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BMP187  作者: ST
第三章『パンドラブレイカー』
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新月学園体育祭開幕2~安全管理者はテライケメン~

さて、ここで新月学園体育祭のルールを説明しておこう。

基本は紅白に分かれての総合点数による対決。

種目ごとに点数が設定されていて、お互いの点数がリアルタイムで校舎の上の方に設置された電光ボードに表示されていく。

また、ダメージ無効化結界により、怪我対策は万全。麗華さんクラスの大出力系BMP能力でもなければ、まず身体的な怪我をすることはない(※精神的には保証対象外)。

あと、観客席はあるが、生徒の父兄以外は全て招待客である。客のグレードを反映してか、祭りのマス席みたいになっている。

高校の体育祭にしては妙にお金をかけているように見えるだろうが、まあ、実際うちの高校は金があるし。


そんなことより、問題は紅白の分け方である。


なんと、紅白は、学年ごとにクラス単位で半々に分けていくのだ。

ということは、当然、1-Cは全員同じ組ということになる。

結果、1-Cの属する白組は、剣麗華・賢崎藍華・小野倉太・峰達哉(※ついでに俺・澄空悠斗と三村宗一も)というとんでもない構成になっている。

バトルロイヤルであれば、10分くらいで勝負がつきそうなチート構成ではあるが、今日は体育祭だ。まあ、大丈夫だろう。

あとは、少しでも多くのKTI構成員が白組であることを祈るばかりだ。


と。

気になる物体を見つけた。


「なあ、三村?」

「ん? なんだ、澄空?」

「あの、校舎の屋上のメチャクチャ目立つ所でスーツをビシッと決めて立ってるイケメンは誰だ?」

指差しながら言う。

この距離でイケメンかどうか分かるほど視力は良くないのだが、男から立ち上るヴィジュアル系臭が半端じゃない。

「二宮クーン!」とか「シュウ様ー!」とか聞こえてくるし。


「はぁ……。澄空ってほんとに、世間に疎いんだな」

「ってことは、やっぱりあれ、有名人なのか?」

「二宮修一。国内でも最高って言われてるBMP結界能力者だ。が、見ての通り外見の方で有名だな」

隣に並んで、校舎の屋上を見上げながら答える三村。

「BMP結界能力……。ああ、ダメージ無効化結界か。あの人、一人で張ってるのか?」

「んな訳あるか。他のBMP結界能力者も、端の方に紛れてスタンバイしてる。今年は凄い厳重な結界が張られるぞ。なんでも、澄空と剣を出場させるかさせないかを材料に、新月学園とBMP管理局で熾烈な経費の交渉があったとかなかったとか」

「三村、本当にそういうの詳しいな」

思わず感心する。

三村は弱ナンパな外見にもかかわらず、頭がいいのだ。


まあ、それはともかく。

「今日はよろしく。二宮さん」

俺は、二宮修一さんの方向に向かって一礼した。



そして、新月学園体育祭が始まる。



☆☆☆☆☆☆☆



◇◆※『新月学園体育祭ダメージ無効化結界展開責任者二宮修一の報告書1:200メートル走について』


種目:200メートル走

条件:他者の妨害・ショートカット不可。


○主な結果

第3レース出走者・澄空悠斗:コースアウトにより失格。


◇◆



という訳で、安全管理者の責務として、この俺、二宮修一が、新月学園体育祭の報告書を作成することになった。

書類仕事は苦手だが、まあこれも任務だ。


で、早速だが、あれが本当に澄空悠斗なのか?

複写元のBMP能力の本質を全く理解していない。

使いこなすとかいう以前の問題だ。

あれが187ものBMPをもって、どんな能力でも複写するというのだから、恐ろしい話だ。

美しくない。

あれなら、一緒に200メートルに出走していた、ツレの方がいいかもしれないな。



☆☆☆☆☆☆☆



「ゆ、悠斗さん……。元気、出してくだサイ」

ズーンという感じで落ち込んでいる俺を、さっきからエリカ(※実は紅組)が慰めてくれていた。


もともとプライドが高くなく、失敗も多い俺のこと。

金髪碧眼グラマラスで、しかも性格まで良い美少女に慰められれば、すぐに気が晴れそうなものだが、今回ばかりは簡単ではなかった。

だってそうだろう?


