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斥候あらわる。

遅くなりました。 更新です。

 改めて自己紹介をして、 ポチ君とは暫く一緒に行く事になった。

長年ここにいるから、 道案内を買って出てくれたのだ。 後はやっぱり寂しかったんだと思うんだ。

ずっと一人だった訳だし。 ここから、 解放してあげれれば良いんだけど……。 成仏させてあげるとか。

 私のライトだと攻撃になっちゃって強化しても消滅させる事しか出来ないらしい。 成仏させるにはホーリーレインという上級魔法が必要だそうな。 ライトとかから分岐するみたいだけど、 どの道上級魔法なんて使えやしない。 攻撃でポチ君に痛い思いをさせたい訳じゃないから現状では何もできないみたい。


 『フンフン。 楽しいですなぁ。 嬉しいですなぁ』


 鼻歌交じりでルンルンしてるポチ君に申し訳ない気持ちが募る。 私達は旅の途中で、 ここからいなくなる人間だ。 私達が旅立った後、 ポチ君は余計寂しい思いをするんじゃなかろうか……。

 時々、 顔を出してあげられればいいんだけど。


 「ポチ君に会えて助かったね」


 「そうだな。 賢者殿の話しだと普通に通行できそうだったが…… 水没している所があるとはな」


 タナトスさんの言葉に頷く。 ポチ君の話とも総合して考えると、 イーロウさんがここを知ってたのは大分前みたいだから、 水没した所とかができてても不思議じゃない。 


 「街道と言うからには一本道かと思ったんだが、 こんなに分岐してるとはな」


 タナトスさんがそう言って嘆息した。 タナトスさんがイーロウさんに説明されて作ったと言う地図―― ど真ん中に一直線の道があるんだけど、 その真ん中あたりにポチ君の身体が巣作りならぬ工房を作ってて避けた方が良いとの事。 そこを避けるには右に左に伸びた裏道を使うようで、 その裏道も一部地下水が浸み出て水没してる所があるらしい。 


 『最初は一本道だったのでありますが。 穴掘りが大好きだった犬族の連中が拡張させましてな…… おかげで蛸足街道とかダンジョン街道とか呼ばれてましたな。 まぁ、 だいたいの者達は洞窟街道と呼んでましたが』


 犬族。 ヤバイ―― 想像が近所のワンコで出て来た。 『穴掘り大好きだワン』 そう言いながらせっせと庭に穴を掘るワンコ。 飼い主さんは最初は埋め返してたんだけど、 最近では諦めて放置。 

 庭いじりが夢で、 砂利とかひかなかったらしいんだけど、 こんな状態で庭いじりができる訳もなく。

この間会った時には「コンクリに―― 」 と乾いた笑いを浮かべてた。

 まぁ、 そんな感じのワンコが二足歩行でツルハシ握って、 ハフハフしながらベロ出して穴掘りするのを想像しました。 ちょっと可愛い。


 「色んな名前がついてたんだねぇ」


 『昔は有名な街道でしたので。 中にはワザワザここに行商しに来るヤツもおりました』


 私が感心してると、 ポチ君がそう言って苦笑した。 行商って…… ここに来るまでにも魔物とか出るよね? 商人が傭兵雇って来てるとか? いやでも行商ってそんな感じじゃ無いはず……。


 「いつの時代も商人は逞しいな」


 呆れた声でタナトスさんがそう言った。


 『まったくであります。 まぁ、 当時はこんなに魔物が居た訳ではないですし…… けれど、 追剥が出ない訳でもなかったので、 それなりに腕に覚えがある者しかしてませんでしたが』


 ポチ君も苦笑したままそう話す。 商人って―― 戦闘必須な職業でしたっけ? 違うよね。


 「武闘派の商人…… 」


 「そう言う手合いは今でも居るな。 後は流しの職人か。 皆、 背負子を背負って旅をする。 盗賊なんぞに狙われやすいから、 自分を守れる力がないと出来たもんじゃないが」


 タナトスさんの話から現在もいらっしゃる事が判明した。 本当に逞しい。 


 『ははぁ。 昔と変わらぬ事もあるんですな。 ちょっと安心しました』


 ポチ君がそう言って笑った。 私達がにこやかに話している一方で、 さっきから煌夜が話しに参加してない事にお気づきの方はいるだろうか。 煌夜は今、 私の少し後ろを飛んでいる。


