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BMP187  作者: ST
第六章
322/336

予期せぬ災害

現在、俺は風間先輩とともに、街を歩いている。

賢崎さんに、青神のことで呼び出しを受けたのだ。


ちなみに、缶コーヒーを飲みながら付いてきている風間先輩は護衛である。

「鑑定を宣言された状態で青龍が襲ってくるとは思いませんが、念のためです」

とのことである。


「護衛としては少し微妙ですが、デート相手としてはなかなか良いチョイスだと思いますよ」

残念ながら、俺はチョイスしていない。というか。

「護衛としては微妙なんですか?」

「基本はやはり彩音ちゃん。次点で戦闘力の高いリーダーか、貴子ちゃん。守りに長けた凛ちゃん、でしょうか。ぶっちゃけ、私以外なら誰でもいいといいますか。私は護衛にはピーキーすぎるといいますか」

「…………」

では、なぜ貴方がチョイスされたのでしょうか。


俺の視線の意図が伝わったのか、風間先輩は若干神妙な表情を浮かべる。

「透子様はあのとおり普段からとても気を張っていてしっかりとした方です。しかし、逆に、気が抜けると少しポンコ……可愛らしいところがあるといいますか……」

……ポンコツと可愛らしいはニアリーイコールにはならないと思います。

「澄空様に命じられた恩寵スキルのことで頭がいっぱいだったんだと思います。護衛が必要なことに思いが至ったのは良いのですが、よりによって一番不適の私を選ぶ体たらく……。他のメンバーに用事があったのも確かなのですが……。……すみません」

「いや、責めている訳では……」

一緒に来てくれるだけでも心強いものである。

青龍の目的が本当に【鑑定】かどうかも確実じゃないし、その他の幻影獣に狙われる可能性もゼロじゃない。

約束の幻影獣を倒すと宣言した以上、こんなところで死んでいる場合じゃ……。


「ふぁっ……」

温かい缶コーヒーを頬に当てられて俺は飛び上がる。

「飲みます? 私と間接キスになりますけど?」

「な、なにゆえに……?」

「この缶コーヒー、【エメラルドブラックサンダーマウンテン】だそうです。怪しげなジュースとか過ぎですよね、澄空様」

なぜ、知っておられるのですか?

「眉間にしわが寄っていたので。私がいるかぎりデート中にシリアスな空気にはさせませぬ」

「は、はぁ……」

なんのこっちゃ。

と思いつつも、パチモン缶コーヒーの魅力に抗いきれずに口を付ける俺。

まぁ、まずくはない。残りも多くはなかったので、全部いただくことにする。


「実は、私以外の五竜は若干Mの気がありまして」

「はい!?」

「その点、私の性癖はもう少し甘やかしてくれる系のご主人様なので、デートしてもこれ以上、私に惚れられてしまう危険はないかと」

「は、はぁ……」

たぶん論理段階をいくつか飛ばしている。

Mであれば、俺が惚れられるという因果関係が分からない。


「…………」

まぁ、しかし、言っている意味がまったく分からない訳ではない。

美人な先輩と一緒に歩いているのに、あまり緊張していない。

なんとなく、女性の先輩というよりは友達よりというか。

「風間先輩は、ちょっと三村に似ている気がします」

「? 三村君ですか、確かに属性は同じ風だと思いますけど……。私にはおっぱいがありますよ?」

もちろんである。

なければ、飲みかけの缶コーヒーを頬に当てられた時点で、逃げ帰るところである。


と、そこで見知った顔の男性とサングラスの少女が歩いてくるのを見つける。

「青神……?」

まさかの青龍登場だが、襲撃でないことは明らかであった。

前回戦闘時とは別人のように気の弱そうな表情をした青神が、芸能人よろしく(※実際に芸能人であるのだが)サングラスをかけクレープを頬張る女子中学生(※に扮した次元獣)とともに歩いてきていた。


「青神?」

「澄空さん?」

「ゲ、悠斗……」

最後のがティアマットである。

フルボッコにしたから無理もないが、完全に嫌われているようだ。

もっとも幻影獣が相手ということであれば、ここで第二ラウンドをやることもまったくやぶさかではないが。


「おいおい……。境界の勇者ともあろう者が、休日に、その殺気はないんじゃないか?」

「BMPハンターに完全オフなんてないけどな。この世界に幻影獣がいる限り」

「幻影獣共生派の皆様にも多少配慮することをおすすめしますですわ」

「…………」

そんな物騒な団体があるのか。


「ん……?」

風間先輩に、腕をツンツンされる。

「我が主の主」

「…………」

関係性としては間違ってはないような気もしますが。その呼び名はどうなんだろう?

「幻影獣を野放しにできない気持ちは私も同じですが、連れているのが私である以上、冒険は避けるべきだと思います」

なぜそんなに自己評価が低いのだろうか。


「それより、青龍の当主には、遥様に透子様の極天光が効かなかった理由をお聞きした方が良いかと」

「え?」

効かなかったのか?

負けた以上、奥義が効かなかったとしても不思議ではないのだが、あの終式はそうそう敗れるものじゃないと思うんだが。


「そんなことを言うはずが……」

「簡単な話ですわ。73式:朧蜘蛛は、遥が使えば【九尾の先の数だけ同時に存在できる】性能ですもの。6か所同時に攻撃できない限り、例え終式でも破れませんわ」

鼻で笑おうとした青神が、ティアマットに答えを言われて、頭を抱え込んでしまう。


「言ってどうするんですか!?」

「しまったですわ!?」

なんというか、かなりのポンコツ性能で親近感すら覚えてしまいそうになり困る。

遥さんは、この主従の一体どこが良かったんだろうか?


「澄空様。情報入手出来ちゃいましたよ?」

「さすがです」

【ピーキー】が悪口でないことを再認識しました。

そんなところも三村に似てる。


「楽しそうですね」


「え?」

予想外の方向から不意に投げかけられた声に驚く。

「え??」

そちらの方向を見て、もう一度驚く。


スタイル抜群(特に胸のあたり)の女性である。

が、美女かどうかは分からない。

なんとも言えない意匠の仮面を被っているからだ。


……女性がゆらりと手を前に伸ばす。


右手から超爆裂(エキサフレア)

俺と風間先輩と青神とティアマットと、さらに目の前の女性を囲むようにして巨大な火の壁が天を衝く。


「春香さん?」

あの独特の能力名と暴力的なおっぱいは二人といるものではない。

……ものではないのだけど。


「違います。私はマスクドエレメント。式春香などではありません」

本人が否定している。

おっぱいはもちろん背格好も似ているのだが……。


「す、澄空さん……。あの幻影獣と知り合いなんですか……?」

青神が言うとおり、目の前の女性から感じるプレッシャーが、明らかに人間のモノではない。

春香さんも名状しがたい違和感をまとった陰のある美少女ではあるのだが、ここまで露骨な幻影獣っぽさはなかった。

……というか、こいつ、なぜいきなり敬語になってるんだ……?


「も、もぐりですわ、幸也! このような幻影獣、私は見たことがございません! ……私の20倍は強そうですが……」

じゃあ、君の方がモグリではなかろうか?


「相変わらずモテモテでなによりですが、せっかく浮気するなら私としませんか、悠斗様」

だだ漏れの違和感と同じくらい強烈な殺気をまといながら浮気を勧めてくる女性。

浮気どころか命を奪われそうである。


「す、澄空様」

腕をくいくいしながら風間先輩が話しかけてくる。

「ど、どれだけよそで女をこしらえてもいいけど、地雷女だけはやめてくださいと言っていたのに……」

「…………」

聞いてません。



でも、その意見にはとても賛成です。

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