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文句が言いたい。

怒りながら起きるましろ……。

 

 「最後まで話してけーーっ! 」


 はっとして周りを見れば、 ベットの上で仁王立ちしていた。

驚いた顔の煌夜が、 引っくり返って私を見てる。


 「あれ? 」


 夢じゃないとか思ってながら、 やっぱり夢だったってパターンですか?

かーっと顔が赤くなるのが分かった。 夢なのに…… 夢に怒って仁王立ち……。

 振り上げた拳を、 そっと降ろす……。


 「大丈夫か? ましろ」


 起き上がった煌夜がそう声をかけてくれる。


 「…… うん」


 私は、 ゆるゆると座り込んだ。

そんな私の顔を心配そうに覗きこんでいた煌夜がほっと息をついた。


 「なら、 いい。 うなされてるようだったから起こそうとしたんだが…… 」


 起こしてる途中で、 私がガバッと起き上がって叫び声をあげたらしい。 その私が起き上がる勢いに負けた煌夜が転がったようだ…… ゴメン。


 「あぁあ! 恥ずかしい。 仁王立ちとか…… やっぱりチナちゃんにも聞こえたよねぇ…… 」


 正座をして両手で顔を覆う。 ヤバイとっても恥ずかしい。

さっき叫んだ実感はまだちゃんと残ってる。 起きた瞬間、 喉に痛みを感じたからね。

いい勢いで大声を出した事だろう。 私の声でチナちゃんがビックリしてたらどうしよう……。


 「チナ? 」

 

 何故チナと言われて、 うぅと声を上げながらボソリと呟く。

そのまま、 丸くなって身悶える。

 

 「…… さけびごえ」


 恥ずかしさを堪えてそう言って、 両手を少しずらして煌夜をみたらあぁと一言。


 「あぁ…… 安心しろ聞こえてないから。 この天蓋の布。 遮音仕様だから。 ましろのイビキがうるさかったとしてもチナには聞こえないよ」


 天蓋の布凄い。 ふわふわしてる癖に、 そんな効果がついてたらしい。 一安心して脱力したものの、 ダンゴムシのように丸くなってたら煌夜が優しく背中を撫でてくれた。


 「私、 いびきうるさい? 」


 次に気になった事を、 おずおずと聞く。

恥じらいある乙女としては、 イビキとか断じて御免こうむりたい。

 どうしよう…… ぐがーとかぐごーとか言ってたら…… あまつさえ、 歯ぎしりとかしてたり……。


 「うるさくない。 時々、 なんか寝言言ってるけどな」


 煌夜がまたヨシヨシと背中を撫でてくれる。

なんだか今日の煌夜はやけに優しい。


 「…… そーなの……? 」


 ゆっくりと、 顔をあげてそう聞けば優しい顔をした煌夜が微笑んだ。

私、 何の寝言いったんだろう……。 変な事、 いってなけりゃいいけど。


 「この前は、 『もう食べられない』 って言ってた」


 食いしん坊バンザイ……。 そりゃあ、 食べる事は好きだけどさ。

んー。 覚えてないや。 私、 夢の中で何をお腹いっぱいに食べたんだろう?


 「…… 」


 ふにゃりと情けない顔をしてたら、 煌夜が私のおでこにキスをした。


 一気に目が覚める――。 

 

 ガバっと起き上がった私に、 煌夜の目は異常に優しい。

そういえば、 朝はキスしないといけないんだっけ……? 昨日のやりとりを思い出す。

 意識すれば、 カチコチと緊張して固まってしまった。


 「ましろ。 覚えてるよな? 」


 …… おぼえてますけど……


 優しい、 優しい顔をした煌夜が私の頬に手を寄せる。


 「恥ずかしいなら、 目ぇつぶっとけ」


 …… これじゃあ本当にどっちが年上かわかりゃしない。

 う~~っ! どうしよう! 


 煌夜の小さな指が私の唇をなぞる。


 私は慌ててギュッと目をつぶった。 煌夜の触れる吐息にヒンヤリとした感触……。

ちょっと煌夜クン! 目を瞑っても恥ずかしい事に変わりないんだけど……。 

 

 「ふはっ! ましろは可愛いなぁ…… 」


 キスは終わったのに、 やっぱり目を開けられなくてギュッとつぶったままでいたら、 煌夜にそんな事を言われた。 


 どうしよう、 目をつぶって声だけだと…… 煌夜が年上みたいに感じる……!


 私の脳内で、 別の私がわーわー言いながら走り回ってる気分だ。

もうどうしていいか分からない。 そんな感じでパニックしてたら――


 ちうっと音を立てて唇を吸われた。


 驚いて目を開けると、 目を細めた煌夜と目が合う。

意地悪そうな笑みを浮かべた後、 唇を離して…… ぺロリと私の鼻の上を舐めた。


 「…… 一回って言ったのに! 」


 鼻を押さえて飛びすさる。 しかも…… な、 何で鼻を舐めるの?!


 「最低一回だって言ったぞ? ましろが目をつぶったままだったからな…… もっと欲しいのかと思って」  

 

 ゴチソウサマと言われて、 次からは恥ずかしくても目を開けようと心に誓った。

夢の中でキスごときに恥ずかしがってるようじゃ、 パートナー失格! 的な事を考えた自分を殴ってやりたい。 馬鹿じゃないのか自分。

 動揺するよね! 実際は。 

 いや、 分かってるよ。 心の持ちようだって。 ファーストキスだとか考えないで、 犬とキスするような感覚でいれば問題は何も無いはずなんだから。 けど、 犬は話さないけど煌夜は話すんだよ!

