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第9話

6月もそろそろ終わりを迎えようとしている。


悠ちゃんとは、相変わらず付き合っている「フリ」を続ける関係。

朝は私の最寄駅のホームで待ち合わせ。

悠ちゃんは3駅向こうの駅から乗るのだが、わざわざ一旦この駅で電車を降りて私を待っているのだ。


混雑した朝の駅のホームで佇む悠ちゃんは、それはもう目立つ! の一言。

イヤホンを耳に携帯で音楽を聴きながら「声を掛けるな」オーラをビシビシ出しているにもかかわらず、その立ち姿全体から王子様のキラキラオーラも出してしまっているので、どうしても女子たちの目を引きつけてしまう。

高校生だけではなく、大学生やどう見ても社会人のOLさんにまで熱い視線を向けられている。


初日はそれこそ人だかりが出来てる状態で、悠ちゃんが頭ひとつ飛び出すような長身じゃなかったら、見つけられなかったかもしれない。


女の子に取り囲まれて色々話しかけられていたようだが、イヤホンをしたまま時折周りをうかがい、私がその光景に驚いて立ち止まっていると、すかさずその輪の中から抜け出し、蕩ける様な笑顔を私に向けた。


「おはよう、美希ちゃん」

その眼差しと口調の甘さに、なんだかいたたまれなくなる。

さっきまで悠ちゃんを取り囲んでいた女の子たちの視線が痛い!

突き刺さるような視線っていうのを、初めて体験したかもしれない……。


「おはよう……。悠ちゃん、あの……あの人たち……?」

「ん?……あぁ、気にしなくていいよ? 朝から暇なのかな?」

いや、そんなわけ無いでしょと、お互いわかっているからもう何も言わない。


「じゃ、行こうか」

この駅から学校までは3駅。

元々、東高の近くで家を探したから、朝の混雑した電車も10分程乗れば着く。


その電車内でも悠ちゃんは私を守るように目の前に立っていて、片手でつり革の上の部分を持ち片手で私を抱き寄せるように支える。


背伸びをしないとつり革にも届かない私は、悠ちゃんに支えてもらうしかバランスをとる方法がなく、どうにも恥ずかしくて顔を上げられない。

一度、ふと顔を上げた時に、何とも言えない優しい瞳で私を見つめているのを見てしまい、ドキドキが止まらず真っ赤になった顔が元に戻らなくなって困ってしまった。

それ以来、この至近距離では顔を上げることが出来ないでいる。


駅に着いてから学校まで歩く間も、常に周りの視線を感じている。

最近はやっと少しだけ慣れてきたけど、それでも全く気にならないわけじゃない。

時折会話を交わしながら、ただ並んで歩いているだけなのに、やっぱりドキドキしてしまう。


悠ちゃんとは30センチ以上の身長差があるので、並んで歩くと会話もたまに聞き取れないことがある。

その度に悠ちゃんはこちらにかがみ込んで、「ん?」と顔を覗き込むようにするので、それだけでやっぱり真っ赤になってしまう。


そんな私を見て、なぜだか益々甘々な笑顔になる悠ちゃん。

だから、その顔はダメだってば~!

周囲の視線には多少慣れても、その甘ったるい顔で見つめられるのには、いつまでたっても慣れる気がしない。

「フリ」だとわかっている私でさえ、時折勘違いしそうになるくらい悠ちゃんの演技は完璧で、やっぱり早いところコレをやめてもらわないと、心臓が持たないと思ってしまう。


そういえば――


悠ちゃんの「心に決めた人」

ずっと引っかかったまま聞けてないけど、本当にいるのかな?

もしいるのなら、この状況はかなりおかしくない?

単純に考えれば、その人を本当の彼女にすれば、私とこんな不自然なことしなくていいのに。


今じゃないとかって、どういう意味なんだろう。

気になるけど、そんなのなかなか聞けないよね……。

私と一緒にいても、その人のこと考えたりしてるのかな……。


そう考え出すと、いつも決まってモヤモヤしてしまう。

悠ちゃんにはっきり聞ければいいんだけどね……。






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