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精霊ちゃんのお名前は?

突っ込みどころのある名前ですが宜しくお願いしマス。

 イーロウさんの所にまだ辿りつけてないのに、 幾度となく煌夜に行き先を修正されてる私――。

オカシイ。 こんなはずでは…… 私って実は方向音痴だったんだろうか? 

元の世界では普通に地図読めたんだけどなぁ。 やっぱり森だと目印になる物が無いから迷いそうになるんだろうか。 そう考えると煌夜の方向感覚が優れてるって事だよね。

 精霊ちゃんは、 泣き疲れてポケットの入口にもたれかかって寝てる状態だ。

一応ビックリするといけないから、 精霊ちゃんにイーロウさんの事は伝えておいた。 とても大きいとかね。 見た瞬間にまたパニックになっちゃってもいけないので。

ぐっすり眠って起きたら少しは落ち着いているといいんだけど。

 私の足元はまだ朝が早いせいか少し肌寒いけど朝露がきらきらと反射していてとても綺麗だ。


 「あれ、 イーロウの所のマナの樹だよね」


 視線の先、 木々の隙間から見慣れた幹の色。 どうやらマナの樹の後ろ側に着くらしい。 


 「そうだな。 ましろ、 お前街とかに着いても絶っ対一人で歩くなよ。 俺の傍を離れるな」


 「…… 街は大丈夫じゃないかなぁ…… 」


 私を名前で呼ぶのは精霊ちゃんがまだ眠ってるからだ。

それにしても、 この短時間で煌夜の私に対する信頼度…… 主に方向に関する…… がすっごい減った気がする。 「離れるな」 なんてどんだけ信用がないの。


 「いいか、 ましろ。 何度も言うようだがお前は今までの自分の行動を振りかえってみろ。 冷静にな」


 「確かに大丈夫って言って大丈夫だった事が無い感じはするけどさぁ。 ほら、 ここって森の中だし。特殊な環境? みたいな」


 出来ない事が多すぎて、 凹むのはツライのでそう前向きに考えてみる。

けど、 確率的に煌夜の言う事の方が当たるんだよなぁ。 ちょっと凹んでたら煌夜が頭をポンポンしてくれました。


 「もっと」


 「はいはい。 理解したならいい」


 慰めてくれる小さな手が温かい。 現金なもので、 私の心も煌夜の温もりを分けて貰ったみたいにポカポカしてくる。 


 『うにゅ』


 小石に躓いた振動で精霊ちゃんが目を覚ましたらしい。


 「起きた? おはよう」


 『おはようなの? 私…… 寝ちゃったの』


目をシパシパさせながら精霊ちゃんが目を擦る。 泣いたせいで瞼が腫れぼったい。 これから行く所に泉があって本当に良かった。 冷やさないともっと酷い事になりそうだ。


 「少しは落ち着いたかな」


 『ん。 あんなに泣いちゃって恥ずかしいの』


 モジモジとした様子で精霊ちゃんが言う。 ワンピースの裾を引っ張って伸ばしてる様子が可愛らしい。


 「私だって同じ状況だったらきっと泣いちゃうよ」


 『そんなに大きくても泣いちゃうの? 』


  私は結構涙もろい自信はあるのでそう言い切った。 そんな私に精霊ちゃんが目を丸くさせて驚く。

実際フレイボアの時にも普通に泣きそうでしたよ。

 精霊ちゃんのあの時の状況は私のそれを上回る『怖い事』 だったと思うから。


 「もちろん。 このお兄ちゃんだって泣いちゃうかもよ? 」


 冗談めかして言えば煌夜がげんなりした顔をした。 その横顔をツンツンつつく。

精霊ちゃんが不思議そうに煌夜を見上げる。


 『そうなの? 』


 「俺は泣かねーぞ」


 「分からないじゃない」


 つつく私の指を尻尾で振り払って精霊ちゃんに答える煌夜。 私はちょっと意地悪な感じに言いながら笑った。 分からないじゃんね。 その時になってみなきゃ。 

でもきっと煌夜は泣かないんだろうなって思う。 もし、 一緒に私がいたら泣いてる私を助けてくれるんじゃないかな。 


 『助けて貰って良かったの。 あのまま一人じゃ寂しかったし不安だったの…… みつけてくれてありがとうなの』


 精霊ちゃんがそんな事をぽつりと言った。

私は無言で精霊ちゃんの頭を撫でる。 一人は嫌だよね。 私は煌夜が一緒で良かった。

もしあの時一人のままだったら狂っていたかもしれない。


―― あの時ってなんだっけ。


 「イーロウだ」


 煌夜の声に我に返った。

一瞬浮かんだ思考は取りとめのない物としてそのまま流れて行く。

マナの樹の後ろに文字通り首を長くしてこちらを伺うイーロウさんが見えた。

 私達を見つけると、 煌夜に向かって声を上げる。


 『びっくりした! びっくりしたんだよ。 酷いよコーヤ』


 それは生首事件の事でしょうかイーロウさん。


 『朝、 呼び声に目を覚ましたら空中にコーヤの首だけがあるんだよ? なにその罰ゲーム』


 あぁ…… 寝起きにそれはキツイよね。 同情します。 

私がされる側じゃなくって本っっ当に良かったです。 幽霊的な要素の話は大っ嫌いなんで。

されたら一発殴るかも。 いや、 やっぱり逃げる…… 前に気絶するかなぁ。

 朝からそんな起こされかたをしてイーロウさんはまだ興奮したままのようだ。 


 「悪かったよ。 別に驚かすつもりは無かったんだ」


 しれっと言ったよ。 あんなに楽しそうだったのに。

現にあまり悪いと思ってなさそうに見える。


 『絶対面白がっていたと思うよ。 コーヤは。 まぁ、 いいんだけれど…… 』

 

