表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/45

第7話

次の日


教室に入るなり、私は数人の女子に取り囲まれてしまった。

優等生集団の東高ではちょっと浮いている、派手目女子グループの皆さんだ。

イヤ、何の用かなんて、今の私には聞かなくてもわかるんだけど!

それじゃなくても、今日ここまで来るのもどれだけ大変だったか!!


「早瀬さん! これって早瀬さんのことって本当なの!?」

学年で1番モテるとうわさの高柳さんが、携帯の画面を目の前にかざして見せる。


ん??何それ? ツイッター??

私、ツイッターは、やってないけど?

そこには何か短いツイートとともに、画像が写っていた。

それをよく見ようとした瞬間……


「ちょっと、美希ちゃん!!!」

すごい勢いで教室に入ってきた友人に、無理やり振り向かせられてガクガク身体を揺さぶられた。

ちょ、ちょっと! 里奈ちゃん落ち着いて!!


「さっき神木先輩と一緒に登校してたでしょ!? いつの間に先輩と親しくなったの!? もう、それ目撃した人たちみんな、上級生も大騒ぎよ! 一体どういう関係!?」

一気にまくし立てて、はぁはぁと肩で息をする里奈ちゃん。


あぁ、見られてたのか…。

いや、悠ちゃんは見せようと思ってやってるんだから、ある意味当然の成り行きだ……。


里奈ちゃんとはクラスが一緒で、入学してすぐに仲良くなった。

見た目は落ち着いた知的美人。

思ったことをはっきり言う裏表がないところが、私にはすごく付き合いやすい。

とは言ってもまだ知り合って間もないわけで、当然、悠ちゃんと幼馴染であることも話したことはない。


もちろん里奈ちゃんだけでなく、誰にもそんなことは言っていない。


「里奈ちゃん、落ち着いて~! えっと、神木先輩のこと…だよね?」

私がそう言い始めると、その前に話しかけてきていた高柳さんたちも身を乗り出してくる。

「私たちが聞きたいのもそのことなんだけど! この画像、やっぱり神木先輩と早瀬さんなの!? 昨日ツイッターですごい勢いで拡散してたのよ!」


今度こそ、じっくりスマホの画面を見る。

そこには

「東高の王子、初ツーショット!!」

の言葉とともに、後ろ姿の東高生の男女2人が写っていた。


……いつの間に?

どう見ても、昨日あれから悠ちゃんと一緒に下校した時のものだ。


少し遠いし、薄暗いし、後ろ姿だしで、はっきりとはしないものの、悠ちゃんは少し横を向いているのとそのスタイルの良さで、知ってる人が見たらほぼわかるレベル。


隣の私は、、自分で見ても落ち込むくらい不釣り合いだ。

30センチ以上はあるだろう、悠ちゃんとの身長差。まるで子供じゃないの~。

ただ、この背の低さと肩までのくせっ毛で、顔は見えないけど私を知ってる人ならもしかして? って思うだろう。


でも、一体誰が最初にこんなの撮ってツイッターに載せたんだか。

東高生なのは間違いないようだけど…。


「で!? どうなの? 美希ちゃん!」

また里奈ちゃんに揺さぶられそうになったので、思わず一歩後ずさる。

「ええっと……」


…言いにくい。


ほんっと言いにくいんだけど、悠ちゃんと約束した以上嘘つかないといけないんだよね?

ごめん! 里奈ちゃん! それに、高柳さんたち!


「実は…昨日から付き合うことになって……」


そこからはもう、教室中が大騒ぎだった!

どうもみんな聞き耳を立てていたようで、

「マジで!?」

「うそでしょ!?」

「誰が告ってもダメだったのに!?」

「マジかよ……神木先輩じゃかなわねーよ……」


なぜか、女子だけじゃなく男子の一部も顔を引きつらせている。


「じゃあ、神木先輩の『決まった人』って、美希ちゃんのことだったの!?」

「え? なに、それ?」

「美希ちゃん知らないの? 神木先輩、告白されるたびに『僕には心に決めた人がいるから』って言って断ってたんだよ!」


悠ちゃん、そんなこと言ってたんだ。


まぁ、おそらくそう言えば諦めてもらえるっていう考えからだろうけど、でも、もしかしたら本当にそういう人がいるのかも…?

もしいるなら、その人には私に彼女のフリをしてもらうことになったって説明してるのかな?

