第12話
文化祭も無事終わって夏休みになった。
文化祭までは本当に忙しくて毎日の課題との両立が大変だったけど、なんとか終わったかと思ったら、もう夏休みだ。
夏休みとは言っても、進学校の例に漏れず東高も毎日課外で登校している。
1、2年生は午前中で終わる日が多いが、3年生は夕方までの課外に加え、土日も模試があったりして大変そう。
その上、みんな塾や予備校でさらに遅くまで勉強しているようだ。
ただし……この人はなんだか余裕?
勉強してる感じがほとんどしないんだけど?
この人とは、もちろん悠ちゃんのこと。
課外や模試には一応参加してるけど、それ以外塾や予備校に行ってる気配がない。
そんな中、彼女の「フリ」は相変わらず続いていて、悠ちゃんの隣にいることにはだいぶ慣れてきた。
不意打ちの甘い言葉や視線にはもちろんドキドキしてしまうけど、もう仕方ないって諦めの境地。
無意識にそういうことしちゃうっていうのが、王子様たる所以だものね。
1年の課外は午前中で終わることがほとんどだけど、なんだかんだ生徒会の雑用を頼まれ、結局悠ちゃんの課外が終わるまでいつも学校に残っている。
もうひとりの1年生康介くんは、部活には入っていないものの運動神経抜群らしく、色んな運動部でヘルプを頼まれ、掛け持ちで夏の大会に出るらしい。
で、結局雑用はほぼひとりで片付けることになる……。
まぁ、いいけど……。
でもたまには私も早く帰りたい……。
悠ちゃんはそんな感じで受験生にしてはのんびりして見えるから、うっかり忘れてたけど……。
この人、全国模試上位常連だったのよね……。
3年の1回目の全国模試の上位者が先月張り出され、100位までに入ったのが10名弱。
中でも悠ちゃんはぶっちぎりで、全国5位という成績だった……!
ヒトケタ……ですか?
もう、なんていうか、レベルが違う。
大体、いつ勉強してるんだろう。
短時間で吸収出来るってヤツ?
天才って本当にいるんだと実感する。
おまけに天は二物も三物も与えちゃうことがあるんだと。