 ばれてるよ。 そりゃそうだよねぇ。 戻って来た時の悪戯楽しいって感じの笑顔は忘れられない。

あんな顔した位だからね。 首だけで浮いてる最中はさぞかしイイ顔してた事だろう。

 溜息一つ。 それで許してくれるのはイーロウさんが優しいからだ。


 『それでその子が、 例の子かな? 初めまして。 僕はイーロウよろしくね』


 その自己紹介を聞いて、 私は慌てて精霊ちゃんに言った。


 「あっそう言えば、 ちゃんと自己紹介してなかったよね。 私はナギ。 で、 こっちがコーヤだよ」


 そう自己紹介すると、 精霊ちゃんがポケットから出たがったので再び私の手の平の上に。


 『はじめましてなのよ。 私はマナの大樹、 シロガネの子なの…… とと様と繋がれないから名乗れる名前はまだ無いの』


 精霊ちゃんの『とと様』 の名前はシロガネって言うらしい。 ちょっと日本っぽい名前だね。


 『ふむ。 シロガネの…… 繋がれないって言ったね。 じゃあ真名も愛称も無いのか』


 困ったね。 とイーロウが言う。 シロガネさんは有名人みたいだ。 そう言えば精霊ちゃんがレーヴェで一番古いマナの樹って言ってたしね。


 『真名がないと幼いその身じゃ存在が安定しないだろう。 せめて愛称を付けた方が良い』


 真名にはそんな効果もあるんだ。 愛称か…… まぁ確かに呼べないのも不便だし必要だよねぇ。


 「小さいからチビでいいんじゃないか? 」 『いやなの』


 煌夜が、 あまりにもあんまりな発言をしれっと言った。 精霊ちゃんが食い気味に嫌だって言ったよ。

まぁそりゃそうだよねぇ。 チビって。 犬猫じゃあるまいし。 

とはいえさいだからチコちゃんって考えた私が言えた事ではないかもしれないけれど。


 「コーヤ、 それはあんまりだよ…… ねぇ、 私達で愛称付けてもいいかな? 」


 一応、 煌夜には突っ込んでおく。 

勝手に愛称考えといて何だけど、 それよりもまず精霊ちゃんの意志を確認する方が先だと思うんだよね。


 『真名はとと様に付けて貰いたいの。 だから愛称ならいいの、 よ? 』


 照れたように上目使いでモジモジされましたっ! 可愛い。

身悶えそうになるのを、 意志の力で押し殺す。 煌夜に不審者を見るような目で見られたけど気にしない。 頬ずりしたい位に可愛いんだけど、 精霊ちゃんを潰しちゃいそうなので止めておいた。


 「あ! そうだ。 チナちゃんってどうかな。 私の国の言葉でシロガネって『白金』 って書く事もできるのね。 本来ならその呼び方だとただの銀らしいんだけど、 同じその文字で別の金属があって、 それがプラチナって言うの。 で、 プラちゃんだとと可愛くないからチナちゃん。 どうかな? 」


 シロガネさんの子供でチナちゃんじゃ安直過ぎかなぁ。  そう思いながらも精霊ちゃんを見つめていたら大きな目をキラキラ輝かせて頷いてくれた。 頬が紅潮して大喜びだ。


 『とと様と一緒なの! チナ…… チナなの! 』


 正確にはプラチナの場合は『はっきん』 って読むんだけどね。 シロガネとハッキン、 漢字は同じだからこじつけてみました。 気に入ってもらえて良かったですよ。


 「さいでチナじゃないのか」


 『プラチナのチナなの! 』


 また煌夜はそんな事を。 チナちゃんが頬っぺたを膨らませて抗議する。

両手をブンブン振り回して可愛い。


 「コーヤ、 気にいってくれたのにそんな意地悪言わないの」


 何だか、 煌夜ってばチナちゃんを良くからかうんだよね。 


 『ナギが名前を付けたから拗ねてるんだよ』


 苦笑しながらイーロウがそう言った。 私はそうなのって顔で煌夜を見つめる。

真っ赤になった煌夜がむくれた様子で言い切った。


 「ち が う」


 それって、 拗ねてるって言ってるようなものだよ煌夜クン。 私は片手を伸ばすと何だか嬉しくて煌夜の頬っぺたをつついた。 余計に不機嫌になるって分かってるんだけど…… 可愛かったんだもの。


 『チナなの。 チナはねぇチナなのよ』


 大喜びのチナちゃんはクルクル回りながら私の手の平の上で踊っている。

嬉しくて、 こちらのやり取りには気付いてないらしい。 スマホ持ってたら動画撮るのになぁ。 残念。

 こんな姿を見てるとチナちゃんを助けに行くのが間にあって本当に良かったと思う。


昔実家で飼っていた猫の名前がミルク。 その子供の名前をコナミルクと付けてました。 略してコナ。

親子で関連がある(今回のは無理矢理ですが)名前ってイイヨネ! と思い立ちチナちゃんに。

次回は、 チナちゃんの生存戦略(笑)しようと思います。


少し前に『廃棄世界に祝福を。』 も更新しました。 15R指定入ってますが、 読める方はそちらも読んで頂ければ嬉しいです。

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