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ダークアイ

煌夜のトラウマ克服作戦|(?) 戦闘開始です。

 私達にとっては、 まぁまぁ強い魔物みたいだからできるのなら先制攻撃をしたいって煌夜がいったのでダークアイにそっと近づく。 煌夜の攻撃が届く範囲まで気付かれずに近づければいいんだけど……。

 息を殺してジリジリと歩く。 心臓はバクバクだ。 私から離れたがらなかった煌夜は私の肩の上に乗っている。 もしも、 加護が働かなかった時に離れてたら置いて行っちゃうかもしれないからね。


 ゴクリ


 煌夜の喉が鳴る。 緊張の糸がピンと張った感じ、 今にも弾けて切れそうだ……。

暫く近づいた所で、 煌夜が指を振った。 空から紫色のいかずちが落ちる。


 ガウンっ 


 緊張したせいか、 照準がずれたらしい。 

雷は、 ダークアイを掠めて岩に落ちた。 驚いたダークアイが飛び上がって浮かぶ。


 「くそっ」


 煌夜の舌打ちが聞こえた。

ダークアイの身体からはパチパチと紫電が散っているけど、 同じ闇属性なせいかそこまでダメージは無いみたいだ。

 焦ったように右往左往と飛び回って、 こちらに気付くとブワッとフグみたいに膨らんだ。

ぎゅんぎゅん伸びたトゲがハリネズミみたいだ。 ―― そりゃあもう完全にお怒りです。


 「っ」


 ダークアイの瞳が妖しく光る。


 ピシリっ


 と、 聞き覚えのある音がした。 多分スキルを使われたんだと思うんだけど……。

おずおずと自分の身体を見る。 あの時みたいな異和感は特に感じない。

 良く目を凝らせば、 微かな光が私の身体全体に薄い膜を張っているのが見えた。 それも一瞬の事で消えて見えなくなる。 私は思わずほうっと息をついた。


 「…… ちゃんと効いたみたいだな」


 私が安堵の息をついた所で、 煌夜のほっとしたような声が聞こえた。

先程の、 思い詰めたような煌夜の顔は憂いが晴れて生き生きとしたものに変化してる。

 対して、 ダークアイは動揺したようだ。 プルプル震えた後、 余計に頭に来たのかトゲトゲを更に伸ばして威嚇して来る。


 「ライトニング」


 加護が効いて安心したせいか煌夜のライトニングは、 狙い通りダークアイに直撃できるコースだったと思うんだけど、 サッとかわされてしまった。 ―― 敵も予想以上に素早い。

 次にダークアイがしたのはヴェノムブレスだ。 何処にあったのか分からない位大きな口がカパリとあいて、 毒霧をこちらに向かって吐きだす。

 私は思わず口元を覆った。 私達の足元に咲いていた花が、 除草剤でも撒かれたかのように枯れて行く。 綺麗な花畑の片隅に茶色い色が染みのように広がった。

 一瞬で枯れるなんて…… 結構強力な毒らしい。 思わずゾッとして後じさる。

 

 「よし! 加護は大丈夫そうだ」


 そんな私の気持ちとは裏腹に、 とっても明るい口調で煌夜が言った。 鼻歌でも聞こえそうな位にゴキゲンだ。 私の加護がちゃんと効いた事が余程嬉しいらしい。

確かに、 毒の直撃受けてもまったく苦しくも何ともない。 神様、 加護様アリガトウゴザイマス。

 なんのダメージもない私達を見て、 ダークアイが怒りのあまり滅茶苦茶な軌道で飛び回り始めた。


 「ましろ、 右によけろ」


 言われた通り、 右に避けるとハリネズミ的な弾丸が横を飛んで行く。 体当たりだ。

精神的なスキルやなんかが効かないから物理に訴える事にしたらしい。

 通常の丸い状態じゃまだしも、 こんなトゲトゲしいのがぶつかったら身体に穴が開きそうです。

戦闘には慣れて来た気でいたけど、 自分に向かって来られるのはやっぱり怖い。


 「ひぃっ」


 悲鳴をあげて全身で避ける。

しっかり避けたつもりだったけど、 どうやら煌夜の頬にダークアイのトゲが掠ったらしい。

 空中に鮮やかな血が散った――


 「やだ! 煌夜!!」


 思わず叫んで煌夜を見る。 傷は浅そうだ。 けれど、 ぽたりと落ちた血にこれがゲームではない現実なんだって…… あらためて言われている気がした。


 「大丈夫だ。 大した事ぁない」


 怪我をすれば血が出る。 それは当たり前の事だけど、 こうして現実に目の当たりにすると心がズシリと重くなった。 もし、 ちゃんと避けられずに煌夜に当たってたら…… 煌夜の身体に穴が開く。 もしかしたら死ぬ事だってあるかもしれない。 ―― 私がちゃんと避けなきゃ。 

 怖いのなんてどうでもいい。 しっかりしなきゃ。

 

 「グラビティ」

 

 煌夜のスキルに一瞬、 ダークアイの速度が鈍る。 その瞬間に煌夜がライトニングを唱えた。

これは効いたようでダークアイの飛び方がヘロヘロになる。 

 そんなダークアイにアイシクルで煌夜が更に追撃をかけた。


 「ひゃわっ」


 アイシクルを投げる瞬間に私が態勢を崩した所為で、 ナイフみたいな氷があらぬ方向にすっ飛んで行く。 思わず、 それを見上げて目で追ってしまった。 結構な高さまで飛んでくなぁ…… 現実逃避してみたけど、 肩の所からの視線がチクチク刺さる……。 


 ―― ゴメン煌夜……。

 

 「おいコラましろ! 」


 煌夜がジト目で怒ってる。 あああ。 スミマセン。


 「ごめん! でも何かが…… 足元を掠ってったんだよぅ」 


 ザラリとした何かに足を撫でられて半泣きの状態で煌夜に訴える。 ぞわってしたよ。 ぞわって。

私、 くすぐられるのって苦手なんだってば。 お願い煌夜、 そんな目で見ないでーっ。

 足元ではガサガサと花や草が揺れている。 かと言ってソレは私達を攻撃する意志は無いみたいだ。

むしろ驚いて逃げてる感じ?


