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BMP187  作者: ST
第三章『パンドラブレイカー』
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情報戦?

「……あれ?」

間抜けな声を挙げる俺。


気がつけば放課後だった。


衝撃的な授業を受けて悩んでいたせい(※ということにしたい)で、どうも眠ってしまったらしい。

ただでさえ成績良くないのに、こんなことじゃまずいな。


「まあいいか」

とりあえず、今日こそ麗華さんの放課後の特訓とやらを覗いてから、早めに帰ってさっさと寝よう。

と、自分の席から立ち上がると。


「うわっ!」

思わず声を挙げてしまった。


放課後の教室に残っていたのは俺だけではなかった。

教室の真ん中に、わざわざ『ロ』の字型に机が並べられている。

そこに、なんだか難しい顔をして座っているのは、6人の男女。

内訳は、三村・峰・小野・賢崎さん・エリカ・委員長だ。


「…………み、三村?」

「起きたか、澄空」

起きたけど……、いったい何事ですか?


「『第2回KTI対策会議』です」

何を当たり前のことを、といった顔で答えてくるのは委員長。

しかもマスコミヴァージョンである(※一応解説しておくと、マスコミヴァージョンか非マスコミヴァージョンかは、眼鏡と三つ編みの有無で分かる)。


「KTI対策会議って……。みんなに話すのは、もう少し情報が集まってからって言ってなかったか?」

という俺の疑問に。

「俺も、そのつもりだったんだがな……」

と、珍しく苦悩の表情を浮かべる三村。


一体、何があったのか?

俺は、聞くことにした。


◇◆


~情報整理~

証言1:賢崎藍華

「それは、今朝のことでした。彼……澄空さんが、登校中に『駄目だ! いくらダメージを無効化できるといっても、身体を真っ二つにされたり、地獄の業火で焼きつくされたりするのが青少年の健全な育成に資する訳がない!』と叫んでいたんです」

証言2:峰達哉

「1限目の休み時間だ。澄空が突然『峰の砲撃城砦ガンキャッスルって、人間に当たったら、どれくらいの威力なんだ?』と聞いてきたんだ」

証言3:本郷エリカ

「2限目の休み時間だったと思いマス。悠斗さんが『なぁ、エリカ。麗華さんみたいな天才デモ、やっぱり内申書とかって大事なのカナ? 体育祭サボった方がいいヨ、とか言ったら怒るだろうカ』ト、なんダカ、思いつめた様子で聞いてきましタ」

証言4:小野倉太

「昼休みの学食でのことだよ。ミーシャ……保健医の先生に『ねぇ、ソータ。あそこでささみチーズフライを食べながら、体育祭まずいよな体育祭まずいよな、と連呼しているウエポンテイマー、あからさまに挙動不審よ。ちゃんと面倒見なさい』と怒られたよ」

~真相~

助手:三村宗一

「ということで、四人がほぼ同時に、俺に相談に来たんだ」

探偵役:澄空悠斗

「うん、俺が悪いね」



「…………」

「…………」

「…………」

「……すまん、三村、委員長。自分がそこまで挙動不審だったとは気付かなかった」

俺は素直に謝った。

午前中は挙動不審で、午後は爆睡とは……。今日の俺は、縦横無尽である。


まあ、それはともかく。


「皆が力を貸してくれるのは嬉しいけど、今、どんな話をしてたんだ?」

実は、あんまり議論している雰囲気を感じなかったんだが?


と、三村が『ロ』の字の中の空間にぽつりと置かれた机を指差す。

その上には、携帯電話が置かれていた。


「そろそろ、KTIの会議が始まる頃らしい」

組んだ両手の上に顎を載せながら三村が言う。

「『彼女』がうまくやってくれれば、一気に情報が集まるわ」

ニヤリとする新月学園新聞部員。


って、君ら、盗聴する気ですか!?

