ポイントポイント出ておいで。
ポイントは出て来る訳じゃないですが。 ましろが歌ってる姿が思い浮かんだので(汗)
急いで『幻の家』 でカタログを確認した所、 『時の小箱』 が25000ポイント。 一応調べた『眠りの宝珠』 が15000ポイントだった。 ポイント的には『眠りの宝珠』 ならすぐにアイテム交換できるけど、 チナちゃんが寂しくないってあんなに喜んでいたので『時の小箱』 を手に入れようって事になった。
チナちゃんのほうが大切なので当分お風呂はお預けです。
ちなみに忘れていたけどフレイボアのポイントもしっかり入っていましたよ。 180ポイント。 なので後、 2320ポイント稼がないと。
と、 言う訳で…… チナちゃんにはイーロウさんの所でお留守番しておいて貰って、 煌夜と一緒に魔物を探しに来ております。
「しかし…… 今日はロクな敵がいないなぁ」
煌夜がそう言って呟いた。
さっきから、 大きな(猫ぐらいの大きさの) ダンゴムシとか、 人間位の太さのある虎縞の蛇だとか(しかも5メートル位の長さがあった) 正直、 逃げたくなるものとしか戦ってない。
しかもダンゴムシとか煌夜曰くポイントが5ポイントだって。
あれに顔面に飛び付かれたのはトラウマです。 なのに5ポイント……。 蛇の方は100ポイントだったみたい。 でも…… そんなぽっちじゃ全然足りないよ……。
どうやら、 ポイントさんは経験値が多い敵か少ない敵かで変動する模様。
つまり相手が強い魔物だったら、 ポイントも多いと。
「一概には言えないけどな。 宝石種って言われる特殊な種類の魔物は倒せば体内から宝石が採れるんだが、 そいつらは経験値もポイントも高い。 それに弱い 低レベルのヤツでも一撃で倒せる」
ほーう。 それってあれか某RPGゲームみたいなメタルなアレみたいなやつがいるって事かな。
凄く美味しい話な気がする! それを倒せれば大量ポイントゲットだね。 そう考えて私は肩の上にいる煌夜をキラキラした目で見つめた。
「え! それすごく良いじゃん。 その魔物を探した方が良いんじゃないの? 」
「そうだな。 探した位で出会う事が出来たらな。 しかも素早いから倒そうとしても逃げられたりする訳だ。 探しても良いぞ? 」
上手い話には裏があるんだね。 良くあるゲームの設定みたいな。
あからさまに探す気を失う私に煌夜は意地悪そうに笑う。
「それって探すだけ無駄なんじゃ」
文句を言うように話すと、 まぁそうだなと言う煌夜。
「狙って出会えるもんじゃあないからな」
どうやら、 今回は虫系の魔物と縁があるらしい。 次に横から出て来た3メートル級のムカデは煌夜の雷で瞬殺された。 私としては魔物は昆虫系じゃなくRPGお約束、 可愛いスライムに会いたいんだけど…… 現実は上手くいかないらしい。
ていうか、 突然の魔物の襲来にも煌夜がそれを瞬殺するのにも慣れて来た自分が怖い。
最初の頃は悲鳴を上げたりと忙しかったなぁと思いながら焦げたムカデの横を通り過ぎる。
「まぁ、 宝くじに当たるような確率って事かな」
宝石種の魔物の事を考えて私はそう結論付けた。 宝くじならそうそう当たらないよね?
当たればラッキー位なもので。
「ましろには、 加護の『ランダム幸運』 があるから、 もう少し当たりやすそうだけどな」
そう言えばそんな加護あった気がする。 今までラッキーっと思える効果があった気がしないから忘れてたけど。 あ、 でもこんな森の中でイーロウさんや、 チナちゃんに会えたのはラッキーかな。
「うーん…… でも、 それを探してて全然ポイントが溜まらないんじゃ話にならないよ」
『ランダム幸運』 がどの程度役に立つのか分からないから、 何とも言えないけど。 効果が良く分からない物のために時間をかけてたら、 肝心のポイントが溜まらない気がする。
「まぁな。 だから、 普通の魔物を探すついでにソイツを探そう。 見た目がキラッキラしてるから、 すぐに分かると思うぞ」
楽しそうに煌夜が言うので、 私も頷いた。 そっちをついでに探すんならまぁ、 良いよね。
今度はデッカいアリが来た。 軽自動車サイズの。 十匹位いたんだけど、 煌夜の雷でバタバタ倒れて行く……。 哀れだ。 雷が強いのか、 アリさん達が雑魚なのか分からないけど。
「30ポイントか。 ついでにレベルを上げる気だったが…… 少し時間がかかるかもな」
煌夜の苦々しい声にその横顔を見つめる。 どうやらアリさんは雑魚だったらしい。
私には、 入手したポイント分からないんだよね。 それが、 分かるのは煌夜の加護なのかな?
