表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/45

第17話 (悠真視点)

「しかし、お前がここまで冷静さを失うなんて予想もしなかったぞ。 真相もまだわからないのに、もし目の前にこの男たちがいたら、何するかわからないって顔してるぞ。そこまで早瀬にマジだってことだろうけど、俺としてはそんなに執着される早瀬が気の毒になってきたよ……」


慶一がなにか色々言っていたが、ほとんど聞き流し俺はさっそく行動を開始した。


まずは美希の携帯に電話をかけてみる。

電源は切っていないようだが、出ない。

おそらく、マナーかサイレントにしてあるのだろう。

学校から携帯を触っていないなら、サイレントの可能性が高い。


LINEには、当たり障りのないメッセージを残す。

既読の有無で、美希が今携帯を見ているか見ていないかを判断するためだ。


それから、あるアプリを開く。

俺が色々やっているのを、後ろから慶一が覗き込んできた。


「なんだ?それ」

「……iPhoneを紛失した時用の位置確認だよ」

「誰のiPhone?って……イヤ、そんなの聞かなくても決まってるよな。……お前、それ本人の許可取ってんのか? たしかIDとパスワードがいるだろ? 早瀬に教えてもらったのか?」


俺はその質問には無言のまま、慶一に向かってフっと笑った。


本人に気づかれないように位置確認したいのに、許可なんて取るわけがない。

色々なアプリがある中からこの方法を選んだのも、とにかく美希に気付かれないためだ。

IDとパスワードは……美希が疑うことを知らない可愛い彼女だってことで。


相変わらす優秀な慶一は、その黒い笑みひとつから、今俺が考えていた事の大半を読み取ったようだ。


「……お前なぁ~。それはさすがにマズイだろう。っていうか、その慣れた感じ、日常的にやってるな? 早瀬にバレたら何て言うつもりなんだ? ……イヤ、もう、ホンっトーに早瀬に同情するよ……」


慶一を無視したまま、パスワードを入力すると――

今美希がいる場所が、住所とともに地図で表示された。


ツイッターの投稿時間から2時間以上が経過していることもあり、カラオケ店はすでに出て、駅に併設されている大型のゲームセンターにいるようだ。

ここからだと、20分もあれば着くだろう。


「帰る。 慶一、あのツイッター内容は絶対に流出しないように手を回してくれ。」

「ハァ……。簡単に言うよなぁ? 俺が気付かなかったら明日には全校生徒に知れ渡っていたかもしれないんだぜ? 何か、俺に言いたいことは?」


もういつもの慶一の調子に戻っている。

俺がある程度冷静さを取り戻した事がわかったからだろう。


「感謝してるよ? 会長。……それに、君なら難なく出来るってこともわかってるしね?」

そう言って、思いっきり王子スマイルを作った。


「う~~わ、胡散臭せ~」

生徒会室を出ながら、呆れたような慶一のつぶやきを背中で聞いていた。




学校を出て、急いで駅へ向かう。

あのゲーセンへ行くには、いつもは使わない路線を使うが、頻繁に電車が来るので待つことなく乗れた。


電車の中でスマホを確認するが、美希からのメッセージはない。

既読も付いてないので、まだ見ていないのだろう。


ゲーセンで、あの男たちと楽しく遊んでいるのかと思うと、とたんに冷静ではいられなくなるので、あえて何も考えないように努めた。


怒りを纏ったまま美希の前に現れれば、怖がらせてしまうのは想像に難くない。

そうなれば、避けられて話も出来なくなるかもしれない。


とりあえず、美希を男どもから引き離すのが先決。

そして連れ帰る。

俺以外の男と、1秒でも長く一緒にいさせたくない。


目的の駅に着いて、ゲーセンに向かいながらもう一度位置を確認する。

地図はまだ同じ場所を示していた。


もうすぐゲーセンの入口に着く……という時、店の階段を降りてくる美希が目に入った!

とっさに横道にそれ、美希たちが階段を下まで降りるタイミングにあわせて、自然にそこを通りかかる。


「えっ!! ゆ……悠ちゃん!?」

「あれ? 美希ちゃん? なんだここに来てたんだ? 偶然だね、驚いたよ」


美希は相当びっくりしたのか、口を開けて俺を見ている。

「なん……で? まだ課外……」

「あぁ、こっちの大型書店に用事があったから、今日は美希ちゃんもいないし、授業出ないで帰ったんだ。 それより……」


美希の後ろに立って呆然とこっちを見ている、男2人をジッと見つめる。

隠しきれない冷気が笑顔の端から溢れ出している自覚はある。


「そっちの南高の男子は? 知り合い?」

美希が答えるより早く、隣にいた美希の友達が慌てて前に出る。


「あ、あのっ! 彼らは私の中学の同級生なんです! 昔から私と仲良くって、カフェで偶然会ったので、懐かしくて私が一緒にって誘ったんです! 美希ちゃんは気が進まなかったのに強引に付き合わせてしまっただけなので、美希ちゃんを責めないであげて下さい!」

一気にそう言うなり、その子は俺に頭を下げた。


「里奈ちゃん、大丈夫だよ! そんな頭下げたりしないで~! ね? 悠ちゃんはそんなこと気にしないでしょ?」


美希の目が「だって、彼女のフリしてるだけだもんね?」と言っている……気がする…………腹立たしい。

とりあえず、こんなところに長居は無用だ。


「君の言うことはわかったよ。ただ、僕はどういう理由にしろ、僕の目の届かないところで彼女が他の男といるのは見たくないんだ。だから……このまま美希ちゃんを連れて帰ってもいいよね?」


怒りを含んだ苛立ちを抑え、表面上は笑みを浮かべて彼女を見ると明らかに青ざめている。

おや? この子は俺の外面に騙されてはいないようだ。

笑顔の下の怒りを感じ取っている。……なかなか優秀だな。


「君、名前は?」

「山内……山内里奈です」

「……これからも、美希ちゃんのことよろしくね? 山内さん」

「は……はい!」


彼女は真っ赤になって俯いてしまい、それを見ていた後ろの男のうちの1人が、面白くなさそうに顔をしかめた。

なるほど……そういうこと、か。


「じゃあ、帰ろうか、美希ちゃん」

とびきりの王子スマイルで美希を見ると、「う……うん」と赤くなりつつ、納得いかないような顔で頷いた。







今回出てきたiPhoneの機能は、IDとパスワードがわからなければ使用できないので、通常は本人か家族のみが使うためのものです。

相手のiPhoneにアプリを入れる必要がないので他の物より手軽と言えますが、どんなに親しい人でも本人の許可は必ず取りましょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