二人三脚の伊達男
◇◆
午前最終種目:二人三脚。
条件:他者の妨害・ショートカット不可。ペアは男女とは限らない。
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☆☆☆☆☆☆☆
「…………」
「? どうした、澄空」
「いや、何か違和感が……」
午前の最終種目の二人三脚。
その第4レースの準備中。
峰が自分の左足と俺の右足を結んでくれている。
……違和感だ。
「な?」
「いや。『な?』と言われても。何がおかしいというんだ?」
真面目に返された。
いや、しかし。
「俺と三村なら分かるぞ? どっちも高速移動系のBMP能力使えるし、仕方がないと思う。でも、峰は遠距離攻撃系だろ?」
「まあ、それはそうだが。遠距離攻撃とはいえ、移動を疎かにしていい道理はない。俺に、移動砲台的な闘い方も身につけろ、という意図なのかもしれない」
「そうかなぁ……」
峰は納得しているが、俺はいまいちすっきりしない。
だいたい。
「男同士っていうのも変じゃないか? 峰だって、女の子と組めた方が嬉しいだろ?」
他のペアを見ると、男女のペアもある。まあ、男×男、女×女のペアもあるが。
なんで、こんな嫌がらせするんだろう?
「俺は全く気にしないが。澄空が嫌だというなら、悪かった」
「い、いや……嫌という訳じゃないんだ」
こう素直に謝られると、自分が三村になったような気がしてくる。
まあ、考えようによってはこれでいいのかもしれない。
人前で女の子と腰を密着させて走るなんて、俺には難度が高過ぎる。
「で、作戦はどうする? 超加速が使えると便利なんだが」
「いや、あれは……」
人を抱えて使うのは無理だ。
「派生技の猪突猛進で、ゴール地点に相方を叩きつけるつもりでやればできるかも知れないけど……」
「……やめよう。二宮氏のダメージ無効化結界は信用しているが、この競技の趣旨にあまりにも反する」
だよなぁ。
普通にやることにして、スタート地点に向かった。
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◇◆
※競技途中だけど『新月学園体育祭ダメージ無効化結界展開責任者二宮修一の報告書4:二人三脚について』
ふざけるなよ……!
どうして、俺の峰君が澄空悠斗と二人三脚をっ……!
女生徒も高速移動系BMP能力者も、いくらでもいるじゃないか!
まさか、俺にたいするあてつけかっっ……!
…………。
……………………。
……落ち着こう。
他にも男同士のペアは居るし、参加者全員が高速移動系BMP能力者という訳じゃない。
たまたまだ。
そう、たまたま……。
たまたま……峰君と密着して走る権利を、あの男は得たのか……!
澄空悠斗……、やはり恐るべし……!
どうやら、彼に対する認識を変えねばならないようだ。
っと、しまった競技内容の報告をしなければ。
あー。やはり、人一人抱えて高速移動するのは難しいらしい。終わり。
◇◆
◇◆
1-C応援席にて。
「…………」
「……どうしましタ? 三村さん」
澄空悠斗・峰達哉組が4位という普通の成績でフィニッシュした後。
三村は、しきりに校舎の上を気にしていた。
「なんというか、あそこの二宮さんから、とてつもない負のオーラを感じるんだ」
「? 二宮さん? BMP結界能力者の方デスよね。デモ……」
と、エリカも校舎屋上に陣取っている二宮氏の方を見て。
「……良く分かりマスね?」
凄く遠い。
表情なんか分かる距離ではない。
「表情じゃなくて……。悲しいことに、ああいうオーラに敏感なんだよな、俺」
「??」
きょとんとするエリカに(※自分も悲しくなるので)説明はせず、もう一度二人三脚に目を戻す。
「さっき澄空のやつ、超加速使わなかったよな?」
「あ、ハイ。デスね。やっぱり、人を抱えて加速するノハ難しいんデショウか?」
