『時の小箱』 と『異空間の首飾り』
アイテムゲットです。
戻って来ました。 マイハウス。
えっちらおっちら戻るより、 『幻の家』 を経由してイーロウさんの所に戻った方が早いし、 うちでカタログさんから『時の小箱』 を出して行こうって事になった。
まずはカタログから、 『時の小箱』 を選択する。
現れたのは六角形の真鍮の骨組にガラス張りの透明な小箱。 それが空中に出現すると、 ガコンとテーブルの上に落ちる。 結構な高さから落ちて割れなかった所をみると、 ガラスじゃないのかも。
「これが、 時の小箱かぁ。 これ、 何で出来てるんだろうね」
綺麗な箱だ。 透明だから、 チナちゃんも外が見れて良いかも。
触ってみるとひんやりと冷たく、 落下音の割には意外と軽い。
「…… 多分、 石だな。 強度が強化されてる…… ガラスじゃない」
「随分軽いよ? 」
「重かったら持ち運びに不便だからじゃないか。 金属の方を良く見てみろ。 模様が彫ってあるだろ。 それが強化と、 重量軽減の役割を果たしてると思う」
成る程。 それでこんなに軽いのか。 両手に軽く収まるそれを、 ひょいひょいと上下に振る。
目の前に持ってきて凝視すれば、 透明度が随分と高い。 私の知ってる石だと水晶が一番近いかなぁ。
「次は、 異空間の首飾りだね」
私がそう言って煌夜を見ると、 一応という感じで確認された。
「本当にいいのか? 」
「うん。 そっちの方が生きて行くのに必要そうだもの。 お風呂は次でいいよ」
煌夜が目次から、 『異空間の首飾り』 のページを開く。
『異空間の首飾り』 は少し無骨な感じのものだった。 丸い、 ガーネットみたいな赤い石の両脇に金色の金属でできたロンデル。 その横には真ん中の石より一回り小さい銀線と金線の入ったルチルクォーツみたいな石が入っている。 その横から伸びるのは、 太めの革製の紐だ。
首飾りって言うから華奢な物を想像してたので意外だった。 コレはどちらかと言うと男性的雰囲気のチョーカーだ。
煌夜が、 『異空間の首飾り』 に丸を付ける。 ポイントは1万。 もっとするかと思っていたので正直驚いた。 首飾りは、 これまた空中から落下してゴトリと音を立てるとテーブルの上に。
…… 結構大き目だなぁ……。
「ましろ、 つけるか? 」
ニコニコした顔の煌夜が私に首飾りを指し示す。
…… 女ってこういうの好きだろ? って言われたんだけど……。
「うーん…… 気持ちは有難いんだけど、 もっと繊細な感じの方が好きかなぁ」
煌夜には悪いけど残念ながら好みじゃないので、 遠慮しておく。 ちょっとなぁ…… 大きいし。
正直私がつけても似合わないと思う。
「そうなのか。 覚えておく…… じゃあコレは俺がつけるか」
そう言って、 煌夜が『異空間の首飾り』 を持ちあげた。 けど、 煌夜…… 煌夜の首には紐が長すぎるよ。 肩からずり落ちちゃうでしょ、 ソレ。
「煌夜がするには、 紐が長いんじゃない? 」
ていうか、 頭は大きいしツノもあるから…… そもそも紐が通るのかな。 下から通す? でも結局ずり落ちちゃうんじゃ意味ないよね。
あ、 肩から斜めにかけるとか…… いや、でもそれっていつか落としそう。
そんな事を考えていたら、 煌夜がにんまりと笑って首飾りを引っ張った。
「見てろ」
煌夜が両手で引っ張ると紐が むいん と伸びた。 …… まさかのゴム?