 「む。 確かに何かいるな…… 」


 煌夜が横目で遠ざかるソレを見ながら言った。 多分とっても小さいんだと思う。 草に隠れて身体はまったく見えない。


 「でしょでしょ。 あれの所為だってば。 ワザとじゃないよ」


 「…… 逃げてるっぽいし…… いいやほっとけ」 


 謝りながらも、 私だけの所為じゃないよとアピールしておく。 本当にビックリしたんだってば!

 こんなやり取りをしているその間にダークアイが態勢を取り戻したらしい。 さっきみたいな速度は無いものの体当たりをしてくる。 慌てて避けたものの私の髪の毛が一房落ちた。


 「いい度胸だクロ玉ぁ―― ライトニング! んでもってアイシクル!!」


 煌夜が何だか怒った感じになって、 呪文を唱える。

連続で放たれたそれは、 まず、 雷が直撃して硬直したダークアイをアイシクルが貫いた。


 ギィ


 ダークアイはそう小さく鳴くと霧がほどけるように空中に溶けて消えた。


 「ましろに傷を付けるとはいい度胸だな」


 フンスと胸を張って煌夜がそう言った。 ―― 煌夜クン。 髪から血は出ないし神経も通ってないよ?

どうして傷を付けたって事になったのか。


 「煌夜? 私は別に怪我してないよ? 」


 そう言ったものの、 煌夜は不機嫌そうに私の切られた髪に触れた。 切られたじゃんかって言われたけど、 別にそこがハゲた訳じゃないしねぇ? 

 そんな事を考えてたら、 煌夜がパタパタと下に降りて私の髪を拾ってる。 

切られた髪なんてゴミでしかないでしょうに。


 「そんなの拾ってどうするの? 」


 そう煌夜に聞いた瞬間だった。


 キランッ☆


 『レベルが上がりました』


 おぉ! ついにレベルアップ!! 何て言うか、 相変わらず効果音が可愛らしい。

私は笑顔を浮かべて煌夜を見た。


 「上がったな、 レベル。 ちなみにあいつのポイントは二五〇ポイントだ。 ムカデが二〇ポイントだったから…… 」


 煌夜も心なしか嬉しそうだ。 


 「あと一九一五ポイントだね! 」


 少しは目標ポイントに近付けたきがする。 待っててねチナちゃん。 頑張ってポイント溜めるから。


 「お? 」


 唐突に煌夜が声をあげた。 何だろうと思って煌夜の視線の先を見ると、 さっきすっぽ抜けてあらぬ方向に打ち上げられたアイシクルが落下して来る所だった。 重力のままに落ちて来てそのまま遠く離れた地面に突き刺さる。


 キラリラリンッ☆キラリラリン☆


 『レベルが上がりました』


 「…… んん? 」


 さっきよりも豪華な音がしてレベルがまた上がる。 私は思わず首を傾げた。

煌夜と顔を見合わせて、 アイシクルが落ちた方に歩いて行く。

そこにいたのは…… 私の手のひら大のトカゲ。 アイシクルが刺さってお亡くなりあそばせている。 

 色は黒いのにやたらキラッキラしている―― 魔物。


 「煌夜ぁ…… これキラキラしてるね」


 「そうだな」


 ぼへっとした声が思わず出た。 答える煌夜の声もどこか間が抜けてる。


 「なんか普通より派手派手しいね」


 「おう」


 黒い色のくせに、 金銀キラキラのラメラメです。 見る角度によっては虹色が入る。

これ位の大きさなら、 草の陰に隠れちゃう気がするなぁ。


 「なんとなぁくだけどさ…… さっき逃げてったヤツじゃない? 」


 「多分、 そうだろうなぁ…… 」


 こっちってアレがガサゴソ逃げてった方なんだよね……。 


 「せっかく逃げたのにねぇ…… 」


 「残念なヤツだな」


 本当に残念なやつだ。 煌夜がよっこいしょとばかりに氷柱を外す。

そしておもむろに、 お腹の辺りを探りだしたので私は思わず飛びのいた。 血の色まで真黒だったから現実感が無くてグロくないのが救いか……。 煌夜サン、 いきなりナニスルノサ。

 引き気味で見てたら煌夜が、 黒い親指の爪位の大きさの塊を取り出す。 小さな手でゴシゴシと擦るとそれが宝石のような物だと分かった。


 「やっぱりこの魔物って宝石種? 」


 濃いアメジストのような石の中金とも銀とも言えそうな光が瞬く。 


 「煌夜の瞳みたいだね…… 」


 それは、 何処か煌夜の瞳に似ていた。 見ていると不思議と落ち着く感じ。


 「夜光石って言う希少な石だ…… ましろの加護も役に立つな」


 『ランダム幸運』 意外と使えるかも?  効果音が違ったから、 経験値とかが沢山入ったって事だよね。 どれ位レベルが上がったのか。 ―― そして! ポイントさんですよ…… ポイントさんはどうなんですか? 

 

はじめて、 『ランダム幸運』 の効果でしょ。 と言い切れる現象が。

次回は、 ポイントとレベルの確認と、 ましろがスキルを初使用します。


『廃棄世界に祝福を。』  も更新済です。 宜しければそちらも読んで貰えれば嬉しいです。

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