と、俺が言おうとした時。



真ん中に置かれた携帯電話から、声が聞こえてきた。


◇◆


~KTI会議『冒頭部分』~



「えーと。みんな。揃って……ないわね」

「真行寺さんはバイトです」

「またー?」

「あの子、KTI四天王の自覚あるのかしら?」

「まあ、いいわ。体育祭当日も、大きな仕事があるから行けない、とか言ってたし」

「ったく、ガチで剣麗華とやれそうなのは、あの子くらいなのに……」

「いや、いくらなんでも、それは無理」


◇◆


「うーん……」

声だけだと意外に聞き取りにくいな。

会議を仕切っているのは、二雲先輩だと思うんだけど。

選抜クラスの授業くらいでしか会ってないから、いまいち自信がない。


「真行寺は出ないのか……」

「少し安心だな」

と頷き合う峰と三村。


それはともかく。


「なぁ、三村。これっていったい誰が潜入してるんだ?」

「後藤さんだ」

「へ? 後藤さんって、クラスメイトの?」

そして、俺の前の席に座ってたけど、小野が来て席をずらされた、あの後藤さん? なんで?


「後藤さんは、もともとKTIだ」

「は?」

大真面目な顔で言う三村に疑問符で答える俺。

「彼女は私達に協力してくれてはいるけど、KTIの魂を忘れた訳じゃないわ。まさに組織への忠誠と友情の狭間で揺れ動く、悲劇の女スパイという訳ね」

やっぱり大真面目な顔で続ける委員長(※ただし、マスコミヴァージョン)。



この人たちは、どこまで本気なんだろう?


◇◆


~KTI会議『対象選定』~



「で、分析班。結論は出たの?」

「はい、リーダー。まあ、大方予想通りだと思いますが……」

「駄目だったのね」

「種目によっては勝ち目はあるのですが……。新月学園の体育祭のシステムからして、彼女の能力では、棒倒しか騎士戦以外の種目に出る可能性は極めて低いと思われます」

「というか、棒倒しと騎士戦に、あの子出すつもりなの? 学園は? 死人出るわよ?」

「櫃元の情報では、一つも出ない可能性もあるらしいわ」

「じゃあ、そもそも、話にならないじゃない。どうする、リーダー? 賢崎藍華の方にする?」

「彼女は、どうも、お客様って感じがするのよね。新月学園に長居するとは思えないわ。リハビリだか、澄空悠斗のスカウトだかが終われば、辞めるんじゃないかしら?」

「KTI第7則ね。『身近な美少女を優先的に標的とすべし』。賛成よ、リーダー」


◇◆


「とても嫌な規則だな……」

と、とても正直な感想を述べる俺。


「でモ、賢崎さんが狙われないのハ、いいことだと思いマスよ」

とてもいい子のエリカは、好意的に解釈している。

まあ、俺もいいことだとは思う。

麗華さんが手加減下手だとしたら、賢崎さんって、怒ったら、あえて手加減しないタイプのような気がするんだよな。


と、ちょっと失礼なことを考えていると。


「また、失礼なことを考えてますね……」

賢崎さんがむくれた。

エスパーか、この人?


◇◆


~KTI会議『方法模索』~



「じゃあ、どうするの? 本郷エリカにしとく?」

「KTI第5則。『どれだけ強大だとしても、常に最強の美少女を狙うべし』。例年であれば、文句なしにあの金髪が標的だけどね。今年は剣麗華一択よ」

「そんなこと言ったって、出てこないんじゃどうにもならないでしょ! KTI第1則! 『敵がいかに卑劣な美少女だとしても、正々堂々を貫くべし』! 闇討ちとか論外よ!」

「仮に出たとしても、棒倒しや騎士戦じゃ、お話にならないわ。あの子、一人でBランク幻影獣を倒すような化け物なのよ」


◇◆


「うーん……」

なんだか、良い方向に話が向かっている気がする。

このまま諦めてくれれば……。


と、楽観的に考えていると。


「それはどうでしょうか?」

賢崎さんに冷笑された。

占い師か、この人?

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