と言っても小さな両手では伸ばすのにも無理がある。
伸ばした状態で一生懸命、 頭に紐を通そうとする煌夜。 私はそれを慌てて手伝う。 触ってみると、 伸びそうもない皮紐の感触。
触感のイメージと実際に目にしてる状況が合わなくて、 なんだろう気持ち悪い。
そのまま、 首に通すと、 煌夜が手を離した。 けど、 私はなかなか手を離す事ができない
「ましろ、 どうした? 手を離せ」
さっさと手を離した煌夜にキョトンとした顔で促される。
「いや、 なんか離したらバチンっていきそうで…… 」
なんか、 伸びる感じがゴムみたいだからさぁ…… 離したら、 煌夜の首が大変な事になりそうで……。
怖い。
なんかのコントみたいに、 伸びたゴムが煌夜に…… 痛そうだ……
「大丈夫だ。 離してみろよ」
「…… 」
私の心配をよそに、 煌夜はどこ吹く風だ。 私が、 恐る恐る手を離すと、 驚く事に紐がシュルンと縮まって煌夜の首に丁度いいサイズになった。
「金属の所に入ってる模様のおかげでな。 どんなヤツでもつけられるように紐が伸縮するんだ」
「便利過ぎる」
服とかそういうのでもあればいいのにね。 いや、 もしかしたらあるかな……。 そうしたら、 大きくなっても小さくなっても着れる。 ……これ以上、 横に大きくなる気はないけどね。
『異空間の首飾り』 は煌夜に良く似合ってるみたい。
重くなさそうだから、 これにも重さを軽減させる模様でも入っているんだろう。
煌夜がつけると大分大き目なんだけど、 そこが可愛い。
「うん。 似合ってるよ煌夜」
「そうか」
ちょっと嬉しそうなので、 私も笑顔になる。
これで、 ポイント残高は2万3085P。 宝石種のお陰で大分残高がある。
頑張って5万ポイントのお風呂を目指しちゃおうかなぁ……。
私がホクホク顔でそんな事を考えていると、 煌夜がテーブルから降りて椅子の上で何だかガサゴソ。
覗きこもうとしたら、 終わったらしくて私の目の前まで飛んで来た。
「さて、 レベルの確認もしたい所ではあるが…… 」
少し焦ったように言う煌夜を不信そうに見つつも、 言いたい事を理解して同意して頷く。
あちらは心配しているだろうし……。 チナちゃんだって不安だろう。
「チナちゃんが待ってるしね。 先にイーロウさんの所に行こうか」
「そうだな」
ほっとしたような顔をした煌夜が「ストレイジ」 と言ってカタログをしまう。
私は煌夜と一緒にゲートをくぐってチナちゃんとイーロウさんの待つあの場所へ向かった。
何度もくぐれば慣れたもの。 イーロウさんにぶつかる事も無く外に出る。
『やぁ、 早かったね』
『あ! ナギにコーヤ。 お帰りなさいなの! 』
嬉しそうな声が辺りに響く。
『チナの為にありがとうなの。 イーロウから、 ポイントはすぐ貯まらないって聞いてるの…… だから今日はもう休んで欲しいの』
申し訳なさそうに言うチナちゃん。 ポイントが貯まりにくいって事はイーロウさんから聞いていたらしい。 けどねチナちゃん……。 もう入手済みなのだよ。 『時の小箱』 …… 驚かせようと思って後ろ手にして隠し持っているのだ!
「ふっふっふっ」
煌夜が突然不敵な笑いを浮かべた。 あぁ、 でも今はその気持ちが理解できる!
私もニマニマするのを止められない。
チナちゃんとイーロウさんに、 隠し持っていたそれを目の前に持ってきて見せる―― 私の手の平の上にはもちろん『時の小箱』
「これなーんだ! 」
えっへへと笑って示せば、 イーロウさんが目を丸くした。
『…… どんな魔法を使ったんだい? 『時の小箱』 じゃないか…… 』
茫然と呟く様子に気分は鼻高々だ。 煌夜と目が合ったので二人してにんまりと笑い合う。
『…… 『時の小箱』 なの?! 』
思わずといった感じでチナちゃんが大きな声をあげた。
「色々な偶然が重なってな。 小さいけれど、 宝石種の魔物を倒したんだ」
煌夜が、 嬉しそうにそう報告する。
『そんな事もあるんだねぇ…… 』
しみじみといった感じでイーロウさんが安堵のため息をついた。 これで、 チナちゃんの当面の無事は確保できたも同然だ。
「私が『ランダム加護』 を持ってたんでその効果もあったみたい」
『ランダム加護』さんのありがたさを伝えたくてそう言うと、 イーロウさんが微妙な顔をした。
チナちゃんはもう一度ビックリした顔をして、 煌夜は…… 呆れ顔だ。
『ナギ…… 君はもう…… 素直すぎて困るなぁ。 いいかい。 前にも少し言ったけど加護の事も他人には言わない方がいい。 話すのはコーヤとだけにしなさい』
「そうなの? 」
言われて思い返してみると、 確かにそんなような事を言われたような? 異世界から来たって事を言わないようにって言われたあれかな……。
「イーロウは良いヤツだけど、 悪いやつは何処にいるか分からないからな。 お前のその加護を目当てに攫われたりしたくないだろ? 」
おうふ。 まぁ、 ここは森だけど…… 私達の話を誰かが聞いて悪い人の耳に入る事もあるかもしれない。 攫われたい訳じゃないから注意する事にしよう。
「…… 気を付ける」
『それがいいのよ。 ナギってちょっと危なっかしいの』
呆れ顔のチナちゃんにまでそう言われました。 幼児に心配される私っていったい……。 流石に凹む。
「チナちゃんまで…… 」
泣きたくなった私に煌夜が追い打ちをかける。
「言われて当然だ。 本当にましろは色々と無自覚だからな」
自覚はどうやったら産まれるんでしょうか。 あぁ、 早く大人になりたい。
大人になったら、 色々出来る事が増えるよね? こういう性格も治るよね?? 多分。
チナちゃんの件は解決。 近々(次回とは言わない) 新たな来訪者の予感。
数字は桁の多いポイントは特に(例)2万5000と表記しようと思います。
追々変更予定です。
『廃棄世界に祝福を。』 も更新しました!




