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第39話 王子様と私のその後15

「――美希は、やっぱり俺の運命の人だね」

「えぇっ~? ちょっ、な、なに言ってるの?」

それも、王子様スマイル全開で!!

当然のように真っ赤になる私。

そのセリフは、ちょっと恥ずかしすぎでしょ~!


「初めて会ったとき美希の笑顔を見て、本当に雷に打たれたようだったんだ。『この子は僕のためにここにいる!』って本気で思ったよ。 どうしてそう思うのかわからなかったけど、きっとその時から決まってたんだね。美希が俺の運命の人で、俺を救ってくれる人だって」


「――救う??」

「そう。今の美希の言葉で確信した。そういう考え方が出来る美希だから、あの時そんな美希に恋をしたから、俺は生きる意味を得る事が出来たんだよ」

「生きる意味って、そんな、大げさな……」


「それが大げさじゃないんだよ。 考えてもみて? 努力もせずに大抵のことはほとんど出来てしまう……それもまだ子供だっていうのに。 あと数年あのままだったら、どんな事も先がわかってしまって、何をする気力もなくなっていただろうね。 何もかもが簡単っていうのはね……その先にあるのは恐ろしい程の退屈なんだよ。 そんな人生、何の意味がある?」

「――それは……」

たしかに。もし、自分がそんな状況に身を置くことになったら……。

あんまり想像できないけど、やっぱり普通ではいられないんじゃないかな。


人は努力をするから成長できる部分も大きいし、そうして得た達成感や満足感は心の成長にはきっと欠かせない。

それがなかったら、無気力になるっていうのは、たしかにそうかもしれない。


「5歳の俺でさえ、もう退屈しかけていた。 あのままだったら、今ごろ無気力で無感動な機械みたいな人間になってたんじゃないかな。……最悪、退屈しすぎて死を選んだかもしれない。 でも、美希に出会って恋をした。 その後の俺は、退屈なんて一瞬も感じなかったよ。 将来、美希を手に入れるためにはどうしたらいいか必死で考えたし、その結果やることがたくさんあったんだ。 その全てがそんなに簡単じゃなかったしね。 いくら周りを固めても、当の本人である美希が一番簡単じゃなくて、近づけば近づくほど逃げられるし、俺のアプローチにもまるで気付かないし。 俺が先の先まで考えて綿密に立てた計画でも、途中でうまくいかなくなるし。……東高を受けるって聞いたときは、本当に焦ったよ。どこまで俺の予想の上を行く子なんだって、ね」


「そ、それは……なんか苦労させちゃったみたいで、ごめんなさい……?」

あれ? ここ、私が謝らないといけないところだっけ??

そこで、我慢しきれなくなったように、悠ちゃんが声を上げて笑い出した。


――ビックリ!!

こんな風に笑う悠ちゃん、初めて見た!

いつもは大抵微笑む程度だし、たまに満面の笑みを浮かべることもあるけど、声を上げて笑ったりするのは見たことがなかった!


「――くっ!……ははっ! ほらね?俺をこんな風に笑わせる事も、美希にしか出来ない。 退屈どころじゃないよ? いつだって美希は俺を、天にも登るような気持ちにしたり、地の底まで突き落としたりする。 地の底の方はもう勘弁して欲しいけど、それでも無気力にただ生きているだけよりずっといい。……美希が俺を救ったっていうのはこれでわかっただろう?」


いつになく、優しい瞳で私を見つめる悠ちゃん。

そんな大それたことをしたなんてやっぱり思えないけど、でも、ほんの少しでも、悠ちゃんの力になれたのなら、嬉しいって思う。


「救ったかどうかはよくわからないけど、これからも退屈させないようにがんばるね……!」

そんなとんちんかんなことを言い出す私に、苦笑する悠ちゃん。


「――いや、わざわざ頑張らなくていいから。 ただ、今日みたいに、俺を遠ざけようとするのだけはやめてくれよ? どんなに振り回されても構わないけど、ずっと側にいるって事が最低条件だからね?」

悠ちゃんの笑顔がすごく優しくて、思わず私もニッコリしてしまう。

なんだか、悠ちゃんとの距離がまたグッと縮まった気がする。


今まで、どこか得体の知れない部分があった悠ちゃんだけど、今日の話の中でその理由が少し見えてきて、理解できるとその分、近付けた気持ちになる。

これからもっともっと、この複雑な悠ちゃんのまだまだ知らない部分を知って、理解していけたらいいな。


「あぁ、そうだ。どうしてこんな話をしたのかを忘れてたよ。」

「え?」

「ほら、きっかけは、俺が経験豊富だって美希が誤解したことだっただろう?」


あっ!そうだった!

そのことを説明する中で出たのが、さっきの話。

――ん?

っていうことは……。


「そう、もう想像つくと思うけど、俺の場合、経験しなくても知ってさえいれば出来るんだよ」

「えっ……と。あんまり聞きたくない気もするんだけど、その、どうやって知ったの……?」

「――どうって。基本的なことは学校でも習うし、美希だって知ってるだろう? それ以上の実践的な部分は……まぁ、ネット上にいくらでも溢れてるからね?」

そう言って、ニヤっと笑う悠ちゃんの目つきが、なんだかまた妖しくなってきてる!?


「美希を抱きたいっていうのはずっと前から思ってたし、そのための準備は抜かりなくやってたよ。 あ、でも、初めての美希に無理はさせられないから、ちゃんと初心者用の実践スキルを身につけてるからね? だから安心して俺に任せてくれて大丈夫だよ?」

妖しい目つきのままそんなこと言われたら、もうどうしていいかわからなくなるでしょ~!

まだ、そんなことする決心はつきません!!


「――私がイヤがることはもうしないって、さっき言ったよね?」

あんなに余裕なく謝ってたのに、もう忘れたの~?

「あぁ、もちろん、美希がイヤなことはしないよ? 要は、イヤじゃなくなればいいんだし、ね? 全力で美希がその気になるように頑張るつもりだから……今度こそ、覚悟してね?」

熱を帯びた目で見つめられ、耳元で囁かれ、あぁ、もう!!

ドキドキでどうにかなりそう……!


今回のことで、悠ちゃんに近付けて嬉しかった気持ちを考えると、エッチしてもっと近付くっていうのも、いずれはありなのかなぁ~なんて思ったりして。

もちろん、今すぐでは絶対ないけど!

でも、結婚するまでしないっていうのは……撤回しても、いい、かな~~??


なんてことを考えてるのは、もちろん悠ちゃんには絶対言わないけど!







これで完結となります。

数話で終わる予定が、ちょっと長くなってしまいました。


このあと、番外編を1話考えてはいますが、投稿まで少し時間がかかるかもしれないので、ここで完結とさせていただきます。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

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