コンテストなの。
グァグァグァ。
iPhoneのアラーム音を止める。
佐和子は多少寝ぼけながらも歯磨きを始めて夢から現実に覚める。
トーストを1枚かじって派手な化粧をし学校へ行く準備をした。好きなマーチンを履いて。
「おっす。」
「おっすー!」
「おすおす!」
「おはよぉ。」
音楽系専門学校のバンドメンバーと今日も顔を合わせる。
朝からの授業は眠気の塊だが、好きで入った業界だ。手を抜きたくはない。失敗して講師に指導される様を後からメンバーよりいじられる。
予習時間になるとスタジオに入って音鳴らしだ。
どの曲にするか迷っているメンバーをぼーっと眺める。
佐和子はベースが弾けさえすればいい。しかもこのメンバーで。自分の音楽ジャンルにさほどこだわりは無い。だって色んなジャンルをした方が練習になるもの。
ある女教授が入ってきて皆がピリつく。一礼をすると、テンションの高い女教授は独特の言い回しで鼓舞をする。
「ねぇねぇ佐和子さんたち。」
「ミュージシャンが一番上達する方法って何かわかる?」
「そう!こ、ん、て、す、と!」
えっ!と思った。コンテスト?私たちが?
「1ヶ月の間5曲を決めて、猛特訓なさい。」
「学園祭があるのよ!」
「ミュージシャンのたまご。」
「雛になるのよ!」
それを聞いて皆が目を少し強ばらせてしかしやる気を満ち溢れさせるのを感じた。佐和子も同じだった。このメンバーで初舞台を踏む。とてもやる気になる瞬間だ。
「さぁ曲を決めなきゃ!」
「POPソングがいいんじゃねえ?客も乗りやすいし。」
「俺ロックしか弾きたくない。」
そんな談議そのものが予行練習だった。
曲も決まり構成をメモ書きして合わせる。何度か合わせるうちに形になっていく。この感覚がたまらなく好きだ。
指の皮が少しむけた。
スラップを取り入れたため血豆ができる。
それでも構わない。
楽しくて、楽しくて仕方ないんだ。
帰宅した佐和子は派手な化粧を落とし乳液を塗りたくりベッドに入る。
「コンテスト、かぁ…。」
「ふふっ。夢の舞台。メジャーデビュー。なんちゃって。」
楽しみでなかなか寝付けなかった。遠足が待ち遠しい子供のような気分で実力を伸ばせるのはとても楽しいことだった。
さぁ寝よう。明日も大好きなメンバーと、大好きな事ができるのだから。
痛む両手首に湿布を貼って床につく。
その日見た夢はアリーナで華麗に演奏する佐和子自身だった。




