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BMP187  作者: ST
第二章『ウエポンテイマー』
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譲れない大仕事


『7月24日18時21分・管制室』


「やったー!」

管制室オペレータ・志藤美琴(※22歳独身。でも、そろそろ彼氏は欲しい。どちらかと言えば年上派だけど、怖い人は苦手。局長みたいにパーフェクト過ぎる人も、プライベートで付き合うにはどうかな? というか、悠斗君かなりいんじゃね)は、飛び上がって喜んだ。


「やった、やった! 悠斗君がやったー!」

もちろん嬉しいのは分かるがなんで君がそこまで喜ぶんだ、的な視線を同僚オペレータ達からもらいながらも、志藤ははしゃいでいた。

嬉しいのだ。

まるで自分があのガルア・テトラを倒したかのように、いや、それ以上に嬉しかった。

局長が、普段から澄空悠斗の話を良くする理由も分かる。

彼が英雄なのかどうかはまだ分からない。

でも、それ以上に特別だった。


「志藤さん。嬉しいのは分かるけど、まだ闘いは終わってないわよ」

「! そ、そうでした」

オールドミスに見えるけど、優しい旦那さんの居る主任オペレータに注意されて、我に返る。

そう、まだ終わってない。

幻影獣軍団はまだ残ってるし、あと二人のAランク幻影獣も気にかかる。


それに何より。

Cブロックで倒れたまま、身動き一つしない剣麗華が気にかかる。


志藤美琴は、受話器を取り、上条研究所の電話番号をコールした。


◇◆


『7月24日18時24分・A』



「やった……」

ほんとにやってしまった。

なんだか頭がカーッとして良く覚えていないが、俺があのAランク幻影獣を倒したのは間違いない。

みんなに『褒めて褒めて!』と言って回りたいところだが、まだ一番大事な仕事が残っている。


麗華さんを助ける。絶対に!


でも、その前に。

「どうやって降りよう……」

思わず呟く。

今現在、俺は半壊したモニター群の一つにしがみついていた。

Aブロック自体の高さは20メートルほどだが、モニター群は10メートルくらいのところに設置されている。

飛び降りても死ぬことはないかもしれないが、今は骨折なんかしてる暇はない。

とはいえ、Aブロックの壁面はツルツルで取っ掛かりもないので、這って降りることもできない。

え? ここまで来れたんだから、逆に超加速システムアクセルで降りればいいんじゃないかって?

あの技はブレーキが利かないんだ。さっきは、ガルアの身体をクッション代わりにしたけど、今度は自然落下プラス超加速システムアクセルで地面に激突して、スプラッタなことになる可能性大だ。おのれ、三村め。


「でも、迷っている暇もないよな……」

俺がしがみついているモニターにはCブロックの映像が映し出されている。つまり麗華さんが映っている。

うつ伏せに倒れたまま動く気配が全くない。

もう管制室が助けを呼んでくれているとは思うし、俺が行っても何もできないとは思うが……。


行かない訳にはいかないだろ!


「えーい! 男は度胸!」

気合一閃。

モニターを蹴って飛び立とうとして。

「澄空!」

誰かの声が聞こえた。


「三村? それに、峰とエリカ?」

Aブロックの入り口(※そういえば、いつの間にか復活してるな)に現れたのは、俺のクラスメイト達(※エリカは違うが)だった。

大きな怪我はないようだが、戦闘の跡が見える。まさか、闘ってたのか?

「ちょっと待て、澄空! 自慢じゃないが、超加速システムアクセルでそこから飛び降りたら、間違いなく大怪我するぞ!」

ほんとに自慢じゃないことを大声で忠告してくれる三村。

大丈夫だ。普通に飛び降りるつもりだから。


「普通に飛び降りても怪我するぞ! ちょっと待ってろ!」

と告げて、エリカになにやら話しかける三村。

まさか、クッションとか持ってくるつもりじゃないだろうな?

麗華さんのことが心配でそんな暇はないし、麗華さんのことがなくても、俺の情けない握力がそろそろ限界だぞ。

と。


豪華絢爛ロイヤルエッジ!」

良く響く澄み切った声が、Aブロックを満たす。

瞬間、空間に出現する(※ちょっとだけ)不可視の刃。

しかし。

「なぜ、この状況で、豪華絢爛ロイヤルエッジ……?」

呟いてみる。

しかも、闘いの疲れのせいなのか、隠蔽率も鋭さも悪い。いつもより遥かに悪い。

が。

超加速システムアクセル

三村の姿が消える。

次の瞬間、少し高いところに出現する。

そして、また上へ。

「ま、まさか……」

豪華絢爛ロイヤルエッジを足場にして……!

しかも、極短距離に絞っているせいなのか、ブレーキが利いている?

まあ、利いてなかったら、三村の身体がサックリだけど!


何度か、そんな移動を繰り返して。

「ま、こんなもんか」

麗華さんの映ったモニターにしがみつく俺のすぐ隣。

不可視の刃を足場にして、三村が空中に立っていた。

そして、『さあ俺の胸に飛び込んで来い』とばかりに、腕を広げている。

三村の兄貴モード全開だ! でも、若干飛び込みたくないぞ!

とばかりも言ってられないので、モニターを蹴ってジャンプする。

「おっとと」

三村の腕に(※不本意ながらも)収まりながら、豪華絢爛ロイヤルエッジの足場に立つ。

が。

「わわわわわわ!」

バランスを崩す。

こんなツルツル滑る、できそこないのラグビーボールみたいな物体の上に立ってられるか!

「ほら、しっかりしろ。澄空」

が、三村は涼しい顔で立っている。

「さ、行くぞ。超加速システムアクセル

そして、俺の肩を抱いたまま、登って来た時と同じように、豪華絢爛ロイヤルエッジを足場にして下まで降りてしまった。


◇◆


「凄いな、三村」

三村達がここに来た一通りの経緯を聞いた後。

光速のライバルに教わったとかいう、エリカとのコンビネーションスキルに、俺は素直に感心していた。

が。

「ぶへっ!」

峰に思いっきり、背中を叩かれた。

「どほ!」

そして、三村にボディを決められた。

「ん?」

エリカには、なぜかデコピンされた。

なんなんだ?


「凄えのはおまえだろ、澄空!」

叫ぶ三村。

「本当に、Aランク幻影獣を倒してしまうとは……」

「凄すぎデス! 悠斗さん!」

峰とエリカも、褒めてくれる。

…………そっか。

やっぱり、これだよ。

新聞とか、テレビで『Bランク幻影獣を倒した奇跡のBMPハンター現る!』とかって報道されるのも嬉しくない訳じゃないけど。

やっぱり……。


「って、こんなことしてる場合じゃないんだ!」

と、麗華さんが映っているモニターを指差す俺。

「あれっテ……」

「……剣?」

「彼女にしては苦戦しているとは思ったが……。あまり良い状態ではなさそうだな」

そう。峰の言うとおり、麗華さんの状態は良くない。というか、なんでまだ誰も助けに行ってないんだ!


「いや、しかし、お前こそ大丈夫なのか? 最後、とんでもない大技使ってたけど」

「大丈夫だ! まだ、あと3セットはいける」

三村に応える俺。

ちなみに『1セット=断層剣カラドボルグ・超加速システムアクセル捕食行動マンイーターコンボ』だ。

「良く分からんが、それは凄いな……」

素直に感心する峰を置いて、走り出す俺。


「あ、マ、待ってくだサイ!」

エリカの声を聞きながらも、足は止めない。


若干ふらふらしてるけど。

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