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雨風と雷と、それは、足の音を消すために好まれた。


雨は身を冷やし重くする。

しかし、殺り合うつもりはない。


狙うは、ただ一つ。


一国一本の巻物。

十二本全てを集めれば、秘国『シャカ』を得ることができると云われている。


朱色の鳥居が目立つ、狛犬城。

城自体は決して大きなものとは言えないが、城郭内至る所に佇む狛犬は闇の中で一層恐怖心を煽る。


しかし、この城の主、犬江隆直が眠る部屋の天井裏はすでに刺客の巣と化してした。



(俺が行く、見張っておけ)


刺客の一人が部屋へ降りてしばらく、天井裏で見張りを任された仲間に背後から迫る影があった。


巻物を手にした刺客が天井裏に戻ると、仲間のほかに横たわる人影が見えた。


(殺ったのか)


そう問えば、頭を縦に振る。

自分たちの存在に気付かれたなら、一刻も早くここを抜けなければならない。



刺客は城を後にし、深い森の中、追っ手がいないことを確認すると、懐に忍ばせた巻物に手をかけた。


「ちょろいもんだぜ」


そう言うと、巻物を取り出し。先ほどの仲間へ見せつけるようにした。


「開けるのか?」

「偽物を持ち帰ったら、俺たちの首はないからな」


留め具に手を滑らせてみたその刹那、脇腹に走る痛み。

どくどくと脈を打つその場からは、暗闇から色こそ見えないものの、温かいものが流れるのを感じた。


驚いて仲間を見るも、その眼はどこか嗤っていた。

気が付かなかった。あの時、横たわっていたのが自分の仲間だったのか。


果たして、物音はあっただろうか。


嵐の所為か、それともこの男が音もなく仲間を仕留めたというのか。どちらにせよ、気配を感じることが出来なかった己がこの男には敵うはずはなかった。


「お前、は…誰だ」

息絶え絶えに問う。名を知ったところで何も出来ないのは承知だったが、それでも欲が勝った。


『狛犬城御庭番、鬼城京之介(きじょうきょうのすけ)

静かな声でそう名乗った男は、止めを刺すように、刃を深く押し込んだ。



「んぐっ…」


鬼城は刺客の力が抜けたことを確かめると、刺客の手から落ちた巻物を拾い上げた。


『ちょろいもんだぜ』


鬼城は巻物を開いて、そこに綴られた文字を見るなりククっと声を出して笑った。




《阿呆》




いつの間にか雨風は過ぎ、雲間からは月明かりが漏れている。

刺客の顔を覆う様に開かれたそれに綴られた文字が、ぼんやりと光を放っていた。

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