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忍者ですか?

更新が遅くなって済みません……。


 『行ってらっしゃいなのー』


 チナちゃんと、 イーロウさんに見送られて手を振りながら泉を後にする。

煌夜と歩くのはもう何度もしてるのに、 今日は落ち着かない気持ちが続いていた。

 イーロウさんにも変な顔されたしなぁ……。 出かけに見られた生温かい視線が気になる。

 そもそも、 絆の為のキスをする事に決まってから煌夜がオカシイ。

一応、 二人だけの時だけにしてくれてはいるみたいなんだけど……。

 煌夜が…… あの・・煌夜が私にべったりになったんだよね……。

前は私のがどちらかと言うと、 ベッタリだった訳ですが…… むしろベッタリしたくて怒られてた訳ですが……。 

 ベッタリされるのが嫌って事じゃなくてその、 恥ずかしい。 隠れたい気分になる。

 朝、 何か察するモノがあったらしい―― チナちゃんは、 何かを悟ったような顔をしてたな。

突っ込んで聞かれたくなかったから、 そのままにして来たけれど…… 何を悟ったんだろうか。

今日も煌夜は私の肩の上だ。 けどただ座ってるだけじゃなくて、 私の髪を弄ってる。


 「…… 煌夜…… 煌夜? ちょっとそれ歩きにくい」


 主に気になって歩きにくいです――。 

けどそんな気持ちとは裏腹に煌夜はとっても嬉しそう。


 「そうか? 俺は楽しい」


 にこにこにこにこ。 煌夜のご機嫌は大分どころかかなり良いようです。

何してても楽しいし嬉しい、 みたいな…… きっとマンガの中なら花が背後に飛んでる事だろう。


 「ちょっと! もう。 本当にどうしたのよ。 煌夜…… 変だよ? 」


 思わず、 そう言ってしまった……。 

気にはなっても、 煌夜があんまり嬉しそうだったからそのままにしてたんだけど…… そろそろ限界デス。

出来れば、 通常仕様の煌夜に帰って来てもらいたい……。


 「そうかもな。 正直ちょっと浮かれてる。 こんなの産まれてから初めてだ」


 そう言って、 煌夜は口を噤んだ。 寂しそうな口調で言うものだから、 私の罪悪感がチクチクと刺激される。 どこか、 遠くを見るように空を見上げて溜息をつく煌夜はどこか儚げだ。

 産まれてから初めてって結構大ゴトな気がしないでもないんだけど……。 いったい何に浮かれたんだろう。 けど、 煌夜のシュンとした様子に気軽に聞くのは躊躇われて、 私は無言を貫いた。


 「…… 」


 「まぁ、 けど…… 悪かった。 ましろが、 俺の事を嫌がらなかったのが嬉しかったんだ」


 寂しい気持ちをふっ切って。 気持ちを切り替えたように、 煌夜は苦笑しながらそう言った。 嫌がらなかったって…… 私に嫌われると思ってたの?


 「煌夜の事、 嫌がったりしないよ! 」

 

 ここに来て、 私が生きていられるのは煌夜のおかげだ。 ここで、 私が寂しくないのは煌夜がいるから。 ずっと助けてくれて、 ずっと傍に居てくれた。 そんな煌夜を私が嫌いになんてなるはずない。

 だから、 思わずそう大きな声を出した。


 「ははっ! これ以上、 俺を浮かれさせてどうすんだよ? …… だいぶ落ち着いてきたから安心しろ」


 私が煌夜が大切だっていう気持ちはちゃんと伝わっただろうか……。 私の言葉に煌夜は本当に嬉しそうに笑った。 そんな煌夜にちょっとくすぐったいような気持ちになる。

 大切なんだよ。 本当にさ。 きっと私は煌夜に嫌われたら泣いちゃうだろう。


 「そう……? ならいいケドさ」


 けど、 現金なもので落ち着いてきたと言われれば少し寂しい。 

そんな事を考えて、 歩いていたら、 煌夜が一言…… 私の耳元で呟いた。


 「…… 寂しいか? 」


 「…… 寂しくないよ」


 少し、 からかうような口調。 それに不満を覚えて私は答える―― まるで、 心を読まれたみたい。

そうやって歩いて行くと、 突然、 魔物が現われた。 ううん。 現れたって言うのは正確じゃあない。

 倒れて動かない……―― 死んでるようだ。 大きな…… 虎みたいな……?