俺は今までの人生で、運動会とか体育祭とかの短距離走でコースアウトして客席に突っ込むような男は見たことがなかった。


「BMP能力を使った体育祭ハ初めてだったんデスし、無理ないデスよ」

「俺だけが初めてって訳でもないだろ……」

他の皆は昔からBMP能力覚醒していたかもしれないが、BMP能力使用解禁の体育祭が、この学園以外にそうそうあるとも思えない。


超加速システムアクセルが曲がれないのは知ってたのに……」

「仕方ないさ、澄空」

エリカとは反対側。

俺と同じく200メートル走に出場し、ラストの直線に入ってからの驚異的な超加速システムアクセルで1位に輝いた三村が言う。


「誰にだってうっかりはあるさ」

「その危険性に気づいてたのなら、出走前に忠告くらいしてくれるとありがたかった……」

キラキラした笑顔の三村に、つい愚痴を言う。


俊足ライトステップが出て来ないからチャンスだと思って油断したな。すまん、澄空」

そして、全然責任のない峰が謝ってくる。ほんとにまじめな男だ。


と。


「それより、いつまでも落ち込んでていいの? そろそろ、次の出番じゃないかな?」

小野に言われる。


ああ、そうだった。

急いで行かないと。



◇◆


種目:アームレスリング

条件:直接攻撃不可。というか間接攻撃も不可。


◇◆


運動場の真ん中に置かれた机。

そこから、二方向に人の列ができている。

片方が紅組のアームレスリング参加者の列。

もう片方が白組の列。


要は、勝ち抜き戦だ。

負けた者から脱落していき、先に列がなくなった方が負けというシンプルなルール。

腕相撲にしては珍しいルールだと思うが、そもそも体育祭に腕相撲という時点で十分に珍しいので、あんまり気にならない。


と。


「悠斗さん、大丈夫デスか?」

金髪のハーフさんが話しかけてくる。

どうも心配を掛け過ぎたらしい。エリカは、白組の列の最後尾に並んでいる俺に付いて来てくれていた。

パワー系が殺気と闘気を充満させている中に、紅組所属で、しかも金髪の美少女。

明らかに目立ちまくっているが、本人は純粋に俺のことを心配してくれているらしい。


ほんまええ子や。


「ああ。もう、大丈夫大丈夫」

プライドが高くないうえに思考と感情が長続きしない俺は、案外立ち直りも早い。

今はもう、このアームレスリングに集中していた。


「良かったデス。で、次はどんなBMP能力で挑むんデスか?」

「そりゃ、決まって…………」

……ないな。

さっきの200メートル走は全く迷わなかったが、実は俺はパワー系のBMP能力を持っていない。

怪力無双ドラゴンバスターが使えれば、全く問題なかったのだが……。


「やっぱり、砲撃城砦ガンキャッスルじゃナイでしょうカ」

「かなぁ」

一瞬、ドキッとした人がいるといけないので言っておくが、別に対戦相手を砲撃して穴だらけにしようという訳ではない。

峰の砲撃城砦ガンキャッスルは、城砦と付くだけあって、発動中は一時的に防御力が上昇するのだ。

パワーもちょっとは上がる。

実に心もとないが、正攻法で腕相撲に使えそうなBMP能力が他にない。


繰り返すが、怪力無双ドラゴンバスターが使えれば……。


「というか、俺までに終わりそうだな」

「そういえバ、そうデスね」

俺がラストを飾るという不文律でもあるのか、後から来た人が次々俺の前に並んでいく。

レジとかでやられるといじめにしか見えない風景だが、もちろんそうではない。

そして、全体的に白組が優勢だった。


こちらは残り10人ほど。

向こうは……良く見えないが、たぶんあと一人か二人。

これは、勝負あったかな?


とか思っていると、白組の先頭が負けた。

お、やるじゃん。

とか思っていると、次も負けた。

さすがラストは違う。

とか思っていると、その次も負けた。


「おいおい……」


こちらが残り五人くらいになったところで、ようやく紅組の対戦者が見えた。残り一人だ。

そして、その一人は……。


「KTI……」

「デスね」

思わず呻く、俺達。


胸の部分に金色の【Kバッジ】。

挑むような視線が印象的な、小柄な女の子だった。

もちろん、あのサイズのナチュラルパワーで、アームレスリングに呼ばれるような猛者どもを連破できるはずもない。

BMP能力者だ。


集積筋力ディレイドマッスル。河合渚先輩デスね」

「純粋なパワータイプか」

見た目とのギャップが凄まじいが間違いない。


ギャラリーと俺の見守る中、俺より頭一つは大きい男子生徒の腕を開始1秒で机に叩きつけた。

めちゃ痛そうである。


「噂には聞いていまシタが、さすがKTI四天王デス。実力ハ、本物デスね」

「ああ」

KTI四天王という単語にはいまいち馴染めないが、とりあえず実力は折り紙つきだ。



『キャー! さすが、渚先輩ー! まさしく、混沌の筋肉地獄に舞い降りた、筋力の天使様ー!』

とか言っている、仲間っぽい子たち(※しっかりと【Kバッジ】をしてる)の応援は意味が分からないが。


と、ここで気づく。


「あれを複写すれば、いいんじゃないか……?」

気づくも何も、見た時点でもう複写できているが。

あとは使うかどうかだ。

ただ、どう考えても、砲撃城砦ガンキャッスルよりは、アームレスリング向きである。

あとは……。


「エリカ」

「ハイ?」

「一番安いスチール缶入り飲料を買って来てくれないか?」

「? どれモ、同じ値段だと思いマスけど?」

「じゃあ、缶コーヒーでいい。ただし、スチール缶で」

「分かりましタ!」

と、唐突な流れにも関わらず、エリカは喜んで缶コーヒーを買いに行ってくれた。


マジで、ええ子や。

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