 しかも…… 私が恥ずかしがるのを分かってて、 ワザと恥ずかしがるようにしてる気がする。


 「…… その目やだ」


 ゆらゆらと熾火が燃えるような目……。 本能的な部分の所で逃げなきゃいけない気分になるから、 本気で止めて欲しい。


 「どんな目だ? 」


 じいっと見られれば、 正視できなくて目を逸らす。

私ばっかり変な感じにさせられて、 心臓がドカドカとウルサイ。  

 

 「分かんないけど! 落ち着かないよ」


 説明しろって言われても、 困る。 その目が示す煌夜の感情が私には良く分からないからだ。

怒ってるとか哀しんでるとか喜んでる―― なら分かるのに。 

 煌夜の目の中に揺れる感情が分からない。 そして、 それが怖いのだ。

あの目をされると身が竦む。 落ち着かなくてソワソワして、 自分が自分じゃないみたいだ。


 「意識してやってる訳じゃないからな…… まぁ、 諦めてくれ」


 わざわざ、 私の膝の上に乗って下から私を覗きこむ煌夜。 どうして、 ワザとそんな事をするのか分からない。 ちょっと前まで、 私が抱きついたりすると怒ったくせに。 私は煌夜を持ち上げると膝から降ろした。 

 煌夜はパタパタと飛んで、 宙に浮かんだ。  

 

 「もういいっ! 起きる」


 私はそう言って、 ベットから降りようとして煌夜の横を通り過ぎる。 その私の髪を一房取って、 煌夜はそれにもキスをした。


 「~~っ 煌夜のばか! 」

 

 思わず振り返ってそう叫ぶ。

ふはっとお腹を抱えて煌夜が笑った。 やっぱりワザとだ。 バカバカバカ煌夜のバカ。 私をからかうのがそんなに楽しいの? 


 「悪い。 悪かったって…… コレやるから機嫌をなおせ」


 笑ったせいで出た涙を拭いながら、 煌夜はパタパタと飛んで来た。

そうして、 私の手の平に煌夜が乗せたのは……。


 「ペンダント……? これ、 昨日の夜光石…… 」


 夜光石のペンダントだ。 小さいあの石をトップにして、 その周りは金色の金属で彫金されてる。

そして小さな花がみっつ、 石の左下につけられていた。 

裏には台がないので石には光が通るようになっている―― 灯りに透かすと夜光石がキラキラしてとても綺麗だ。

 紐はアッシュグレイの光沢のある糸を三編みにした細いものだ。 ガラス質の明るい紫色のラウンドビーズが1コずつ、 そして、 金色のラウンドビーズが2コずつ右と左の紐に通されている。

 そして、 両方の紐の先には焦げ茶の木でできたビーズが一つ通っていた。 どうやら、 そのビーズで紐の長さを調節できるようだ。 


 「おう。 ましろが寝てる間に、 イーロウの所で作ってきた」

 

 得意満面な様子で煌夜がそう言った。

 その言葉に目を丸くする。 どう見ても既製品レベルだ。 昨日の石をどうやってペンダントにしたんだろうと思ったら…… まさかの煌夜の手作り?


 「煌夜が作ったの! え? 金具もついてるよ」


 どうやって彫金とかしたんだろう。 そう考えながら、 ペンダントをしげしげと見つめる。


 「火力調整できるようになったからな」


 照れたように煌夜が笑った。 イーロウさんの所にあった素材をブレスで加工してきたらしい。

そんな繊細な火力調整が出来るようになってるとは……。 

 というか、 細工といい煌夜は器用なんだねぇ。

初めてのプレゼントが煌夜の手作りだなんて、 なんだか幸せ。


 「煌夜、 ありがとう…… とっても可愛い! そういえばこれ、 不思議な紐だねぇ…… 」


 何ていうか細いんだけど、 とてもしなやか。 それでいてとても強そうな感じ。

手触りもツルツルしてて気持ちが良い。 そうやって、 さわさわと触ってたらモジモジした煌夜が期待を込めた目で私を見てた。


 「そうか? そのな…… その紐…… 気に入ったか……? 」


 キスで照れないのに何でコレで照れるのか……。 煌夜の照れポイントが良く分からない。

けど、 とても期待してる風だったので気にいったと頷いた。


 「うん。 手触りも気持ちいいよね。 好きだよコレ」


 笑顔で大きく頷いたら、 煌夜が満面の笑顔になった。


 「そうか! 」


 フンフンと鼻歌が出る位にご機嫌になった煌夜が私の首にペンダントをつけてくれる。


 「似合うぞ、 ましろ」


 満足そうに、 うんうん頷く煌夜が可愛い。 現金なもので、 さっきまで煌夜に怒ってたのが嘘みたいに私の心は温かい気持に溢れていた。

 物に釣られた訳じゃないよ。 煌夜が、 私にプレゼントしたいと思って手作りしてくれた事が嬉しかったからだ。

 首から下がったペンダントをじいっと見つめる。 

何だか愛しい気持ちが溢れて、 私は夜光石にキスするとそれを胸元にしまった。


 「どうしたの? 煌夜」


 がぁんって顔をした煌夜が固まってる……? 


 「ズルイと思う。 俺もましろからキスされたい」


 ぷるぷるぷると震えながら、 煌夜にジト目で言われて赤面した。 


 「~~っ! もうっ…… 調子に乗らないの! 」


 煌夜の顔を左手で押しやる。 途端に煌夜の顔が拗ねた顔になった。

うぅ。 なんだろう…… これじゃあまるで恋人同士のじゃれあいだ。


 


 少し、 二人の仲が進展したでしょうか? 

煌夜の照れポイントは、 一応…… 理由があるのでそのうち出せたら嬉しいです。

 次回は不審者(?) が登場予定です。


微調整したら『廃棄世界に祝福を。』 も更新しますので、 宜しければそちらもどうぞ。


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