それにしても、 ポイントが少なすぎて正直不安だ。
「間に会うと思う? 」
チナちゃんの残された時間に、 と言うのは怖くて言葉に出来なかった。
表情が硬くなった私を勇気づけるように、 煌夜は明るい声をあげた。
「間に合わせる。 だからそんな顔するなよ、 ましろ」
煌夜が泣きそうな私の頬を撫でる。
煌夜がそう言うならきっと大丈夫。 私は自分の頬を両手でバシンと叩くと気合を入れて歩き出す。
それにしても、 魔物のポイントがこんな状態で良くトイレを交換できるだけのポイントがあったものだ。
「どうしたましろ」
私が思わず立ち止まったので、 煌夜が声をかけて来る。
「ん。 最初にトイレを交換出来た時、 期間限定初回ポイントが3000だった訳じゃない。 で他に2000ポイント持ってたでしょ? その頃、 私達がここに来て倒した魔物は鼠位だし…… 鼠探せばポイント溜められるんじゃないかって…… 」
「鼠は全部倒して55ポイントだった」
そうだよ! と勢い込んで煌夜に言うと、 あーって顔をして目を逸らされた。
煌夜が言いにくそうに言ったポイントは、 とても2000ポイントに届きそうもなくて私はそのまま疑問を口にする。
「え? じゃあ残りのポイントは…… 」
煌夜の顔が拗ねたようになった。
だけど、 意を決したように私を見ながらしぶしぶと言うように口を開く。
「イーロウだよ。 『幻の家』 に帰る時、 ましろが先に帰ったろ? あの時イーロウがもう自分は使わないからって残ってたポイントをくれたんだ」
てそう言うと気まずそうに目を逸らす煌夜。
「えぇ! なんで教えてくれなかったの? 」
私はジト目で煌夜を見てそう言った。 貰った物ならお礼を言わないといけないじゃん。
言ってくれればとっくにお礼を言ったのに……。
「自分には要らない残り物で感謝されるのは嫌なんだと。 だから、 ましろには言わなかった」
そんな私の気持ちを察してか、 慌てたように煌夜がそう話す。
「そっか…… 」
だから煌夜は何も言わなかったんだね。 …… イーロウさんありがとうございます。 私はそっと心の中でお礼を言った。
「じゃあ、 鼠は探しても意味無いね」
全部倒して55ポイントじゃあな……。 探すだけ無駄な気がする。
「そうなるな。 そう言えば、 ましろ。 『時の小箱』 と『風呂』 をポイントで取り終わったら『異空間の首飾り』 が欲しいんだ」
思い出したように煌夜がそんな事を言う。 どうやらカタログで手に入るアイテムみたいだけど……?
「『異空間の首飾り』 って? 」
煌夜が欲しがる首飾りってなんだろう。 異空間…… 避難所とか?
「まぁ、 倉庫みたいなもんだよ。 フレイボアとか、 さっき倒したタイガースネークの肉…… 解体する時間も無ければ、 保存できる当てもないし置いて来たけどさ…… もったいないだろ。 首飾りの中が異空間に繋がってるんだ。 食べ物とか武器とか…… 物なら何でも入る。 特に食べ物は保存がきくから便利だと思うぞ」
煌夜君やっぱり果物だけはキツかったか……。 涎が出そうな顔で肉の塊を思い浮かべているのが分かる。
確かに、 肉の焼ける匂いは美味しそうでした。
「へぇ! そんな物もあるんだ…… そうしたら、 お風呂はいいから『時の小箱』 の後はその首飾りを手にいれようよ」
お風呂は必要だけど、 生きて行くのには必要じゃない。 まだ、 なれないけれどクリーンの魔法でどうにかできるし。 でも食べる事は重要だ。 いつまでもマナの実じゃあ栄養になりそうもないしね。
食べれるものがあった時、 取り敢えず採集とか出来れば食事にレパートリーが出来そうじゃない?
