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BMP187  作者: ST
第三章『パンドラブレイカー』
90/336

ナックルウエポンを倒せ! (という議題で昼食会)

午後の種目に思いを馳せながら、豪勢な昼食タイムを楽しんでいると。


「あら、さすが、悠斗君チーム。今日私が見た中で、一番豪華なお昼ね」

聞き慣れないチーム名を使いながら声を掛けてきたのは、緋色先生。

……なんだけど。

「えーと、先生?」

「ん? 何、悠斗君?」

「先生が腕に持ってる……というより持たれているブレードウエポンは、一体何者ですか?」

「もちろん本物の城守さんよ。蓮にいとも言うわね」

緋色先生に左腕を組まれたまま、何とも言えない微妙な顔をしている城守さんについて、緋色先生が簡潔に説明してくる。


いや、城守さんの真贋ではなく、そういう状況になった理由が知りたいんですが。

あと、『蓮にい』って何?


「いえ、香との賭けに10年ほど前に負けていたことが、先日明るみに出まして。潔く負け分を支払っている最中です」

城守さんが代わりに説明してくるが。

「やっぱり、意味が分からないんですが」

「詳しい説明はできないんですよ、すみません。ただ、過去の約束で文書にも残ってないからといって油断するのは間違いだ、とだけ忠告しておきます。覚えている人は、本当に覚えていますから」

「そ、それは……、本当にためになる忠告ですね……」

小学生以前の記憶がない俺としては、まさしく他人事ではない。


「ぶ、ブレードウエポン……」

「本物見ちまったよ、おい……」

「想像していたヨリ、ずっと格好いいデス……」

峰と三村とエリカが初めて見るらしい『歴代最強』ブレードウエポンになにやら感動している。

感動の方が強くて、そのブレードウエポンとアイズオブエメラルドが腕を組んで立っている姿には違和感を感じないらしい。

が。

「緋色先生は、クリスタルランスリーダーの緋色瞳さんの妹ですからね。ブレードウエポンと接点があっても当然ですよ。私の聞いた話では、緋色先生がクリスタルランスに入る可能性もあったとか」

詳しいのは賢崎さん。BMP能力者の守護者を標榜するだけのことはあるな。


「お久しぶりですね。賢崎さん。とてもご立派になられました」

「城守さんこそ。前に会った時よりも、さらに力を増しているようです。どこまでも高みを目指すその姿勢には感心させられます」

「接近戦最強のナックルウエポンにそう言われると、恐縮ですね」

BMP管理局長と賢崎財閥次期後継者という間柄のせいか、どことなく他人行儀な挨拶をかわす城守さんと賢崎さん。

それはともかく?


「接近戦最強って。それ、城守さんより強いってことですか?」


言ってから、しまった、と思った。

これは、聞き様によっては、かなり失礼な質問ではないだろうか。

「そうですね。そういうことになろうかと思います」

しかし、城守さんは特に気にした様子も見せずに答えてくれた…………って、ちょっと待て!

「城守さんより強いんですか……!?」

「客観的に見れば。まぁ、私も実際闘うことになれば負けるつもりはありませんが、その時は気合とか根性とか運とか、少し正当ではない力とか、そういったものの力に頼るしかないでしょうね」

涼しい顔で答える城守さん。


「じゃあ、賢崎さんを倒すにはどうすればいいんですか?」


言ってから、またしまった、と思った。

これは、俺が賢崎さんを倒す気があるように聞こえてしまう(※今度は聞き様によらずに、そうとしか聞こえない)。

「澄空さん? ひょっとして、私のこと嫌いですか?」

敏感に反応する賢崎さん。

いや、言葉のあやです。そんなことないです。

という俺の言い訳もむなしく。


「澄空と賢崎さんの個人的な確執は知らんが、バトルとしては面白い内容だな」

「ウエポンテイマーVSナックルウエポンってところか。まあ、タイマンは厳しいだろうから、チーム悠斗VS……になるかな?」

「そういうことなら僕もお役に立てそうだね。僕は裏方の方が得意なんだ」

男の子は基本的にバトル好きなのだろう。

微妙な事情(※俺が保健医のミーシャ先生の『賢崎さんが敵に回るかもしれない』という不吉な予言のせいで若干ナーバスになっている)を知らない峰と三村と小野が、のってきた。

