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BMP187  作者: ST
第六章
332/336

幕間~恋人の危機~

「天竜院先輩……。俺の指示は覚えていますね」

「はい。部屋に帰ったら、速攻でお風呂に入ることですね」


青竜(……というか、執行者)との一戦を終えた後、俺の部屋(……というか麗華さんの部屋)に大慌てで帰る前に、俺は天竜院先輩に再度念を押していた。

本当はその辺のホテルでシャワーを浴びさせたかったのだが、天竜院先輩が今日の分の家事が遅れることを嫌がったので、家事の前にシャワーを浴びさせる約束だけして、大慌てで帰ってきたのである。……あと、ホテルに二人で入ると、万が一にも麗華さんに誤解されると俺のダメージが半端ではない。


「家事があるとか気にしないでしっかり下着の中まで洗ってくださいね」

「御心配には及びません。我が主のおそばにいる以上、例え我が主からいただいた吐しゃ物であったとしても、しっかりと清潔にいたします」

……本当に大丈夫か気になるが、とりあえず信じるしかない。


ドアを開けて。


「お帰りなさい。悠斗君」


女神が立っていた。

じゃなくて、女神のように美しい麗華さんが立っていた。

……少し疲れてるかな。


「……そっか。帰ってたんだ」

「うん」

もう少し早く帰って来てたら、青竜なんか敵ではなかっただろう。

いや、盟約領域の仕様を考えたら、麗華さんが入ってきたら、マッチングが成立しなかったか……。

あ……。


「そういえば、麗華さん。青竜……というか執行者との戦闘後、なぜか【修練場】が俺に譲渡され……っ!」

いきなり唇を奪われた。


「れ…………れ、れれ……!」

「おかえりなさいのちゅー」

ちゅーですと!


「…………!」

い、いつから、そんなシステムが実装されたんだ!?

《あっぷでーとよていにはなかったかと》

《いや、今のは質問じゃねえぞ……》


「て……天竜院先輩……」

「は! 最速でシャワーを浴びてまいります」

いや、そうではなく!

……と、思ったが、天竜院先輩はお風呂に駆けこんでいってしまった。まぁ、俺の指示なんだから仕方がない。

それよりも……。


「れ……麗華さん? 何かあった?」

「……悠斗君と出会ってから、いつも何かあってるよ?」

……いや、そういうちょっと心温まる会話をしようとしたわけではなく。


「何か……嫌なことがあった?」

「…………つらいことなら」

…………これは相当である。

こんな顔は……副首都区に行く前以来だ。


「…………?」

いや、しかし。

なんで麗華さんにつらいことがあったのに、俺を甘やかしてくれてるんだ?

《甘やかしてくれたのか?》

《くれたのですか?》

おかえりのちゅーなど、甘やしてくれている以外にあるまい。


「……ひょっとして、俺にした【酷いこと】が何か分かったとか」

「!!」

麗華さんの瞳が驚愕に見開かれる。

そんな表情は初めて見たが、やはり普通に超絶美少女なので、俺の中の麗華さんへの好感度がさらに上限値を更新してしまったのだが、今はそれどころではなく。


「どんな……」

「いや」

へ?


「言いたくない……」

「あ、えと」

「言ったら、悠斗君に嫌われる」

「…………」

そんなことは2万パーセントないと思うのだが、そう言うのもためらわれる雰囲気だった。


「悠斗君……。いつ出ていくの?」

「!!??」

「……あ、この部屋が気に入ったのなら、私が出ていくよ……」

「!!!???」

な、なして……!?


「だって……。あんな酷いことをした私と一緒に居たいわけがないし……」

「い、ちょっ……」

だから! どんな酷いことが分かってないんだって!?


「恋人なんて……わがまま言って、ごめんなさい……」

「い、いやいや!」

貴方と恋人になることを迷惑がる人類が、いるものか!?


ど、どうする!?

どうしたらいい!?


〇問題点の整理

・麗華さんは、「昔、俺にした酷いこと」を思い出した。

・だから、俺に嫌われるはずだと思っている。

・でも、どんな「酷いこと」だったかは俺に言いたくない。

・だから、俺が「それでも麗華さんが好き」と言いにくい。


「…………」

まじか。

こんな理不尽な恋人の危機があっていいのか?