 「―― コーヤ、 そろそろ機嫌なおさない? 」


 振り向いてそう言えば、 ジト目の煌夜に睨まれた。


 「―― 嫌だ」


 「悪かったってば…… 子供扱いした訳じゃないよ? …… そんなには」


 ムスっとした煌夜に私はそう言ったものの、 煌夜の機嫌は下降したままで思わず最後に余計な一言をつけちゃった。


 『拗ねてる方が子供っぽくなりますな―― ウソデスゴメンナサイ』


 わははと笑ったポチ君が、 煌夜の一睨みで前言撤回。 怯えた犬みたいに尻尾を縮こませる。 


 「ポチの言う事ももっともだと思うが? 」


 呆れ顔のタナトスさんがそう言って煌夜を見た。 煌夜はそれに大きな溜息をつくと、 私の所にパタパタと飛んで来て、 肩の上に座った。


 「分かったよ。 機嫌なおした。 これでいいか? 」


 煌夜はそう言ったけど、 それってまだ機嫌なおってないよねぇ。 ムスっとしてるんだもん。 誰にだって分かる。


 「―― 良くないけど、 良いよ」


 私はそう言って、 ちょっとだけ煌夜を睨む。


 「…… それどっちだよ? 」


 煌夜にそう言われたけど、 私は答えあぐねた。 一応でも機嫌が治った振りをしてくれるのは有難い。けど、 煌夜が納得してない事が不満だった。 だって、 まだ不機嫌だし。

 ちょっと子供扱いしちゃったかもしれないけどさ…… そんなに嫌だったのかなぁ。

幻の家ウチ』 で2人だけならちゃんと腹を割って話し合えるのに、 残念ながら今は家じゃない。

 無駄に問い詰めても煌夜は余計に機嫌が悪くなるだろう。 


 「―― 」


 突然タナトスさんが、 歩みを止めた。 手で私達にも止まれと指示する。


 『…… 何体かレイスの気配がありますな…… けど、 様子を見てるでありますか……? 』


 ポチ君が小さな声でそう囁いた。 私は煌夜の尻尾にしがみ付きながら、 辺りを伺う。

さっきのポチ君みたいにどこから現われるか分かったもんじゃない。 きょろきょろと周りを見ながら心臓はバクバクだ。 レイスって普通ポチ君みたいに可愛いヤツじゃないよね……?


 「変だな…… レイスって言うのは様子を見るような理性があったか? 」


 タナトスさんが、 不信感もあらわにそう零す。 


 『生者と見れば理性なんて吹っ飛んで襲って来るのがレイスかと』


 ポチ君が、 タナトスさんの疑問に答えるようにしてそう言った。 そう考えると理性を保ってるポチ君は凄いんじゃなかろうか。 元来の性格なのか何年も一人ぼっちだったのに、 いくら自業自得だとは言え誰も恨まずにいられるって中々できない気がするんだよね。


 「そう考えるとポチ君って、 凄い存在? 」


 『え。 そうでありますか? でへへ、 照れますな』


 私が思わず言葉にすれば、 ポチ君が尻尾をパタパタさせる。


 「―― それ所じゃないんだろうが」


 煌夜が不機嫌全開でそう言ってポチ君を睨んだ。 どうもなぁ。 チナちゃんよりもポチ君に対しての方が当たりがキツイ。 モフモフだから? 男の子だから?? けど、 原因が私なんだろうなぁ…… って言うのは何となく理解できた。 私のポチ君への対応で気にいらない事があるんだろうなぁって。

 言ってくれればいいのに―― 煌夜はそう言う事はあまり言わない。 チナちゃんの時だって、 問い詰めてようやく言ってくれたんだから。 


 『まぁ、 そうなんでありますが…… 消えましたな』


 「まるで、 斥候のようだな…… ポチ、 お前の身体はここの主だと言ったな。 何の魔物か分かるか? 」


 私が物思いに耽ってる間にどうやら、 レイスの気配は消えたみたい。

遭遇するのが免れただけで、 安心感がどっと押し寄せた。 レイスは魔物って暗示をかけてもやっぱり怖い物は怖いみたもんね。

 タナトスさんが、 ポチ君にそう言って確認を取る。 何の魔物かって事が大事らしい。


 『一番近いものはリッチかと』


 リッチ? 聞き覚えのない魔物だ。 リッチって言われるとお金持ちがどうしたの? と聞きたくなるのは私が庶民だからか。 思わず聞きそうになったけど、 絶対にそう言う意味じゃ無い事は察する事ができたので、 黙っておく。


