表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/45

第24話 (悠真視点)

ゲーセン前でやっと美希を捕獲した。


画像で見た南高の男が2人、驚いた顔でこっちを見ている。

美希の前でなかったら、本性もあらわに奴らに詰め寄り、二度と美希に近付かないよう脅しをかけていたに違いない……が。


美希の友人と、男のうちの1人がお互いを意識しているらしいことを感じ、友達思いの美希の性格を考えると、こうなった事情が彼女、山内さんの言う通りなんだろうと理解できた。


そうそう、この山内さんだが俺の本性をなんとなくだが感づいているようで、なかなか出来る子だと思う。

先々、俺の協力者(という名のスパイ)に成長してくれることを期待しよう。


事情は理解したが、やはり一刻も早く他の男の側から美希を引き離したい。

ゲーセンでどんな風に過ごしていたのかとか、考え出すととたんにどす黒い感情に支配されそうになる。


半ば引きずるように美希の手をつかみ、余裕をなくしているのを気付かれないよう、無言のまま帰りの電車に乗った。



美希に変に思われないように何か話さないと……と思い携帯のことを思い出して言うと、とんでもないものを見てしまうことになった。


携帯を取り出した時に、美希の膝に落ちたのがプリクラだというのはすぐにわかった。

慌てて美希はそれを隠してしまったけど、その一瞬でも、さっきの4人で写っていたのだというのは確認できた。


それだけですうーっと目の前が真っ暗になるような感覚を覚えたが、足元に落ちたさっきより大きめの同じプリクラが目に入り、そのありえない画像に俺は自分の感情を抑えるだけで精一杯だった。


よく、あそこで色々と我慢できたと思う。

とは言っても自分でも小刻みに身体が震えるのはどうしようもなかったし、隣にいた美希も俺の異変に気付いていただろうが。



このまま、いつものように美希を家に送ってさよならって訳にはいかない。

もう、我慢の限界だ。

底の見えない嫉妬心と、焦りと不安に、この俺が押しつぶされそうになっている。


美希は何か必死に言い訳をしていたようだが、そもそも男とプリクラを撮ること自体許せない。ありえない。

それも、あんな……!!


美希がもう少し俺を意識してくれるまで、俺の隣に慣れるまで待とうと思っていたが、もうだめだ!

美希が誰のものなのか、いい加減わからせないと、今日のように隙をつかれて後悔するなんてもうまっぴらだ!


さっきよりもさらに強引に美希を家に連れて行った。

瑠奈の名前を出すとちょっと安心したようだが、悪いな、瑠奈はまだまだ帰って来ないよ。



俺の部屋に美希が入るのはこれが初めてだ。

今までいつも美希は瑠奈の部屋に引き篭ってしまい、イライラしていた事を思い出す。


美希の好きな茶葉で紅茶を入れ、お菓子を食べながら少しリラックスしてきたところで、見たくもないがあのプリクラを取り出す。


さっきは怒りのあまり細かいところまで見てなかった事が、この時初めてわかった。

が、それは俺にさらなる怒りと絶望を植え付けるものだった。


――おそらくきっと、ハプニングではあるだろうが……

この画像はどう見ても、唇が触れる前か触れた後だ。

いくら事故だとしても、俺の美希が他の男とキスをしたというのか……?


そうだったら、俺は自分でも何をするかわからない。

この部屋に美希を閉じ込めて、もう他の男と同じ空気すら吸わせない!!


俺のキスで唇が擦り切れるまで上書き消毒するのはもちろん、この場で美希のすべてを俺のものに……!!


俺が怒りに任せてグシャグシャにして捨てたそのプリクラを、ご丁寧に拾ってカバンに入れる美希。

怒りに加えて、焦りや不安が押し寄せる。


そのプリクラを捨てたくないのはどうしてなんだ!?

その「たかや」ってヤツが気になっているとでも!?


「この男と……キス、した……?」


今の俺はいつもの余裕なんて微塵もないだろう。

顔が歪んでいるのもわかるが、自分でもどうしようもない。

頼む……! 否定してくれ!!


「違う! 本当にたまたまこんな風に撮れちゃっただけだよ! もし本当に唇が触れたりしちゃってたら、私その場からひとりで逃げ帰ってるよ! そんなんがファーストキスだったら、立ち直れないじゃない!!」


美希の否定の言葉を聞いた瞬間、その直前まで一時的に呼吸をしていなかったんだと気付いた。

一気に肺に、脳に酸素が入ってきた事で、いつもの判断力や思考力が戻ってくる。


……そう、美希のその言葉に嘘はないだろう。

美希をよく知っている俺なら、そのくらいわかってもいいはずだったのに。

それだけ冷静さを無くしていたということか……。


さらに、当然だが美希がキス未経験ということも確認できた。

まぁ、今日俺がそのファーストキスをもらうけど、ね?



しかし、やっと余裕が戻ってきた俺に、新たな爆弾を投下してくる美希……。

だから、なぜそんな平気な顔で「彼女のフリ」をやめるなんて話が出来るんだ?

美希のその表情とか言い回しからは、俺の側にいられなくなっても全く構わないとしか感じ取れない。



……これはもう、ここではっきりさせるしかない。

美希の本心を確かめたい。

どちらにしろ美希は俺のものにするが「同意」がある方がいいに決まっている。



「そうだね。じゃあ、付き合ってる「フリ」はもうやめようか。」


そう、もう「フリ」はやめて、本当の恋人同士になるんだ。

美希に絶対拒否はさせない。

どういう反応でも、最終的には承諾させる。

イエスしか聞く気はハナからないのだから。



美希はしばらく無言で何か考えていた。

その顔を見てまた不安が蘇る。


あの男のことを考えてはいないよな?

その問に真っ赤になる美希を見て、焦りのあまり思わず美希に口付ける。

……これで、美希のファーストキスは俺のものだ。


畳み掛けるように、俺の熱い想いを美希に告げる。

やっと、俺を見て意識してくれているようで嬉しくなる。


それでも、俺の気持ちをまだ信じられない美希に、例のツイッターを見せて、俺がどれだけ焦って追いかけてきたかを説明する。

もちろん、GPSを使ったなどと余計なことは言わない。


ついでに言うと、美希のために東高に編入した事も、まだ伏せておいたほうがいいだろう。

本当の俺を知ってもらいたいが、それは徐々にでいい。



そして、とうとう美希の口から俺を好きだと聞くことができた!

俺の長年にわたる想いが成就した瞬間だった!!


やっと、美希を思い切り抱きしめることが出来た。

何度もキスをして、さぁこれからってところで抵抗されたけど、そういうところも美希の可愛いところだ。

今日のところはこれで許してあげるけど、そんなに待たないからね?


嬉しさのあまり、王子の仮面があっけなく外れてしまう。

そんな俺を見て、驚いて顔を引きつらせる美希。


そんな顔も、もちろん可愛いけどね?

でも、もうだめだよ?

もう、逃がさない。

俺を好きだと言ったその瞬間、美希は一生、俺のものになる事が決まったんだよ。


だから・・この先ずっとずっと、愛し合って過ごそうね?







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