あと、チーム悠斗ってなんぞや。

「わ、私はトテモお役に立てそうにナイので、辞退しまスね」

真面目なエリカも、なんとか付いてくる。

「人数が多ければいいってものじゃない。撹乱も得意なナックルウエポンにはむしろ逆効果。それより、接近戦を避けることを考えた方がいい」

麗華さんまでのってくる。

俺が発端とはいえ、この会話はクラスメイトをボコろうとしているようにしか聞こえないことを、誰か気づいて欲しい。


「接近戦を避けるとなると、砲撃城砦ガンキャッスルか……?」

「無理だな。EOFで避けられる。それよりは範囲攻撃……レーヴァテインの方がいいだろうな。距離の取り方が難しいが」

「いっそのこと、建物の中に居る時に、外から建物ごと吹き飛ばすとかどうかな?」

男の子はやっぱりバトル好きだ。しかも、最後に小野がとんでもないことを言った。


「澄空さん……。やっぱり、私のこと嫌いですか?」

賢崎さんが悲しそうな眼で見てくる。

脳内でバックログを見て欲しい。最初の一言以外、俺はこの物騒な会話に一切関わっていない。

と、俺と賢崎さんの確執が本当に生じてしまいそうな状況に俺が焦っていると。


「面白いわね」

緋色先生までのって来た。


「本当に喧嘩をしようとしてるのなら止めるけど、シミュレーションとしては面白いわ」

「全くですね。私もこういう話は大好きです」

Sな緋色先生と、意外(でもないか)にバトル好きの城守さんも何やら楽しそうである。

「接近戦を避けるのは難しいでしょう。賢崎さんにEOFがある以上、接近戦ができない状態で闘いになることはないと断言できますね」

「接近戦じゃ、大出力系BMP能力も使いにくいし、悠斗君の戦闘技術じゃ難しいわね。何か弱点とかないかな?」

と、緋色先生が聞いたのは、賢崎さん。

当事者に聞くか、フツー。


さすがに賢崎さんも唖然としていたが。

驚いたことに、仕方ありませんね、と、微笑を浮かべた。


「EOFが接近戦で強いのは、『近い未来』のことであればあるほど『予測』の精度が増すからです」

「精度が増す?」

俺達の中で一番強さに貪欲な峰が反応する。

「はい。例えば、今日の体育祭全体の勝敗となると、『一つの結果』には絞れません。予想できる全ての展開を列挙し、その中で確率……『確度』による順位づけをして『予測』します」

流暢に語る。賢崎さんは惜しげもなく自分のBMP能力の詳細を披露し始めた。

「単純な勝敗はもちろん、点数差や途中の展開、ハプニングの有無など。感覚的なものでもあるので全てを詳細に説明するのは困難なのですが、間違いなく『全ての可能性』を想起できています。それがEOF……アイズオブフォアサイトです」

「まるデ、『ラプラスの悪魔』デスね」

「そう遠くない。ナックルウエポンの二つ名に『ラプラスの魔女』というのがある」

ぽろっと漏らしたエリカの感想に、麗華さんが解説を入れる。

ラプラス……。確か、過去の事象を全て知っていれば未来を予測することができるとか、そういった感じの話だったか?


「これが1分先、1秒先、あるいはコンマ1秒先と。近くなるほど想起される展開の数が減っていきます。展開を漏らすことは絶対にないので、想起される展開の数が1つにまで絞り込めれば、それは『予測』を超えて『予知』になります」


しん、としてしまった。

チート気味なのは分かっていたが、さすがにこれは反則ではないだろうか。


「ただ、想起される展開の数を絞り込むためには多くの情報が必要です。接近戦で最も大きな情報源は分かりますか、峰さん?」

「『相手の眼』か?」

「その通りです」

こういうことは俺達の中では峰が一番熱心だ。どうやら正解らしい。

「接近戦の最中、私の視線は相手の眼に集中します。それ自体は特に珍しいことでもないのですが、この状態、ある種のBMP能力者にとっては、絶好のチャンスです」

「分かった!」

いきなり、手(※城守さんと組んでない方の手)を上げる緋色先生。

「瞳を媒介とする支配系のBMP能力ね!」

「正解です」

ぱちぱちと拍手をする賢崎さん。どっちが先生だか分からない。

いや、それより、いいのか? こんな簡単に弱点ばらして?

支配系BMP能力なら、俺も一つ使えるんだぞ?


「じゃあ、ひょっとして私、賢崎さんに勝てるってこと!? 凄いじゃない。少しは見直した? 蓮にい」

当然、アイズオブエメラルドを使える緋色先生も調子に乗る。というか、城守さんと居る時の緋色先生は本当にこどもっぽい。これならこども先生でもいいのではないだろうか。

「騙されてはいけませんよ、香。あと、悠斗君。支配系BMP能力は隙が大きい。おまけに賢崎さんには、EOFの情報に基づいて行動を最適化する『自律機動ブースト』があるんです。発動する前に、眼を抉られますよ」

「!!」

慌てて眼帯に覆われた右眼を抑える緋色先生(※ちなみに俺も抑えた)。


「抉りません」

賢崎さんが軽く拗ねた。

「でも、支配系BMP能力が通じないのは間違いないと思う」

麗華さんが応じる。

「まあ、そうですね。そもそもEOFがある以上、私にとって都合の悪いシチュエーションにはまずなりません。最悪、逃げればいいんですから」

若干誇らしげに語る賢崎さん。

期待してはなかったけど、やっぱりこれはどうしようもなさそうだ。

……ミーシャ保健医さんの予言が外れることを願うしかないな。

というか、それが一番だ。

会ってから、まだ時間は経ってないけど、賢崎さんを嫌う要素はこれまで全くなかった。

まあ本来雲の上の人だけど、せめて同じクラスにいる間は仲良くしたい。


…………。

……………………したいんだけど。



「じゃあ、EOF自体を破る方法はないのかな?」



俺は、どんな声音を使ったんだろうか?

麗華さんも含め、みんなが俺のことを驚いた顔で見ていた。


賢崎さんを除いて。


賢崎さんだけは、なぜか少し嬉しそうな顔をしていた。


「なくはないですよ、澄空さん」

「え?」

賢崎さんのセリフに疑問符を返す俺。

「EOFは、『主観』に弱い。です」

「え?」

なんのこっちゃ。


「基本、EOFの『予測』は自動的です。そこに本人の思考や感情はない方がいい。しかし、そこは人間です。『こうなるんじゃないかな』という思いこみがあれば、EOFの機能に歪みが生じます」

「歪みが……?」

「具体的には、『確度』の付け間違い。展開が一つに絞れない時は、確度の高いものから優先的に対処しますからね。これはある意味致命的です」

「じゃ、じゃあ、簡単に言うと、賢崎さんに『勘違い』させれば、EOFを破れる?」

「察しがいいですね。そういうことです。ただ、私はこの通りひねくれ者ですから。裏をかくのは難しいかも知れませんよ?」

と、にっこり笑う。

なんだろう? 今まで見た中で、一番自然な笑顔に見えた。



「私に勝ちたいのなら、私を驚かせてみせてくださいね。BMPヴァンガード?」

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