「風呂じゃなくていいのか? 」
「お風呂は確かに欲しいけど、 でも、 一番最初は私のお願いを聞いて貰ったし次は煌夜の欲しいものにしよう? それにその首飾りって便利そう。 でも、 私多分解体できないよ? ていうか見れないかも…… 」
煌夜に聞かれてそう答える。 考えてみれば私の欲しい物ばっかりじゃあ悪いよね。
ポイントを手に入れる為に私は戦えてないし。 ただ…… 解体はちょっと自信ない。
お肉を食べるには必要な事だと理解しているけど、 実際問題として私…… 魚すら捌いた事ないんだよね……。 ていうか、 グロそうなのに耐えられないと思う。
「安心しろ。 させる気もないし。 俺が適当にやるから」
お肉の事を考えたのか嬉しそうに煌夜が言った。 ―― その小さい手でどうやって捌くんだろう……。
ちょっとコックさん姿の煌夜を思い浮かべた。 可愛いけど。 ねぇ……。 まぁ、 やると言い切れる以上、 どうにかする術はあるんだと納得しておいた。
と言う感じに話していたら、 見覚えのある所に出た。
開けた所にある花畑―― 私がスキル攻撃を受けたあの場所だ。
「…… っましろ…… ここは駄目だ。 やめよう」
青褪めた煌夜が私の髪を引っ張る。 そのまま、 通せんぼするように私の目の前まで飛んで来た。
「…… ここって…… 」
あの大きな岩の上、 見覚えのある魔物が日向ぼっこをしている。
距離があるので、 まだその魔物はこちらに気付いてないようだ。
「くそ。 あいつ闇属性のくせに何でまたこんな所で寝てるんだ」
苛立たしげに、 煌夜が言った。 あの時の事は、 煌夜の心にトゲのように残っているみたい。
あの後の落ち込みようを思い出して私は煌夜の小さな手を握った。
「…… 煌夜、 あれと戦おう」
「は? お前何言ってるんだ」
怒ったようにそう言って、 煌夜が私を睨む。
「この前は戦う気だったでしょ? ていう事は倒せる魔物って事だよね」
「倒せるさ。 けど! 」
倒せるとか言う問題じゃないって言われて私は決心した。
「加護は神様が直してくれたでしょ。 正直言えば私も怖いけどさ…… 」
「なら、 他を探そう。 その方がいい」
怖いよ。 怖いけど……。 確認すべきだ。
「加護がちゃんと効いてるか試すチャンスだよ。 試しちゃえば加護を信じられる」
「…… それは……そうかもしれないけど」
へにょっと煌夜の眉尻が下がる。 レベル的にかなわない敵であるなら嫌がる煌夜の意志を無視して戦ってなんて言う気はない。
多分、 煌夜は怖がってる。 私も怖いし不安だ。
もし、 それが今後の判断を鈍らせる事になったらどうだろう。 いつか、 それが煌夜の命を危険にさらすかもしれない。 だからここで、 倒せる敵で加護がちゃんと効いてるのか確認しておいた方が良いと思うのだ。
「ねぇ、 煌夜。 精神系のスキルを使う魔物が出るたびに避けて通るの? もし、 避けられない魔物に出会ったらどうするの。 ねぇ万が一、 駄目だったら煌夜は私の事を見捨てる? 」
真っ直ぐ煌夜の目を見てそう話す。 ぐっと堪えるように私の話を聞いていた煌夜だけど、 最後に 見捨てる? って言ったら勢い良く怒られた。
「そんな事ある訳ないだろ! 」
「じゃあ、 大丈夫だよ。 ねぇ煌夜。 私の事守ってね」
ズルイ事を言ってるよなぁって思うけど。
可笑しなもので私はその時、 煌夜に守って欲しいって思ってた。 ―― 姫を守る騎士のようにって言ったらきっと言い過ぎだけど。 そんな馬鹿みたいな考えに思わず微笑が零れる。
―― 変だな。 なんでそんな気持ちになったんだろう。 いつも煌夜が私を守ってくれてるからかな。
そんな事を考えながら、 煌夜のオデコに私のオデコをくっつけた。 大丈夫だよ。 きっと。
前みたいな事にはならない。 だから…… 大丈夫。 そんな気持ちが届けば良いとそう思って。
煌夜がおずおずと手を伸ばして私の頬に触れた。 まるでキスでもしそうな距離だ。
泣きそうな顔で煌夜が微笑む。 「大丈夫だよ」 私は声に出してそう言った。
因縁の魔物の再登場です。
煌夜は無事トラウマから脱出できるか。
次回はもちろんダークアイさんとの再戦です。
縦書きで読む方もいるかと思って数字を漢数字にしていたのですが、 試しに普通の数字を入れてみました。 後、 もうひとパターン試した後に統一しようと思っています。
『廃棄世界に祝福を。』 の方も更新しました。
宜しければそちらもお願いします。




