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BMP187  作者: ST
第六章
329/338

幻影戦闘『次元獣ティアマット(執行者)』

・青神が、千度放つ青槍(グローランサー)を一発放ち、【執行者】の炎のような障壁で防がれる。

・【執行者】から伸びる炎の濁流が青神を呑み込みそうになる。

・俺が青神を抱えてその場から離脱し、距離を取って【執行者】と対峙する。

・片腕に抱えた青神から、驚きを込めた視線を向けられる。←イマココ


「な、何をやってるんですか!?」

いや、ほっておいたら、あんた秒殺だったし……。


「なぜ、僕を助けたんですか? 僕が死ねば、盟約領域が貴方に移るんですよ?」

「……本当にそうなのか?」

「え?」

……正直、非常に疑わしいと感じている。

青龍の異常な不遇っぷりは確かに気になるが、それだけで大事な鑑定の最後を『無能な青龍を殺して終わり』にするのはどうにも違和感が残る。

四方神の最初の鑑定ではあるが、何か怪しげなギミックがあるような……。


例えば、鑑定者が青龍本人ではない……とか。


「澄空さん?」

「死んだら検証もできなくなる。とりあえず、ここを切り抜けるぞ」

「……貴方がいいなら、いいんですが……。お言葉に甘えてしまいますよ」

そこで、なんだか微妙な体勢で青神を抱いていたのを気づき、床に落とした。

恨みがましい目で見上げられるが、あんまりなれ合う気はないのである。


「とは言っても、逃げるのはまずいな」

今、盟約領域を解除すると、結構人通りが多い場所に出る。

外見はティアマットを少し成長させたような美女だが、どう見ても理性があるようには見えない。

……とても、野に放つ気にはなれないな。


「あいつのBMP能力は何だ?」

森羅万象オールシーズン……。ありとあらゆる属性攻撃を操る能力です。ティアマットの上位互換と考えていただければ」

……春香さんと同じか。

……やばい、帰りたい。


「ひょっとして、後悔してますか……?」

「……千度放つ青槍(グローランサー)は通じないのか?」

もちろん後悔してないことはないが、いまさらどうにもならないので、質問で返す。

春香さんと同じなら、まともに攻撃が通じるとは思えない。さっきは効いていなかったようだが、千度放つ青槍(グローランサー)ならワンチャンあるのではないか。


千度放つ青槍(グローランサー)が参照するのは防御力だけなので、属性軽減は受けません」

超有効じゃないですか。

「ただ、ヤツのBMP能力はスキルが多すぎて……。理性がないので大雑把にしか使って来ないとは思うんですが、それでも、10発は撃たないとだめだと思います」

「何発撃てる?」

「命を賭けても5発が限度かと……」

ならいけるか?


劣化複写イレギュラーコピー千度放つ青槍(グローランサー)

見た目は特に変哲のない光線攻撃。

だが、『同じ障壁は2度目に必ず破る』特別なBMP能力が、【執行者】の青くゆらめく壁に防がれた。

確かに属性相性は無視できているらしい。

しかも狙い通り、青神と千度放つ青槍(グローランサー)の障壁防御力学習能力が共有できている。


「貴方はチートですか?」

鑑定内容がかなり理不尽なので、多少チート気味なのはご容赦いただきたい。

……などと言っているうちに、紫色の濁流が四方から襲い掛かってきた!


劣化複写イレギュラーコピー集積筋力ディレイドマッスル!」

強化した腕力で青神を投げ飛ばす。

そして。


劣化複写イレギュラーコピー超加速システムアクセル!」

俺もバックステップで回避するが。

「やば……!」

青神の方に一本行った!

しかも、俺の進行方向にも一本!

だめだ! 手が足りなすぎる!


そう思った時、いきなり、光の尾が俺の胴に巻き付いてきた。

「っ!」

九尾?


引っ張られるままにしていると、着地点で暴力的な張りのある二つの柔らかいものに抱き留められた。

「御無事ですか!? 我が主!」

「天竜院先輩……」

た……助かった。

かなりギリギリだったけど。


「一応、姉上と邪竜に止めを刺さずに連れて参りましたが、間違っておりませんでしたでしょうか?」

言われてみると、確かに遥さんとティアマットが青神を執行者の攻撃から守っている。

「もちろん。さすが天竜院先輩、グッジョブです」

「! わ、我が主からグッジョブをいただけるとは……。この天竜院透子、感激でございます」

……そんなに感激していただけるなら、グッジョブとかいう用語チョイスはしないほうが良かったな……。


「そ、それから、我が主! ご報告があるのですが!」

「え?」

「この髪色をご覧ください! 我が主の色です」

「…………」

ん?


