序章
NIGHT MARE…
月夜の下、私が歌うセレナード
ナイトメア…
閉ざしてしまえるポーカーフェイス
ないとめあ…
狂ってしまえるのは、ファムファタル
悪夢…
願いは届かないもの、実らないもの
A me regarder
Juste mon souhait petite
Je prie pour que vous besoin de mon amour
Je t’aime…
森の奥にある、小さな小さな今にも壊れてしまいそうな小屋。
そんな小さな場所で生まれた少女もまた、小さかった。
その髪は誰もが触れたくなるようなゴールド。
その肌は輝くパール。
その瞳は、吸い込まれてしまいそうなターコイズ。
その唇は誰もが奪いたくなるようなルビー。
「さあ、名前は何にしよう」
そう呟き、男はそっと少女を抱き上げた。
きっとこの子が最後の子。それと同時に、もしかしたら自分の最期かもしれない。
もう俺には、時間が無いのだろうから。
男は、何十年も使い続けてきた自分の腰を、今となっては動かすだけで痛むようなその腰を、ゆっくりと持ち上げ、小屋の隅にまで移動した。
そこには、雨漏りがするような古びた小屋には似つかわしくない、立派なクローゼットがぽつんと佇んでいた。
そして、何十年も使い続けてきた自分の手を、今となっては皺だらけでか細いその腕を、ゆっくりと上げ、扉を開いた。
そこに並ぶ見事な小さいドレスたち。
男はゆっくりと丁寧にドレスを吟味し、意を決したように一着手に取り、少女を傷つけないようそっと着せた。
「そうだ、名前がまだ・・・。だけど俺が名付けたところで、君は引き取られるのだったな。たった数日の名前か。それなら」
その時突然小屋の部屋が激しく開かれた。
驚いて振り返ったその先に立つのは、若いドイツ兵の二人組。
「あっ・・・」
ダーンッ
それは、とてもゆっくりだった。
ゆっくりと倒れこむ・・・少女の生みの男。
記憶が走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
あぁ、死ぬんだな。
最期にこの子に出会えて良かったよ。
長いようで短かったこの人生・・・後悔はしないさ。
何、もうすぐだよ、すぐそっちへ逝くよ。
咳と共に血を吐き出した男は愛おしそうに一言、
「Antoinette…」
と・・・。
1916年、2月29日、
一人の男が小屋の中で、少女を愛おしそうに抱きしめたまま、永眠。
1916年、2月29日、
一人の少女が小屋の中で、男の腕の中で、美しい微笑みを浮かべた。
ずっとずっと温めてきた小説。
ついに投稿します。
至らない部分もございますが、読んでいただけると嬉しいです。
あくまでも自己満足です♥