 「…… これは……? 」


 ピクリとも動かないから死んでるとは思うけど…… 私はおそるおそる虎に近寄りながら、 拾った枝でツンツンと突いてみた。 青い毛皮の色の虎はピクリとも動かない。


 「魔物だな。 死んでる…… 」


 煌夜がパタパタと飛びながら、 虎の魔物に近寄って行く。

口元を覗いたり、 背中の方を確認したり。 私は一応、 周囲を警戒しておこうと見回してソレに気がついた。


 「ねぇ、 あっちもだよ? 」


 少し、 離れた所にも倒れ伏して動かない魔物がいた。 フレイボアだ。 私達が戦ったのよりは小型のものだけど……。 煌夜と一緒にそちらの方へ行く。


 「…… 外傷は無いみたいだな」


 やっぱりフレイボアだ。 さっきもだけど、 血が何処にも出て無いし毛皮に焦げ跡とかもないみたい。

煌夜の言うようにパッと見でコレが死因って感じのものが一切ない。

 だから、 不気味だった。 だって…… 死因の分からない死体があるってちょっと怖くない?


 「…… こっちもだ。 …… 毒か? 」


 その横で死んでた、 角のある蛇? みたいな魔物のの頭を煌夜が持ち上げながら言った。

毒……? あぁ、 でも毒なら理解できる。 外傷が無い事も納得だ。

 問題は何の魔物の毒にやられたかと言う事。 何か強い魔物が傍にいる……?

 そんな私の考えなんて知らないように、 煌夜がいそいそとフレイボアに近付いた。


 「…… ちょっと煌夜なにやってんの? 」


 どこから取り出したのか、 手に持った小型のナイフでフレイボアの皮を剥いでる。

取り出した場所は『異空間の首飾り』しかないんだろうけど。 いつの間にそんなナイフを手に入れたのかな。


 「いや、 肉を少々持って帰ろうかと」


 煌夜は嬉しそうにそう言うと、 作業に戻った。 

あぁ…… 前の時は持って帰り損ねたからね。 今は『異空間の首飾り』 があるし―― って問題はそこじゃあないよね?!


 「今さっき死因が毒かもって言ったよね? 」


 腐ってはなさそうだけどさ。 死因が毒かもしれないって言ってた魔物の肉を何で持ち帰ろうとしてるの?! 切れ味のいいナイフでサクサクと切り進める煌夜。 後ろ足は取り分けられてただの肉の塊にしか見えない。 


 「確かに言ったな。 けど、 俺達には効かないぞ? 」


 振り返りながらそう言って、 煌夜は首を傾げた……。 加護の異常無効かぁ……。

うーん。 確かに、 そう言われれば何を食べても無事でいられるんだろうけど。


 「そうかもしれないけど…… お腹壊しそう」


 正直に思った事を言ってみた。 煌夜が呆れたような顔をして他の部分を解体していく。

手際がいい。 お腹の部分をやらないでいてくれるのは、 私が青褪めて下がりぎみだからだろうか。

ナイゾウは栄養があるみたいだけど、 リアルな状態でミタクハナイデス。

 確か、 解体にも手順があるって聞いた事があるんだけど、 煌夜の小さい身体じゃあ倒れたフレイボアはひっくり返せない。 ―― 手伝えって? 無理無理無理無理。 死体とか触れない。 怖いもの。


 「腹なんか壊れないから。 せっかく、 持ち運べるのに肉が勿体無い」


 確かに、 お肉は美味しそうな色してますが…… 新鮮だからかなぁ…… 鮮やかな桜色してる。

綺麗な肉は見ただけで「おいしいデスヨ」 と私に言っているかのようだ。

 だけど…… 毒…… カモ…… じゃん?


