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BMP187  作者: ST
第六章
311/336

盟約領域チュートリアル

「澄空さん。ライブには興味がありますか?」


新月学園の休み時間。

相変わらず理解できないままに終わった授業に思いをはせていると、突然、賢崎さんが声をかけてきた。


「ライブって……。音楽の?」

全く詳しくないけど。

「はい。ティアマットというアイドルなのですが」

全く知らん。


「説明が必要か?」

(※呼んでないのに)三村が突然に寄ってきた。

「ティアマット……通称、邪竜ティアマットたん。最近売り出し中のJCアイドルだ」

「JC……?」

「女子中学生ですよ、澄空さん」

(※なぜか)三村の話を真剣に聞く体勢になっている賢崎さんが耳打ちしてくる。


「『進化させてあげる』がキャッチフレーズ。人間離れした身体能力と美貌で、今、急速に人気を拡大している」

「……なるほど」

進化させていただけるなら人気なのも仕方ない。たぶん。


「歌声も凄いんだよな。魔力が籠っているようだともっぱらの噂だ」

「幻影獣じゃあるまいし……」

「感動しすぎて、人によっては、存在そのものに違和感を覚える人もいるらしい」

「いや、それ幻影獣じゃないのか?」

アイドルには全くもって詳しくないが、違和感と言えば幻影獣の気が……。


「それなんです、澄空さん」

と、賢崎さんが割り込んできた。


「ティアマットが幻影獣じゃないかと疑っているんです」

「幻影獣って……。人型ならAランクだろうし……。そんな大物がゴロゴロいるものかな……?」

「神一族の、東の青龍の次元獣の名前が、賢獣ティアマットなんです」

「…………それ、露骨すぎやしませんか?」

「ですよね……」

なぜか申し訳なさそうな賢崎さん。

というか、神一族は、Aランク幻影獣を飼っているのか?


「あ、でも、そのティアマットが所属する芸能事務所を洗えば、何か分かるかもしれないんじゃないかな。まさか、幻影獣を雇う一般事務所があるわけないし」

珍しく、頭が良さそうな思い付きができて、若干嬉しくなる俺。

「……その事務所、賢崎一族の系列会社なんです……」

「あ……」

あかん。

思い付きで発言するんじゃなかった。


「そうですよね……。幻影獣を雇う事務所なんかないですよね。まして、人類とBMP能力者の守護者を掲げる一族の系列会社が……」

「あ、いや、その……」

「節穴女で、すみません……」

いじけてしまった。


「いくらモテモテの境界の勇者様といえど、女の子を泣かせるのはお兄さん感心しないぞ」

ちょっと黙ってくださいお兄さん(※三村)。


「け、賢崎さん……。その、事務所にも何か事情があったのかもしれないし……。賢崎は忙しいから全部に目は通しきれないだろうし……。と、とりあえず、そのティアマットたんのことを調べてみるのが先決なんじゃないかな……」

「つまり……。私と一緒にライブに潜入して、ティアマットの正体を暴いてくれるということですね?」

「? ……、そ、そうなのかな?」

え、そんなニュアンスだった、今の?


「分かりました。ちょうど、ソードウエポンが学会に出席して不在の日のライブチケットが取れましたので、二人で行きましょう」

「え、え? え、二人? え、三村は?」

「ひょっとしたらAランク幻影獣かもしれないんですよ? 澄空さんはお友達を殺す気ですか?」

「え、俺、死ぬの?」

いきなり犠牲者にされた三村が、(※冗談っぽく)悲鳴を上げる。


「……どのみち、エリカさんをデートに誘う予定の日でしょう? 来れるわけありませんよね?」

「なんで知ってるの!?」

三村が(※本気の)悲鳴を上げる。

怖すぎる。


最初から分かっていたことではあるが、我々が賢崎さんにかなうはずもなく。


俺と賢崎さんがティアマットたんのライブに潜入捜査することに決まった。



◇◆◇◆◇◆◇



突然だが、新月学園の理事長は、薙京香という。

どうして今更理事長を紹介することにしたかというと、今まさに呼び出しを受けて、理事長室で面談をしているからだ。


「突然ごめんなさいね、澄空君」

「あ、いえ。全く問題ないです」

年は、40から50くらいか? 良く分からないけど。

俺はソファに座っているが、応接テーブルを挟んだ理事長は、車椅子に座っている。

理事長の脚は、医療技術ではもちろん、BMP能力でも直せないと聞いたことがあるような気がする。


あと知っているのは、もと政府の要人でBMP能力者ということくらいか。


「何となく察しているとは思うけど、もちろんまともな学生らしい案件での呼び出しではないわ」

「そうでしょうね……」

そもそも普通の学生は、そうそう理事長に呼び出されない。


しかし、幻影獣がらみの話ならBMP管理局の城守さんだろうし、いわゆる政府筋なるものだとしたら、なんと俺は首相と知り合っている。

理事長の立場にある人から、個人的に話を受けるような理由が全く思いつかな……。


「ひょっとして、【理事長】は関係ない……?」

「あらあら。賢崎さんに聞いていた通り、頭の回転が速いのね。幻影戦闘のやり方を見てれば、納得だけれど」

褒められた。


「そう。用事があるのは、私個人。もっとも、この用事を果たすために、理事長を引き受けている訳だけれど」

「…………?」

用事を果たすために、理事長を引き受けた?

新月学園の理事長職を選べる立場なんて、この人、ものすごい人なのか?

ものすごい人なんだろうな。


そんな人が、今から言おうとしている【用事】のためだけに、ここで働くことを選んでいる……。

話をされる前から、俺も緊張してきた。


「ここの理事長になる前から、ずっと待ち続けてきたわ。剣さんと貴方が入学してきてからは、どちらかだと思ってずっと見続けていたけど。やっぱり貴方だったわね。まさか、黒神さんから直接指名されていたなんて思いもしなかったわ」

「黒神さん……」

ひょっとしなくても、月夜か?


「まさか、世界の秘密に関わる何かを知ってるんですか……?」

「具体的には、【盟約領域】を」

「!」

まじか!


「な、なんでそんな秘密を今ごろ……」

「一般的に公開されている訳じゃないけど、私が隠していたわけじゃないわよ。ただ、約束の者の候補者……盟約領域を集めることのできる人物がいない限りは、意味がない情報なのよ。最低でも、神一族の4当主全員をとっちめていく必要はある訳だから」

「…………」

甘い想定はしていなかった上に、言っている意味はまるで分からないが、とりあえず、頭がくらくらいたします。


「で、どうする、集める?」

そんなトレーディングカードみたいなノリで言われても。


「全部集めると、盟約の王なんて呼ばれるようになる。あと、約束の幻影獣と闘える」

重要性の順番が逆だと思うが。しかも、そんな称号はまったくもって要らない。

とはいえ、約束の幻影獣に繋がる可能性があるというなら、集めないという選択肢はありえない。


「き、興味はあります」

怖いもの見たさに近いですが。


「そう。じゃあ、最初の一つ目を集めに行きましょうか」

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