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煌夜side 『大切なもの』

まだ、 お互い名前も知りませんがお友達登場。

 

  なんだこれ、 なんだこれ、 ナンダコレ!


 穏やかな午後だ。 ましろが綺麗だと言った花畑で、 さっきまではなんの心配もなかったはずだ。

戦闘は今の所、 ましろを守りながら上手く行ってる。 花畑一つにはしゃいでいるましろは可愛らしい。

クロ玉、 あいつに出会うまでは全部上手く行ってた。


 岩の上で寝てた魔物が目を覚ます。

俺は加護の一つ、 邪眼じゃがんを使用する。 アイツが寄越した、 敵の簡単なステータスを見る能力だ。

 

  『名前 : ダークアイ

  属性 : 闇 

  体力 : ☆☆(青)

   魔力 : ☆☆(白)

   戦闘力 : ☆☆☆(青)

   

   ☆スキル☆  

   ナイトメア(中) : 悪夢を見せる。 追加効果で混乱するかも

   体当たり(中) : 体当たり攻撃。 地味に痛い

   ヴェノムブレス(強) : 口から毒霧を出す。 耐性ないと死んじゃうよ』

 

 そんなに強くない魔物でも属性スキル持ちの方が経験値は多い。 

そう期待した瞬間―― 一つ目の魔物がナイトメアのスキルを使った。 


 

 『警告 : 異常無効のスキルの一部に軽微の損傷がみられました。 損傷がある為、 異常無効のうち精神異常無効が正常に作動できません。 現在受けたスキル混乱は無効にできません』


 「は……? 」


 一瞬、 息が停まる。 何を言った? サポートシステムさんよ。  

俺は問題ない。 同じ闇属性のスキルには耐性がある。 けど、 ましろは? 


 ニンゲンにそんなものある訳ない。


 「―――――っぁっぁああああああああああああああああああああああああっ」


 「ウソだろ。 ましろっ!!! 」



 喉が張り裂けそうな悲鳴をあげて、 ましろが突然走り出す。

俺は慌てて、 ましろを掴もうとするけど届かない。 仕方なく髪を掴んだけれど。 ましろはそのまま

走り続けた。


「あの野郎! 本当に殺してやるっ!!! 」


 口から出たのは神の野郎への怨嗟の声。

契約紋から流れ込んでくる、 ましろの千々に乱れた感情に断片的な映像が混じる。 それはきっとヤツがかけたプロテクトがかかった記憶のハズで……。


 ―― 精神こころが…… 壊れる…… ?


 その可能性がゼロでは無い事に気がついて心が一瞬にして凍りつく。 

嫌だ。 嫌だ嫌だ嫌だ。 ましろが壊れてしまうのは嫌だ。 俺を置いて行くのは許さない。

ごちゃごちゃになる思考の中で駄々を捏ねるガキみたいにくり返す。


 唐突に視界が開けた。 広い泉の横に小山位の大きさの緑色の竜がまどろんでいるのが見える。


 マズイっ!


 あんなのを今、 相手に出来るはずがない。 レベルが違い過ぎる。 

ましろの上げる悲鳴に目を覚ましたようで、 その竜は片手で暴れるましろを抑えると。 髪の毛にぶら下がってる俺を見て目を瞠った。


 『おや、 こんにちは小さい同胞。 この子は、 なんだ? 騒がしいなぁ…… おや、 スキルで状態異常になってるのか。 煩くて起きちゃったよ。 はい。 これで大丈夫』


 攻撃的な意志のない奴で助かった。 緑の竜が一瞬で、 混乱の魔法を解く。 ましろはそのまま糸が切れたように、 ぐったりとそいつの手の中に収まった。


 「ましろを離せ」


 『先にお礼を言って欲しい所だけどね。 まぁ、 君の気持ちは分かるから。 よっとぉ…… はい…… これでいいかな? 』


 近くにあった木の根元に草を敷いて、 緑の竜はましろをその上に降ろす。 俺はそのまま、 ましろの身体にへばりついた。


 『そんな顔するもんじゃないよ。 しょうがないだろ? 君の身体はまだ小さいのだから』


 喋れないらしいコイツは念話で俺を慰めようとしているようだ。 でも、 それすらうっとおしい。

分かってるさそんな事。 分かっている…… けど、 俺がましろに何も出来なかった事が悔しかった。


俺が、 そっとましろを抱きとめたかった。 

俺が、 混乱を解いてやりたかった。

俺がましろを抱きあげたかった―― でもそれは当然無理な話だ。


 ちょっと前まで、 ましろを守ってやれるつもりでいた自分を殴ってやりたい。 何にも出来ないなんて最悪だ。 穏やか顔になって眠っているましろを見る。 頬に流れた涙を俺は必死に舐めた。


 笑うましろ。 鈍くさいましろ。 俺を抱きしめるましろ。 無邪気でバカなましろ。


 その全部がもう少しで壊れてしまっていたかもしれなくて……。 俺は初めて恐怖と後悔という感情を知った。 胸を締め付けて発狂しそうな感覚はザラリとした感触をまだ胸に残している。


 『少しは落ち着いた? 』


 「あぁ。 その―― 済まない助かった」


 気にしなくて大丈夫と言うように緑の竜は微笑む。


 『君、 見たままの子供じゃないね。 この世界には居ない一族だ…… 神様に連れて来られたの? 』


 俺は無言で頷く。


 『そっかぁ。 じゃあ、 君は滅んだ世界の子なんだね。 じゃあやっぱりこの娘は…… 』


 「黙れ」


 『ふふ。 ごめんね。 僕も大昔そうだったから、 つい。 しょうがないとは言え、 彼女に触れてしまったの不愉快だっただろ。 竜は独占欲の強い生き物だ。 でもそれを知られたくないんだね』


 そうだ。 ましろは知らない。 俺の独占欲の強さを。 他にも神の野郎と俺が黙っている事がある事を。 例えば俺が契約紋を通じてましろの感情こころがある程度読める事――。 

 ましろの無知を利用してるんだ。 何も知らない ましろが俺への好意を強くすれば強くする程、 契約紋の結びつきは強くなる。 

 対して俺の感情が、 ましろに伝わらないのは俺が精神障壁を張っているからだ。

絆だって称号だって加護だって、 隠してるのはましろに伝えたくない事が書かれているからだ。

 ズルイって知ってる。 でも真実が分かった時、 嫌われたら……? 気持ち悪いって思われたら?


 もし、 真実を知られてしまったら、 俺はましろを逃がせないのに。


 逃がせないのに嫌われるのは嫌だ。 他の竜の背中に乗りたいと言われただけであれだけ動揺して不愉快になったのに。 嫌いだと言われたら自分が何をするか分からない。

 俺はずるい。

だけど、 勝手な言い分だけど ましろは残酷だ。 もし ましろの温もりを知らなければ、 ずっと孤独ひとりでも大丈夫だったのに。 それなのに俺の気も知らないで、 平気で俺に抱きついてくる。

 ましろは何とも思ってないのに俺だけ慌ててバカみたいだ。

何だか心細くなって、 ましろが意識を失っている事を良い事に俺はぎゅうぎゅうと抱きついた。


煌夜は、 ましろの前ではデレられません。 現状ましろに振り回されててちと不憫。

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