 「…… うぅ…… 」


 「後で美味しく焼いてやるぞ」


 逡巡しながら唸ってると、 煌夜がトドメの発言を一つ。

―― 焼いた肉……。 ヤバイ。 口の中に涎が……。 


 「うぅぅ…… 」


 脳内に焼かれたお肉が湯気を立てて出現した。 なんだか香ばしい匂いまでしてきそうなリアルさだ。

私の想像力はこんなに良かったかしらん?  そんな事を考えていたら、 煌夜が切り取った部位を首飾りの中に仕舞って私の傍に飛んでくる。


 「…… ナギ・・。 俺から離れるな…… 」


 二人だけしかいないのに、 私の事をそう呼ぶ煌夜。 なんだか周囲を警戒しているみたい……。

私も、 緊張しながら周りを見回してみたけれど、 怪しい影もなければ草を踏む音も聞こえない。

聞こえるのは鳥の声位だ――。


 「? 急にどうしたの? 」


 意味が分からないので聞いてみた。 けど、 煌夜は猫だったら背中の毛を逆立ててるみたいにピリピリしてて答えてくれなかった。


 「おい! 誰だ。 用があるなら出てこい!! 」


 そして、 木の上の方を見上げるとそこに向かって声をかけた。 


 「気配を消して近付いたのに、 気どられるとはな…… 加護持ちか? 」

 

 木から、 飛び降りてきたのは男の人――。 

顔は覆面…… ていうか長い布をグルグル巻いてて良く分からない。

って言うか、 全身黒づくめで…… なんだろう忍者? 忍者なのって感じ。 忍者ルックって訳じゃないんだけど…… 何て言うか雰囲気がね。 

 目元から見ると浅黒い肌である事と、 目の色が金色だと言う事だけが分かる。


 「…… 人? こんなところに…… 」


 不審者と言えなくもない格好に思わずそんな言葉が出た。


 「こんな所はお互い様だろう…… しかしその色…… お前、 異界の娘か」


 たらり…… と冷や汗が流れる。 一発でこの世界の住人じゃないってバレたし。

あぁ、 私の色はこの世界に無いって言ってたもんな、 イーロウさん。 服装もこの人とはだいぶ違うし、 バレない方がおかしいよね。 

 街に行く前に髪色とかを変化させるアイテムをゲットした方がいいよって言われてたけど、 ―― 油断した。 森の中で人に遭遇するなんて思わなかったから……。 


 「んな事ぁどうでもいい。 この魔物を殺したのはお前だろう? そんな奴が俺達になんの用だ」


 煌夜が不機嫌マックスで男を睨みつける。 男は両手を広げた。 手に持ってた武器が下に落ちる。

これは、 敵意が無いと言う事を示しているのだろうか。 男はそのまま、 ゆったりと構えて木にもたれかかった。


 「いや、 この森で他に竜がいるとは思わなくてな…… お前達、 森の賢者イーロウを知らないか? 」


 男の口から出た名前に目を瞠る。 『賢者』 イーロウ? イーロウさんは知ってるけど…… 賢者なの?

でも、 『他に竜が…… 』 って発言を考えると、 その賢者とやらはイーロウさんで間違いが無い気がする。 


 「お前…… 闇の民だな? …… 俺は知人から、 お前らを見たら逃げろと言われてる。 そんな奴がその賢者とやらに何の用だ」


 煌夜が、 確信を持ってそう言った。 

 ―― 闇の民って確かに逃げろって言われたけどさ。 そんな面と向かって「逃げろって言われた」 って言って良い事なの? 私がハラハラしてるのに煌夜も男も至って冷静だ。

 えーっと…… 闇の民に関わった時は…… 蔑んだりしたらいけないんだっけ?


 「お前が俺を警戒するように、 俺もお前らを信用できるわけではない」


 男がそう言うと同時に煌夜の警戒が上がったように見えた。 不穏な空気が辺りに広がる。

睨み合う二人の間にバチバチと火花が散りそうだ。


 「すとっぷ! ストーップ!! 最初から、 お互い喧嘩腰になってもしょうがないでしょうが」


 私はそう言うと大きな声をだした。 いや、 だってさ。 このまま戦闘とか始められても困るし!