それとも、悠ちゃんの片想いとか?

いや、あの悠ちゃんが片想いとかありえないよね!


ま、私は雇われ彼女ってだけなんだから、そんなの関係ないんだけど!

……でも、なんでかな、モヤモヤしてしかたない~。


「と、とにかく! そういう事だから! あっ! もう先生来ちゃうよ!」

ちょうど良くチャイムが鳴り、みんな渋々自分の席に戻って行った。


ふぅ~~。

やっぱり、こうなりますか…。


だから悠ちゃんには

「やりすぎだよ!」って今日もコソコソ抗議してたのに…。


王子様は全く聞く耳持たず、私の最寄り駅で(無理矢理)待ち合わせて、必要以上に(距離を詰めて)エスコートして、あげく耳元で

「僕はとことんやるって言ったよね? これからも全力で美希ちゃんの彼氏になるから、そのつもりでいて?」

なんて囁かれて!!


傍から見たら、バカっプル丸出しだったはず…!!

もう、恥ずかしいったらないし!

おまけに相手が悠ちゃんだよ!?

これまでの人生で経験したことないくらいの注目浴びまくるし!!


私、どうしてあんな簡単に彼女役なんて引き受けたんだろ…。

1日目で、早くも後悔の嵐だよ……。


これ、いつまで続けるのかな?

悠ちゃんにちゃんとした本当の彼女が出来るまで?


「心に決めた人がいる」っていうんなら、その人に本当の彼女になってもらえばいいじゃないの!

――あぁ、でもそういえば、まだその時じゃないとかなんとか言ってたっけ?

悠ちゃんの言うことは、時々全く訳わかんない……。


先生が来てもなお、クラスのみんなにチラチラと見られながら、今世紀最大のため息をついた私だった。





あれから――

悠ちゃんがやると言ったらとことんやる人だと、身に染みて思い知ることとなる。


雇われ彼女になってから1ヶ月が過ぎ、ある程度は慣れてきた私も、なぜだかどんどん甘ったるくなる悠ちゃんの視線や態度に「やりすぎだってば!」を相変わらず連呼している。


学校では、私と悠ちゃんが元々幼馴染だということも知れ渡り、

「なんでいきなり?」

「なんであの子?」

というもっともな疑問も、

「幼馴染で昔から可愛がっていたんだ」

という悠ちゃんの言葉で、みんな納得はしないまでも、とりあえず色々言ってくる人はいなくなった。


「出待ち」女子たちに対しても、私とのツーショットを見せつつそれでも声をかけてくる子がいれば

「ごめんね。彼女しか好きになれないから」

と、どんなきれいな子でもそっけない態度を貫き、気が付くとあれだけいた「出待ち」女子たちもほとんど見なくなった。


ってことで、そろそろ彼女のフリもフェードアウトしてもいいんじゃないかと悠ちゃんに提案してみたんだけど、ものすごい勢いで却下された。

その上、不機嫌に顔をしかめつつ距離を詰められる。


「そんなこと言い出すなんて、美希ちゃん。――まさか他に気になる人でも出来たの?」

びっくりするほど強い視線を向けられ、悠ちゃんらしくない余裕のない態度に目を丸くした。


「そうじゃないけど、最初の目的は『出待ち』女子対策だったんだし、それはもうほぼ解決したかなって…」

「それでやめちゃったら、また元に戻るだけでしょ? たった1ヶ月で僕を見捨てるなんて、美希ちゃん酷くないかな? ……それとも、本当に何か他に理由があるの?」


探るような悠ちゃんの視線に思わず目をそらす。

と、それを許さないとばかりに顔を覗き込まれ、ジッと見つめられる。


「他に理由っていうか…。ただ、こういうのみんなを騙してるみたいで、気が咎めるんだよね。だから、いつまで続けるのかな~なんて…」


悠ちゃんをチラッと見ると、ちょっと気落ちしたような表情で「はぁ~」とため息をついた。


「美希ちゃんの気持ちもわからないでもないけど、僕はまだやめるつもりはないよ? それどころか、まだまだ足りないって思ってるくらいだし。もっと恋人同士に見えるようになりたいっていつも思ってるくらいだよ。だから、この関係を解消するなんて考えないでね?」


ニッコリ笑ってそう言われたけど、なんでそんな発言になるのかやっぱり訳わかんないんですけど~~!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