訴える自分のお腹を触る。 このお腹の減り具合はやっぱり一日は経ってるんだろうなぁ………。 ごめんよお腹。 私もツライ。
「俺の所為だな。 悪い。 でも、 何も採取して来なかったしな……… イーロウの所に行くか。 食べれそうな木の実があったし」
昨日は煌夜の様子が変だったから、 まったくイーロウさんのいた場所は見てなかったや。 それどころじゃなかったし。 でも、 なんかの樹が生えてる所じゃないとゲートは繋げないんだよね? 私、 花畑から記憶ないし……… あそこに辿り着ける自信がないなぁ。 それとも煌夜は道が分かるんだろうか?
「あ、 またおいでって言ってたしね。 でも、 煌夜は道わかるの? 良く考えてみたら行けなくない? 」
「あそこにはマナの樹があったからな。 問題なく行けるぞ? ましろが寄りかかってた木だ」
うろ覚えの記憶を総動員したけど、 マナの樹は幹が太くてエメラルドグリーンな色してたなっていう記憶しかでて来なかった。
「へぇ。 そうだったんだ。 じゃあ行けるね! ご飯食べに行こう」
「そこは、 イーロウに会いに行こうじゃないんだな」
「だってお腹が減ってるからね。 もちろんイーロウさんにも会いに行こ? 」
お腹を満たす事は重大事項だよ煌夜クン。 お腹がいっぱいになれば、 それだけで幸せを感じる事ができると断言しよう。 ――― 食いしん坊でごめんなさい。 だって食べるの大好きなんだもん。
「なんか……… ましろを見てると、 くだらない事とか気にしてる自分がバカみたいだ」
「私が、 あんまり気にしない方だから、 煌夜と足して割ったら丁度いいのにね? 」
「気持ちだけ受け取っておく。 まぁ……… ありがとな」
煌夜は照れくさそうに言いながら、 羽をパタパタさせて宙に浮かぶ。
更には、 尻尾を足の間に入れていて両手でモジモジいじってる………?!
「か」
「か? 」
「かわーっ」
ぎゅむぎゅむ。 圧倒的な破壊力に私は問答無用で抱きついた。 ちゅーしたい。
「可愛い~~~っ! 」
抱き締める私に対して、 半分くらい白目を剥いた煌夜は魂が抜けたように脱力している。
「もういい。 疲れた。好きにしてくれ……… 」
煌夜が諦めたように言ったので、 許可が出たと判断。 るんるん気分でぎゅうぎゅうしといた。
「愛いやつめ~っ! じゃあいつでも抱っこOKだね」
そう言ったら煌夜が死んだ魚のような目になっちゃった。
そんなに嫌かね? しょうがない、 何回かに一回は我慢するよ。
煌夜がぐったりして大人しい事を良い事に、 私は抱っこしたまま、 ベットを降りた。
そのまま抱えて行きたかったんだけど、 階段は危ないからって拒否される。
諦めきれずにじぃーっと見てたら、 溜息を吐いて煌夜が私の肩に乗った。
「そんなに嬉しいのか? 」
「うん」
鼻歌を歌いながら階段を下りる私に、 呆れた顔で言われました。
うん。 嬉しいよ。 煌夜が少しは私に懐いてくれてるって思えるから。
「ゲート。 イーロウの樹」
煌夜の言葉で柱の間に光の膜が出来る。
どうなるかはもう分かっているから、 そのまま躊躇せずに突っ込んだ。
「うぷっ」
視界が暗くなる。 突っ込んだ勢いで何かに激突したみたいだ。
良く見れば、 イーロウさんの背中でした。
「ごめんなさいっ」
『やぁ、 良くきたね。 気にしなくてもいいよ。 ナギくらいの子に突っ込まれた所で怪我なんかしようがないし……… あぁコーヤ。 元気になったみたいだね。 良かった』
「昨日は悪かった」
気まずい顔をしながら、 煌夜がイーロウさんに頭を下げる。
『いや。 あれはしょうがないよ。 予測出来ない事もあったし、 冷静になれなくて当然だ』
「だとしてもさ。 自分の感情が制御できなくなるなんて……… 情けなくなる」
しゅん、 とした様子の煌夜に私は思わず言葉を掛けた。
「コーヤは情けなくないでしょ? 情けないって言うのは私の事だよ。 足を引っ張ってばかりなんだからさ。 でも、 コーヤは私を助けてくれたじゃない。 だからコーヤは頼りに な る の! 」
だってそうだよね? 魔法はろくに使えなければ、 体力だってなんだって私は煌夜の役に立てるような所が何も無いんだもん。 だけど、 そんな私を見捨てたりしないで(良く怒られたケドさ)守ってくれた煌夜が情けないはずないと思うんだ。
『だ、 そうだよ? 』
「う……… そうか」
イーロウさんが、 優しい笑みを浮かべる。 煌夜も照れながらも嬉しそうだ。
「そうだよ」
って良い話しをしていた所だったのに、 私のお腹がぐーっと鳴った。
分かってる、 忘れてないよ! だからと言って今は黙ってて欲しかった(泣)
『……… マナの樹の果実は栄養満点なんだ。 美味しいよ? 』
お腹の音に言及しないでいてくれたのは有難いんだけど、 イーロウさん……… 肩が震えてます。
残念な子を見る、 生温かい眼差しが煌夜から注がれた。
私は真っ赤になりながら、 お腹を抱えてしゃがみ込む。
「ほら」
飛んで取って来てくれたらしい煌夜が、 私の背をつっつく。
半泣きで目を向ければ黄色の林檎に似た果実が小さな手に乗っていた。
「そんな顔するなよ。 昨日から何も食べてないんだ腹位は鳴るさ」
「わーん! コーヤのバカっ」
「は? バカとはなんだ折角取ってやったのに! じゃあ要らないんだな」
「いるよ! いるけどさ。 お腹鳴ったって言わなくったっていいじゃんか! 恥ずかしいのに」
「抱きつくのは平気で、 なんで腹が鳴った事を言うのは恥ずかしいんだ………? 」
理解できないって顔をされた。 生理現象は聞こえても言わないのがマナーだよぅ。
いいよもう。 煌夜にオトメゴコロを理解しろって言うのが無理なんだ。
「理解できない……… 」
『女の子は理不尽な生き物だよ、 コーヤ。 僕の亡くなった妻もそうだった』
「そうか」
『そうなんだ』
うんうんと、 頷き合う……… 共通して分かりあえている『何か』 が二人の絆を強くする。
理不尽? 理不尽って何さ。
え? ていいうか、 なんで私が悪い風になってるの??
煌夜は真白からのスキンシップを注意するのを諦めたようです。
廃棄世界に祝福を。 もこの後、 更新しますのでそちらも宜しければどうぞ~。
次はイーロウに教わるこの『世界』のお話の予定。 明日は更新できません。