相手は魔物じゃなくて人だしね。 意志の疎通ができるのなら、 話し合いで解決できる事もあると思うのよ。 うーん、 取り敢えずは自己紹介だよね。 


 「確かに逃げろって言われたけど、 別にいま何か攻撃されてる訳じゃないでしょ? ただ、 知ってるかどうかって聞かれただけ。 とりあえず、 自己紹介ね。 私はナギ。 こっちはコーヤ」


 そうだよ。 この人は、 わざわざ私達の目の前で武器を捨てて見せた。 それに攻撃しようと思えば武器を捨てる前にできたハズだ。 イーロウさんの事を聞かれたのには吃驚したけど、 脅された訳でも無く普通に聞かれただけだ。 

 なので、 自己紹介してみたよ。 煌夜は絶対に名乗らなそうだったから、 私が抱えてそう言った。


 「おいっ! 」


 煌夜の不満げな声が腕の中から聞こえる。 


 「随分と…… 無鉄砲な娘だ。 逃げろと教わったのなら、 俺がどんなモノだか予想もつくだろうに。 まぁ、 異界人ゆえの無知には慣れているが…… 」


 対して、 呆れ声を上げたのは男の方だった。 闇の民でこの格好って言うと暗殺者かなぁ? 呪術士には見えないからね。 

 もちろん暗殺されたい訳ではないけれど、 なんとなくこの人は悪い人ではない気がする。

 勘だけど。 少なくとも、 私達にとっては敵じゃない―― そんな感じ。


 「どういう事だ? 」


 異界人ゆえの無知という言葉に煌夜が反応した。 慣れてるって事はごく身近にそう言う人がいるって事だよね。


 「友人に一人いるんでね。 アレは男だが、 ナギ…… と言ったか? お前と同じように常識知らずで面白い男だ」


 苦笑を滲ませて男がそう言った。 仲が良いのだろうか。 その人を思い出して懐かしんでる感じ?

それにしても、 異世界人ってそんなに多いのかな。 もしかしたら、 同じ所から来た人にも会えたりして……? ちょっと期待を込めて、 そんな事を考える。


 「異世界人は多いのか? 」


 「いいや。 珍しい。 普通はな。 百年に一人来るかどうかだが…… 今は三人…… いや、 二人だな。 一応」 


 煌夜も疑問に思ったらしい。 イーロウさんもイーロウさんの奥さんも異世界から来たみたいだしね。 煌夜の問いに、 男は首を振ってからそう答えた。 残念だ。 そんなに多い頻度では無いみたい。 

 もう一人の男の人は何処から来たのかな? 私と煌夜みたいにパートナーになってる子もいたりするんだろうか。


 「会ってみたいか? 」


 「そうですね。 いつか会えたら」


 会ってみたいか、 と聞かれればモチロン会ってみたい。 同じような境遇なら、 話を聞いてみたい。

まぁ、 世界は色々あるみたいだから、 同じ所から来てるわけじゃないだろうけど。

 でも、 同じような立場の人に興味はあった。


 「ふむ。 もし、 賢者の所に案内してくれれば会わせてやるが? 」


 男が、 そう言ってこちらを見る。 

その話から、 交渉してくるのかぁ―― なかなかしたたかな人のようだ。 その言葉にムッツリと煌夜が押し黙る。 何で、 イーロウさんの事を知ってるってバレたんだろう……。


