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第38話 王子様と私のその後14

「俺の、過去……?」

悠ちゃんが驚いた顔で、まじまじと私を見ている。

元カノに嫉妬するって、悠ちゃんにとってはそんなに意外なことなの??


「美希が何のことを言ってるのか、本当にわからないんだけど。 俺の過去にヤキモチって、ヤキモチ焼くような過去なんて、俺にはないよ?」

――え……??

ってことは、なに?

彼女はいなかったけど、経験だけは積んでますって、つまりはそういうこと!?

それはそれで、なんかものすごく複雑なんだけど~!


「でも……今まで、付き合った人はいないの?」

「当たり前じゃないか。俺は美希に出会った時からずっと、美希だけを好きだったんだよ? なのにどうして他の子と付き合ったりしないといけないんだ?」


――――はい??

私と悠ちゃんが初めて会ったのは、幼稚園の時だよ……?


「――まさかと思うけど、悠ちゃん……。幼稚園の時から今までずっと、私のこと好きだった……なんて、言わないよ、ね?」

「ん? 言ってなかったかな? そうだよ、初めて美希に会った時は衝撃だったよ。本当に運命だと思った。 それからこうして恋人になれるまで……本当に長かったよ」

「…………」


――言葉が出てこない。

それって、悠ちゃんが5歳で私が3歳だよね?

はっきり言って、その頃の記憶なんて、断片的にしかないよ~?

悠ちゃんが王子様みたいだったって事は覚えてるけど、それ以外は……。


なのに、その時からずっと、私を好きだったとか言うの?

普通はそんなの、淡い初恋の思い出にしかならないでしょ~!


うすうす気づいてたけど、やっぱりというか、なんというか、悠ちゃんはちょっと普通じゃないかもしれない。

なんて言うか……人並み外れた執着心だ。

一途なんて言葉じゃ到底足りない。

でも、そこまで私一筋だったって言うんなら、キスもエッチもそれなりに経験を積んでいるってどういうことなの!?


「それじゃあ、好きでもない人と、その……キスとかそれ以上とかしてたってこと? どうしてそんなこと出来るの?」

思わず、ジトっと不機嫌に見つめてしまう。


「――はぁ? 何を言ってるんだ? そりゃ、イギリス(むこう)では挨拶のキスはすることもあったけど、でもマウストゥマウスは俺はしないよ? 小さい頃は母親にされてたけど、それも美希と出会ってからはきっぱり拒否してたし。 それから……それ以上ってセックスのことだよね? そんなこと、もっとするはずがないじゃないか。 俺だってもちろんそういう欲望はあるけど、それは美希に対してだけだ。 はっきり言って、他の子にはそんな気も起こらないんだよ。……だからこそ、今日、あそこまで自分を抑えられなかったんだ」


え……? ちょっと待って!

それって、どういうこと??

まさか、あの悠ちゃんが……記憶にある限り昔から、いつもきれいな女の子に囲まれてた、超モテ男の悠ちゃんが……まさかの未経験ってこと???

ホ……ホントに~~!?


「慣れてる!」ってショック受けといて何だけど、こんなハイスペックな高3男子が、今まで全く経験ないってのもなんか衝撃なんだけど~~!

でも、だって……じゃあどうして?

いかにも手馴れた感じだったよね?

私と違って余裕だったし……!


「え……っと、でも!すごく慣れてたよね!? キスだって息継ぎのやり方教えてくれたし、それに、その……片手でブラのホック、外したじゃない!!」

あの時のことを思い出すと、恥ずかしくて真っ赤になる。

本当は、口にするのも恥ずかしいんだけど、でも、そこのところはハッキリさせておかないと……!


「あぁ、それでか……。 俺にとっては普通のことだから、そういう風に思われるなんて考えつかなかったよ」

「??……どういうこと?」


「うん、あー……、俺は元々人とは違うというか、ある意味特異体質みたいなもんなんだけど。……簡単に言うと、学習能力が異常なんだ」

――「異常」って形容詞を「学習能力」って言葉に使ってるの、なんかとんでもないと思うんだけど……?


「これを言うと、大抵の人は不快に思うらしいから、家族やかなり身近な人間以外知らない事だけど……。俺、一度見たり聞いたりした事、全部覚えてしまうんだよ」

――えっ? マジですか??


「それも単に記憶するだけじゃなくて、理解力や、応用力、情報処理能力なんかも異常らしいから、勉強なんて授業聞くだけで、いや、教科書や参考書をナナメ読みするだけでもほぼ理解できてしまう。 反復なんてしたことないんだよ。……で、それだけじゃなくて、例えばスポーツでも。 上手い人の動きを一通り見るだけで、それを再現できる」

――はぁ?? なに、それ!?


「もちろん、筋力や体力の問題はあるから、全く同じレベルってわけじゃないよ? でも見てのとおり、俺は体格にも恵まれたから、学生の大会レベルだったら、大して努力もしないで優勝したりしてしまうんだよ。……まぁ、それで勝っても努力してない分感動もないし、第一一生懸命やってるヤツに失礼だからね。 結局、テニス以外はやらなくなったけど。 そのテニスも、周りの期待にうんざりしてきて、東高編入を理由にやめられてホッとしたくらいだよ。 身体を動かすことは好きだから、遊びのスポーツならやるけどね」


「…………」

もう、驚き過ぎて言葉も出ない。

悠ちゃんが完璧なのって、生まれた時からだったってことよね?

ある意味、神様の最高傑作ってことじゃない?……まぁ、その性格は別として。


「――そんな特異体質なんて、聞いたことないよ。……はぁ~~。 でも、そんなにも能力詰め込まれちゃっても、それに関してはあんまりいい思いしてきてないみたいだよ……ね? 大抵の人が不快に思うって、要はやっかまれるってことでしょ?スポーツだって優勝しても感動すらないなんて、けっこう悲惨じゃない。

――――そんな能力を持たされて生まれてきちゃったら、ちょっとくらい性格歪んでもおかしくないよねぇ……? あ、なんか、納得。悠ちゃんのその異常なまでの2面性とか、粘着気質とか、執着し過ぎて暴走するところとか、残念なところ全部、その能力のせいで歪が出ちゃった部分じゃないのかな~? やっぱ、人ってそうやってバランス取ってるんだよ、きっと」


これまで知らなかった悠ちゃんの根底の部分が知れて、今までよりずっと悠ちゃんを理解できた気がする。

完璧な優等生で王子様なのも悠ちゃんだし、危ない目をして犯罪者まがいのことを本気で口にするのも悠ちゃん。

別人みたいだと思っていた表と裏の悠ちゃんだけど、その両方があってこそ、今の悠ちゃんになってるんだよね?


私は最初、王子様の悠ちゃんに惹かれたけど、結局、真っ黒な悠ちゃんにもドキドキしちゃって。

私っておかしいのかな?って思ったこともあったけど、今考えれば、王子様の仮面に惹かれたわけじゃなくて、悠ちゃん自身に惹かれたんだから、当然なんだよね。







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