「できないことはないけど……。単体機動と複数者同時機動は、基本的には別物だからな」
三村なら、他人を『抱えて』高速移動することはできるだろうが、実戦で使えるかというと、正直微妙ではある。
が。
「超加速は、突進力だけはなかなかのもんなんだよな」
この間の籠城戦で確信した。
最高速だけは、高速移動系最強の電速にも負けていなかったのだ。
その長所をうまくいかせれば……。
「……やってみるか」
「ハイ?」
唐突な三村のセリフに、エリカが疑問の声を挙げる。
「新技の研究だよ。良かったら、手伝ってくれないか?」
「エ……、あ、ハイ。あ、デモ、もうすぐお昼デスよ。みんなでご飯食べないんデスか?」
「とりあえず、それまでの間だ」
「あ、ナラ、いいデスよ」
あっさりとOKする。エリカ。
ほんまにええ子や。
☆☆☆☆☆☆☆
◇◆◇◆◇◆◇
昼休み。
体育祭当日の昼休み。
それは、1年に1回しかない特別な昼休みである。
いままで描写がなかったが、今日は快晴。
絶好の昼休み日和である。
俺、三村、峰、小野、麗華さん、賢崎さん、エリカの七人で輪を作り。
その中央にでかいオードブルの皿が置かれている。
その周りには、まるで衛星のように、分割された5つの重箱。
あとなんとなく、デコレーションのように20個ほどコンビニおにぎりを置いてみた。
オードブルを注文していた賢崎さんの手際がいいのは当然として。
驚いたのが、重箱だ。
なんと、エリカが作ってきたらしい。
賢崎さんが発注したハイグレードオードブルにも見劣りしないほど、鮮やかで美味しそうな料理が詰め込まれている。
「エリカ、料理できたんだな……」
「出来たっテほどデハ……。一人暮らしシテれば、このくらいハ普通デス♪」
二人暮らししているのに普通にできない俺の問いに、嬉しそうに返すエリカ。
『紅組のくせに、なんでここにいるんだ』とツッコムような無粋な者は、もちろんいない。
「俺ら学食行くつもりだったから、何にも用意してないけど。良かったのか?」
という三村の言葉は、峰と小野も気になるようだ。
「大丈夫ですよ。この量ですから。男性陣は食べるのがお仕事、ということで」
「女性だけど、気がきかなくてごめん……」
悪気があった訳ではないのだろうが、賢崎さんの言葉に麗華さんが軽くへこんでいる。
そして、俺は男性だがコンビニおにぎりを用意したので、食べるだけが仕事ではない。……と思う。
では。
「「いただきます」」
※喰うのが忙しいので、しばらくト書き風で。
三:「うわ、この卵焼きうま! エリカ、マジすげえ」
小:「20年も生きていない身で……。大したものだね」
エ:「そうデスか? そう言っテもらえるト、嬉しいデス」
俺:「うまうま」はむはむ
峰:「このオードブルのから揚げも……凄いな。いったい、どこのだ?」
賢:「うちの子会社ですが。特注です。しかし、少し安直でしたか。手料理の方が良かったかもしれませんね」
麗:「どっちも、おいしい」
エ:「そうイエば、賢崎さん。午前中、競技に出てませんデシタね?」
賢:「午前中どころか。私が出るのは借り物競走だけです」
峰:「それは、酷いな」
麗:「私だって、アームレスリングだけだった」
賢:「しかも、忘れてましたし?」
麗:「う」
エ:「ま、マァマァ……」
俺:「うまうま」がつがつ
三:「しかし、剣も賢崎さんも出ないってことは、『騎士戦』は、天竜院先輩で決まりか?」
峰:「だろうな。剣や賢崎さんの闘いを楽しみにしていたんだが、残念だ」
小:「『騎士戦』は女性限定だったっけ?」
賢:「そうですね。逆に男性限定の『騎馬戦』は、男性陣全員出るんですよね?」
三:「ああ! 最終種目だしな。我が1-Cチート部隊の力、見せてやるぜ」
峰:「その前に、棒倒しもあるぞ」
俺:「うまうま」ばくばく
エ:「ア。棒倒しハ、私も出マス♪」
俺:「うまうま」はっ!
いかん、少しご飯に夢中になり過ぎた。
ここからは通常描写で。