 「…… 」


 「知ってるのだろう? 賢者の居場所。 名を出した時に2人とも緊張したようだったからな」


 にっこりと笑って男がそう言った。 私、 緊張したのかな……? あぁでも吃驚した記憶がある。

なんだか、 聞いた時に思った闇の民のイメージと違うなぁ…… この人。 もっと排他的でとっつき難くて、 問答無用で襲って来るのかと思っていたよ。 闇の民。 


 「…… 知ってたとしても、 覆面をしたお前みたいな怪しいヤツを連れて行くと? 」


 煌夜は、 不機嫌な口調のままでそう男に話した。 まぁ、 怪しさはあるよね? この格好じゃあさ。

そう思っていたら、 男が覆面をはずした。 顔にグルグル巻いていた黒い長い布をさっさと外す。 そこから現れたのは銀髪の美形のお兄さん……。 

 ヤバイ。 外国の俳優さんかってくらいに――


 「かっこいい! 」


 思わず、 そんな声が出た。 うっわぁ! 何この人……。 

凄いよ、 こんなキラキラした人初めて見た。 切れ長の細い目は、 涼しげだし、 少しニヒルに笑う口元とか、 スラッとした長身とか…… すっごいヤバイ。


 「…… おい。 お前はこの娘に何も教えてないのか? 」


 私が、 そんな声を上げた後に…… 頭が痛そうな顔をした美形のお兄さんが、 煌夜に話かけた。


 「何がです? 」


 眼福、 眼福と思いながら鑑賞してた訳だけど、 そんな事を言われて気になって聞き返した。

美形のお兄さんが、 より具合の悪そうな顔をして私を見る。


 「頼むから、 好意を全面に押し出すのを止めて欲しい」


 そんな事を言われた。 面と向かって言われると少し戸惑う。 美形のお兄さんを称賛するのはいけないのだろうか。 まぁ、 そう言うの嫌いな人もいるしね。 

 世界差みたいなもので、 眼福とか、 尊いとか考えてガン見するのは失礼にあたるのかもしれない。


 「あぁ…… スミマセン。 ついアイドルとかを近くで見たような気になって」


 私はそう言いながら、 照れ笑いを浮かべて誤魔化した。


 「ナ ギ」


 「ん? 煌夜――ぁ?! 」


 急に呼ばれて煌夜を見たら―― 煌夜がオドロオドロしいナニカになってたよ?! 

腕の中の空気が重い。 先日感じたような圧迫感……。 ヤ バ イ。

 嫌な予感しかしない。 


 「ナ ギ は そいつみたいな男が 好み なのか……? 」


 とぎれとぎれの言葉に危機感がアップする。 煌夜さん煌夜サン? また急にどうしたの?

ギリリと歯ぎしりの音が聞こえて来そうだ。 煌夜の手が、 私の腕に食い込んで少し痛い。 


 「いや? えっと? 好みと言えばそうだけどっ…… 違う違う! 見た目が目の保養ってだけだよ! 」


 好みと言った瞬間。 この場の気温が下がった―― 私は慌てて誤解を解こうと言葉を続ける。

美形のお兄さんは今にも逃げそうな態勢だ。


 「保養って なんだ? 好き なのか」


 絞り出すような声で煌夜が言う。 

ギギギと首を上げて言われると私の背中に冷や汗が流れるのが分かった。

 煌夜の目は虚ろだ……。 なんだろう。 見てはいけない物を見てる気がする。


 「落ち着け、 お前が言っている好きと、 彼女の言う好きは別物だ」


 逃げそうな態勢のまま、 お兄さんがそう言った。

首を傾げた煌夜が、 グリンと勢い良くお兄さんの方を向く。 ビカっと目が光ったような気がするのは気の所為だろうか……。 思わず、 ゴクリと唾を飲み込んだ。


 「な に が ? 」


 一言一言に、 何か圧力のようなものを感じた。

冷や汗、 ううん脂汗をかいたお兄さんが、 煌夜から目を逸らさずに言い聞かせるように言葉を続ける。


 「彼女が言っている好きは、 花が綺麗だとか犬が可愛いとかそんな程度のものだ」


 「ナ ギ ? 」


 お兄さんがそう言うと、 グリンと煌夜の首が動いて私の方を見た。

煌夜の目の奥に深淵が見える……。 ダラダラと冷や汗が流れた。 軽く、 ホラー映画の主人公になった気分だ。 ホラー苦手なのに。


 「ソウデス、 ソウデス、 ソウデス~!! 」


 私にはそう言う事しかできなかった。 その言葉だけがお守りであるかのように半泣きで繰り返す。

煌夜は、 私の言葉にゆらりと頭を揺らして考えてるようだった。 

 何を? 聞ける訳がない。


 「…… そうか…… なら…… いい…… 」


 そう呟いて煌夜は二コリと微笑んだ。 空気が和らぐ。

チナちゃんの時は、 自分のテリトリーにチナちゃんが入って来るのに抵抗があるって言ってた。

 じゃあ今回は? 


 「まさか、 こんな所で死にかけるとは思わなかったぞ…… 」


 ぼそりとお兄さんが呟く声が聞こえる。

煌夜が反応したのは、 私がお兄さんが「カッコイイ」 って言った言葉に対してだ。

 その後、 聞かれたのはお兄さんの事が好みかどうか……。 

なんかこれって嫉妬みたい―― な……? まさかねぇ。  


 目が調子悪くて急きょ更新お休みしました。 皆様もドライアイとかお気をつけ下さい(汗)

瞬きは意識してすると良いようですorz 

 ましろ…… 一歩進んだと思いきや、 煌夜は苦労する星の元にいるようです。

闇の民のお兄さんは何しにイーロウに会いにきたのか? その辺りを書いた後、 煌夜sideが入ります。


『廃棄世界に祝福を。』 も更新しました。 そちらもよろしくお願いします……。

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