 「生前強力な魔法使いや王だった者がリッチになるんじゃなかったか? 」


 考えるようにしながら、 タナトスさんがそう呟いた。 その前提だと、 ポチ君って当てはまらないよね? だって見習いだったんだし。


 『そうですな。 僕の身体は半人前でしたが、 悪霊は違ったのだと思うのです。 多分、 優秀なネクロマンサーだったのでありましょう』


 ネクロマンサー。 それ知ってる。 死霊術士ってヤツでしょ。 その悪霊がポチ君の身体を乗っ取ったとか…… ろくな事にならない気がするんだけど。


 「悪い予感しかしないんだけど」


 私が思わずそう言うと、 タナトスさんが同意するように頷いた。


 「ナギに同意する。 最悪の状況に飛び込んだ気がしてきたぞ。 なら、 さっきのレイス達はそのリッチに従っているんだろうさ。 元ネクロマンサーなら、 レイスごとき従えられるだろうからな」


 うわぁ。 骨とかも操れるんだろうか―― 操れるんだろうなぁ。 


 「ポチ。 お前ちょっと幽体離脱した事を反省しとけ…… 」


 煌夜が何とも言えない微妙な顔で、 ポチ君を見つめた。


 『申し訳ないであります? 』


 ポチ君がそう言って謝罪する。 身体の元の持ち主は怖がりで気の優しいポチ君なのに、 その身体を乗っ取ったリッチは力を持ってた悪霊だった訳だから、 少なくとも良い人ではないだろうしね。

 なんだか厄介事の気配がしてきた……。


 「問題は、 どう言うつもりで偵察しにきたのか、だ」


 煌夜がそう呟いた。 ただ、 見に来ただけなら問題ないだろう。 けど、 ポチ君の身体を乗っ取るようなヤツが見に来ただけとは思えない。


 「リッチがすんなり通してくれれば―― 良いんだがな」


 そう言ったタナトスさんの声は苦い。 すんなり通して貰えるとはカケラも思ってない声だ。

煌夜の顔を見れば渋い顔をしていた。 タナトスさんと同じ事を考えてるんだろうなぁ。


 『今までは、 ずっと引き籠って研究してるだけだったでありますがね? レイスもスケルトンも基本的には遠巻きにして、 リッチには近付かなかったでありますが。 あぁ、 でも時々研究を手伝ってる奴等もいたような? 』


 引きこもりの研究者。 何の研究してるんだろう。 聞くのが怖い。 やっぱり死霊術関係なのかなぁ。

けど、 手伝ってるレイスやスケルトンがいたんなら、 やっぱりリッチにはそれらを従える力があるんだろうなぁ。

 

 「リッチは死霊の王だと言う者もあるからな。 本当にリッチであれば戦闘になればかなり不利になる」


 「何でですか? 」


 深刻そうなタナトスさんに、 私は思わず聞き返した。


 「完全なリッチであれば、 いわゆる不死の存在だからだ。 特殊なスキルでなければ倒せない」


 その言葉に戦慄する。 不死―― しかも特殊なスキル。 少なくとも、 私と煌夜はそんなスキルを持ってないだろうし、 タナトスさんも―― この口調だと持ってなさそうだ。 ポチ君は…… 使えたらこんな事になってないよねぇ。 そんなヤバイ感じの魔物がこの先に――?


 『完全か、 と言われれば不完全でしょうな。 なんせアレの身体は元々僕のものですし』

 

 ポチ君のその言葉にホッと安堵の息をつく。 と言っても、 なんでポチ君の身体だと不完全なのかって言うのは分からないんだけどね。


 「あぁ。 普通は自らの肉体が変化するのだったか? 」


 タナトスさんの言葉にポチ君が頷いた。 


 『―― なれの果てと師匠は言ってましたが。 大体は当人の肉体が変化したものでしょう。 アレは元々悪霊でしたから―― 元はレイスだったのだと思いますな。 僕の身体に入って自我を取り戻したのか、 元々自我を失ってなかったのかは不明ですが』