《おうさま。かしんにていあんがあります》

まじですか、かしんさん!?

《じきをきるのがよいかとおもいます》

磁気?

……時期か?


《いちねんくらいとじきをきってこいびとかんけいをつづけるのです。そのあいだに、ひどいことのないようをとくていするか、じょせいかののろいをといてきせいじじつをつくるのがよいとおもいます》

一年過ぎたら、どうするんだよ!?

《えんちょうすればよいかと》


「…………」

…………かしんさん、天才。

《すげえ》

アニキも驚愕していらっしゃる。


「れ……麗華さん。す、少し提案があるんだけど……?」

「提案?」

小首をかしげる麗華さん。

ぐ……可愛い。


「お……俺達、少し時間が必要だと思うんだ……?」

こ、こんな感じで合ってるか?

「……時間?」

「と、とりあえず、1年くらいは今のままでいたい……」

「……」

「…………」

「…………」

だ、だめか……?


「あんな酷いことをした私を、1年間も恋人にしてくれるんだ……」

「へ?」

「……嬉しい」

麗華さんの眼にうっすらと涙が溜まっている。

そんな悪いことをしたわけでもないと思うのだが、罪悪感で、心臓が鎖で縛り上げられたようだった。


「じゃあ、寝室に行こう」

「え?」

「1年しかないから、あまり時間がない」

「え、でも、何のために?」

「? 性行為以外にすることがあるの?」

「いや! あると思うよ!!」

今はちょっと思いつかないけど!?


「い、いや、麗華さん。俺には背徳福音ヴァイスゴスペルというやっかいなパッシブスキルが……」

「……あの呪いは確かにやっかいだね……」

……呪い?

「大丈夫。悠斗君が女の子になっても、私は最後までちゃんとできる」

「いや、ちょっと待って!」

その気持ちは嬉しいけど、ちょっと待って!?

身体に負担がかかるのはもちろんだが、あの状態で最後までやられたら、男性に戻れない可能性がある……。


「悠斗君?」

ご尊顔が近くに寄ってくる。

女性目線(※俺が持っているわけがないが)で見ても、かなり危ない。お姉さまにしたい。

……ではなく。


「れ……麗華さん。俺はできれば、男性でいたいんだけど……」

「……そうだね。性別は基本的なアイデンティティだから。急に変更されると困るよね」

いや、そういうわけではなく。

……いや、そういうわけなのか。


「分かった。性行為は、その呪いを解いてからにするね」

「…………」

呪いって言ってるよな。

確かに呪いのようなパッシブBMP能力だけど……。

本当にそれだけなのか……?


「じゃあ、胸を触る?」

「なんで!?」

なんで!?


「? 悠斗君は、私の胸が好きかと思ってた……」

そりゃ、ささみチーズフライより好きだけどね!?

「1年しかないから、色々してあげたいと思ったんだけど……」

「そ、それは超絶嬉しいんだけど……」

そんな善意に付けこむようなことはしたくない……とかいう紳士的な理由では無論なく、単純に嫌われるのが怖い。

いや、しかし、この状況で善意を受け入れないほうが失礼なのか?


……、わ、分からない。どうすればいいんだ。

《どうすればいいんですか?》

《どう見ても相思相愛なんだから、いいんじゃねえか。スキンシップは愛着形成に重要だというし……》

それ、赤ちゃんか何かの話だったと思うが……。

とりあえず、脳内で了解が出たということにした。そうした。

しかし、問題なのは……。


「前回は一分くらいは大丈夫だったよ」

ミーシャとやった後の屋上での話である。

「心構えができていれば、最大2分くらいは大丈夫じゃないかな」

なるほど。しかし、リスクは抑えたい。


では。


「1分30秒でお願いします」

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― 新着の感想 ―
これ罪悪感でパニックになってるな? ミーシャ曰く姫様が勇者を裏切ってるのが悲劇の軸、月夜や幼少期の麗華からもろくでもない理由って言われてるし、今の麗華からしたら一緒に居るのが許せない程の事だったのか。…
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