「我が主?」

「あ、いえ、みごとな黒色だと思います……」

もともと綺麗な黒髪なので、そんなに変わったようには見えないが……。

俺の観察能力がないだけかな……。


「い、いえ、我が主……。確かに漆黒は魔帝たる我が主に相応しい色かもしれませんが、この髪色は…………黒い!!」

ど、どしたん……?


「そうか……あの恩寵スキルはBMP能力を大量消費するのか……。さすがは我が主……」

身に覚えのないことで『さすがは我が主』とか言われても……。

「申し訳ありません。今日はもうあまりBMP能力を使えないようです……」

「マジですか!?」

いくら天竜院先輩が超強いとはいえ、あの化け物相手にBMP能力が使えないのはヤバイ。

青神は、あっちの凸凹コンビに任せればいいとして、天竜院先輩にはお帰り頂いた方がいいか……?


「……………」

いや。

さっき一発撃って分かったが、千度放つ青槍(グローランサー)は負荷が大きい。執行者から逃げ回りながらあれを撃ちまくるのは、一人では無理だ。


「節約しましょう、天竜院先輩。やつを倒すまで」

「……わ、私が調子に乗ってBMP能力を使いすぎたばかりに、我が主に節約をさせるとは……。このお叱りは後で必ず……!!」

……生きて帰れたらね。


「っ!!」

千度放つ青槍(グローランサー)の次弾を準備しようとしていたところに、土色のティアマットが地面から生えてきた。

比喩表現ではない。

本当に、土色一色で構成されたティアマットと同じ姿の何かが、地面から実体化してきたのだ。

もちろん、土色の先は執行者に繋がっている。


「はぁっ!」

節約しろと言ったせいか、天竜院先輩が剣で斬りつける。

袈裟斬りに身体を割かれ、大きくぐらつくが、それでも倒れることなく向かってくる。

さらに、同じ土色の濁流が、別の方向から襲い掛かってくる。

だめだ、やっぱり手が足りない!



虚空から剣閃(ソードファントム)



……鼓膜を貫くほど良く響く声なのに、最初は幻覚かと思った。

空間に一本線が入ったかと思うと、そこを起点にティアマットもどきと土色の濁流が【ズレ】ていき、最後には崩れ落ちる。

斬撃属性? ……いや、これはもっと高度な……。


「剣属性……?」

そんな属性があるかどうかも俺には分からないが、直感としてはそうとしか表現しようがない。

そして、視線を向けた先には想像通りの怪しげなマスクを付けた人物が……。


「助けたわけじゃないんだからねっ……」


「……ツンデレはともかく、ありがとうございます」

「ツンデレではなく、悠斗様の覇業を邪魔すべきではないとの配慮です」

覇業の邪魔でもマ行のお手伝いでもいいが、とにかくこの人が一緒に戦ってくれると、物凄く有難い。


「すみません。とりあえず、さっきのティアマットもどきをなんとかしてください。俺たちは隙を見て、千度放つ青槍(グローランサー)を……」

言い終わる前に絶句する。

赤……青……黄……紫……。俺の目の前で、単一色のティアマットもどきか次々と足元から具現化してきている。


「す……すみません。仕事を少し振り過ぎました」

とはいえ、春香さ……マスクドエレメント以外にこれを処理できそうな人がいない。

「いえ、御心配には及びません。本物に近い出力がありそうですが、所詮は単一属性で作った土人形」

マスクのせいで表情は分からないが、彼女の周辺に様々な色の球が出現して漂い始める。

何かとんでもないBMP能力の予備動作であることは間違いない。


虚空から色々ソードファントム・ヴォルテックス


青……赤……青紫……黄緑……。空間に走る色とりどりの斬撃が、ティアマットもどきをことごとく切り伏せていく。


あまりの光景に、あちら側で必死に主を守っている本物ティアマットと遥さんも目をむいている。


「うむ。これくらいであれば、悠斗様の覇業に余計な改変を加えることにはならないでしょう」

そして、自信満々に天竜院先輩並の大きな胸を張るマスクドエレメント。


……いや、もう、俺の覇業どうこうより、貴方が世界を救ってくださいませんかね?

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