 成る程、 本来のリッチは自分の身体を使ってなるのか。 使ってって言うと何か違う気がするけどね。

ポチ君のお師匠様の言い方、 なれの果てだとまったく強いような気がしないんだけど……。

 とにかく完全なリッチじゃ無いようなので安心する。


 「まぁ、 取りあえずは様子見か。 休憩所とやらにはそいつら入れないんだろう? 」


 そう言って煌夜が溜息をつく。 私は、 掴みっぱなしだった煌夜の尻尾を思い出して手を離した。

尻尾がゆらりと揺れる。 結構強く握っちゃたけど大丈夫だったかな。


 『はい。 まぁ、 僕も入れないでありますが』


 「レイスだもんねぇ。 ポチ君」


 ポチ君が残念そうに言ったので、 私はそう言葉を返した。 いくら善良でもポチ君は魔物だ。 こればかりはどうしようもない。


 『まぁ、 方法は無いわけではないですが』


 ちょっとだけ得意げに言うポチ君に私は慌てた。 だって入れる方法があるって事は――


 「えっ? それってまずいんじゃ―― 他のレイスも入れるって事? 」


 睡眠中にレイスやスケルトンに襲撃されるのは勘弁してもらいたい。 腰が抜けて動けなくなりそうな気がする。


 『僕だけのスキルみたいな感じですな。 コーヤ殿の影に入らせて貰えれば、 僕も休憩所に入れるであります。 影の中は異界と同じ。 休憩所の魔物避けに触れないのです』


 てへへ、 とクネクネしながらポチ君が話す。 逃げるのに特化してまして、 とは本人の談だ。

ポチ君が戦闘したとも思えないので、 一生懸命逃げてたら獲得したってことかな。 もしくは思いの力でスキルを獲得したとか。


 「何で、 照れながら言うんだよ…… 気持ち悪いな」


 煌夜が、 嫌そうにポチ君を見た。 そんなに嫌がらないでも……。


 「影? 」


 『そうであります。 コーヤ殿からは心地良い闇の気配がしますので。 ―― 逃げ隠れするのに身についた力でありますが、 「影渡り」 と呼んでるであります。 ようは影の中に隠れるでありますな。 壁抜けするより他の魔物に見つからないであります』


 私の問いかけにポチ君が答えてくれる。 壁抜けしてもその先に魔物がいるかもしれないものね。

ただ、 ランプを消せば漆黒の闇に包まれるこの洞窟街道で、 影とか関係あるのかなぁと思ったら、 真っ暗な中だとヒカリゴケがぼんやり辺りを照らすそう。 


 「それって私の影とかも入れるの? 」


 タナトスさんや、 私の影にも入れたりするのかなぁと思ってポチ君にそう聞いてみた。


 『僕は感知能力が高いので、 何となく分かるでありますが、 ナギ殿は光属性ですし入れませんな。 タナトス殿も悪くはありませんが、 コーヤ殿の所が一番快適そうであります』


 どうやら、 属性が関係あったらしい。 タナトスさんは闇の民だからかな。 煌夜はバッチリ闇属性だからポチ君にとっては相性がいいらしい。 ポチ君がブンブンと尻尾を振って煌夜を見つめた。 対して煌夜は少し嫌そうだ。 竜はテリトリーに煩いって言ってたから、 影に入られるのも苦手なのかもしれない。 


 「そっかぁ…… じゃあやっぱりポチ君は光に弱いの? 」


  『正直、 光属性の方は天敵ですな。 僕は、 本能的な力で属性が分かりますので。 初めてナギ殿に会った時はつい取り乱してしまいました。 いや、 お恥ずかしい。 ―― 日光とかに対しては弱体化はしますが存在出来ない訳じゃありませんな』

  

 どうやら、 ポチ君にとって1番戦闘力のない私がまさかの天敵だったらしい。

だから、 最初に会った時あんなにパニックしたのかな? 日光でも消滅しないのなら、 せめてポチ君がこの洞窟街道から解放されればいいんだけど……。

 ポチ君の身体がリッチ(もどき)と判明。

レイスの斥候の目的は何だったのか……。次回も洞窟街道続きます。


 誤字脱字と一緒に、 微調整も入れる予定です。 ちょっとだけなので話が変わるような事にはならないかと。 


『廃棄世界に祝福を。』 もこの後更新します。  

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