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BMP187  作者: ST
第二章『ウエポンテイマー』
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特訓開始?

二人で並んで歩く。


この辺の人たちは、もう俺の正体を知っているので、完璧美少女の隣を普通少年の俺が歩いていても疑問に思ったりはしない。

とはいえ、面白くないのは相変わらずのようで。


「はぁ……」


思わずため息が漏れる。

緋色先生のアドバイスは、片手落ちだ。

麗華さんの『クール美人度(そんな尺度があるかどうかは知らないが)』が落ちた分、通行人の人たちの『なんだか面白くないゲージ(このゲージはあるだろうたぶん)』が上がっているので、俺はやっぱり落ち着かない。


と、前方から、俺たちと同じくらい目立つ二人組が歩いてきた。

なんせ、片方が美少女で金髪だ。


「あー、澄空? ひとつ聞きたいんだが、今日は特訓でいいんだよな?」

だいたいの事情は察していると思われる三村が聞いてくる。

「ああ、特訓だ」

「麗華さん、可愛いデス!」

そして、事情をあんまり気にしていないエリカが褒める。


「うん。悠斗君もそう言っていた」

麗華さんの何気ない一言。

そう言えば、俺。女の子に『可愛い』って言ったんだよな。

まさか、俺がそんな高等なセリフを言える日が来るとは、人生は分からん。


「ところで、三村たちは何を?」

聞いてみる。

二人とも動きやすい恰好をしているところを見ると、この二人も特訓だとは思うのだが。


しかし、この二人、俺と麗華さんと違って、並んでいても違和感無いな。

三村は、中身はともかく外見はイケメンだからな。

……こいつ、いつも俺のことを羨ましいだのなんだの言うけど、いったい現状のどこに不満があるというんだ。


「いや、緋色先生が『あの二人だけじゃやっぱり心配』って言うからな。付き添いというか見学」

「悠斗さんと麗華さんの特訓がどんなものか興味があったんデス!」


ま、いいけど。



◇◆◇◆◇◆◇



俺が首都に来る1か月ほど前、首都のある場所が幻影獣に襲われた。

襲撃自体は小規模だったらしいが、その幻影獣はどうもタチが悪かったらしく、退治された時に呪いを振りまいて行った。

俺は頭が悪いので呪いといってもうまく説明はできないが、麗華さんに聞いても『理屈を説明することはできるけど、結局は呪いというのが一番本質に近い』と、(しっかり理屈を説明してくれたあとで)言っていたので、まあ呪いでいいんだろう。


その呪い汚染された場所が今、眼の前に広がっていた。


「こんなところにマンションを建てようなんて計画があったのか……」

思わず呟く。

「計画があったのは、呪い汚染される前。あれさえなければ、ここは、悠斗君が住むにふさわしいマンションになっていたかもしれない」

麗華さんが応えてくれる。


『複合型ステーションまで徒歩一分。アクセス抜群、環境最高』か。

やっぱり、古い情報誌使ってたんじゃダメだな。


途中までは建設が進んでいたらしい。

整地も終わっているし、骨組みも半分くらいはできている。

でも、そこで止まっている。

ついでに、マンション(になる予定の骨組み)の周囲100メートルほどが、根こそぎ何もなくなっていた。

しかも、土の色が明らかにおかしい。なんというか、紫っぽい。


そして、全身に絡みついてくる違和感。


触覚で感じられる臭気というか、不快感のバーゲンセールというか。


「ほんとに、こんなところで特訓するのか?」

俺の気のせいでなければ、『KEEPOUT』と黄色いテープが張り巡らされているのを、乗り越えて入ってきたような気がするんだけど。



「ふむ。時間ぴったりね。澄空君、麗華さん」



しばらく茫然としていた俺に、緋色先生の声が聞こえてきた。

先生は、今日の特訓の見守り役といったところだ。


「ここ、ほんとに一般人が来て、大丈夫なんですか?」

「大丈夫な訳ないでしょ」

『なにを言ってるのこの子は』的な視線で返される。

中身はともかく外見はこどもなので、屈辱度も二倍だ。

……そういえば、緋色先生って、結局何歳なんだろうか? 怖くて、とても聞けないが。


「頭痛、悪寒、動悸、息切れ、吐き気、嘔吐。その他もろもろ不快感のオンパレードで、最悪、命に係るわ。なんせ『呪い』だから。KEEPOUTが見えなかった?」

「だったら、なんでこんな場所で!?」

俺の当然の疑問に。

後ろから、盛大なため息が聞こえてきた。


三村だ。


「あのな、澄空。『一般人には』って言っただろ。お前は一般人か?」

違うとでも言うのか?

「違う! あのな、澄空。俺たちはBMPハンターなんだ。BMPハンターは、対幻影獣の切り札にして唯一の戦力。俺たちはまだ高校生だけど、職業としては、弁護士や医者よりも格上なんだぜ。お前だって知ってるだろうが」

「そ、それは……」

そうだったかもしれない。

が、あんまり実感がないんだよ。自分のこととなると。

ついでに言うと、俺は職業に貴賎はないという説を信じている。


「私は残念ながらBMPハンターではないデスが、悠斗さんはもう世界的にも上位ランカーなんデスヨ。単独でBランク幻影獣を倒したハンターは、ほとんどいませんカラ」

エリカが自分のことのように誇らしげに付け足す。

「いや、あれは、エリカやみんなの力があったからで……」

「デシたね。ありがとうございマス」

と、エリカがほほ笑む。


「あ、いや、礼を言うのはこっちの方で……」

「悠斗君」

「え?」

エリカの奇襲に慌てふためく俺に、完璧美少女の声が被せられる。

「次は、私も一緒に闘えると思う。あてにしてくれて、構わない」

「は、はいな……」

あてにするもなにも、麗華さんがいれば間違いなく主力兼主役になると思うんだが。


第五次首都防衛戦で、ボスの方に来れなかったことを悔やんでいるのか?

陽動の軍勢の方を、50体以上消滅させたって聞いたけどな。


それに、あの時は。

個人的には。


麗華さんのおかげで勝てたって気がするんだけどな。



◇◆



「エリカ。豪華絢爛ロイヤルエッジをお願い」

「ハイです。みなさん、下がっていてくだサイね」

麗華さんに言われて、エリカが豪華絢爛ロイヤルエッジを展開する。


豪華絢爛ロイヤルエッジとは、エリカのBMP能力で、周囲の空間に数十の不可視の刃を発生させる能力だ。

完成すれば恐ろしい能力だと思うが、エリカ自身のBMPが119のため(対幻影獣戦闘に使用できる目安はBMP120)。

なんというか、その。


斬れない。


かなり強くこすらないとかすり傷ひとつ付けられない。

しかも、不可視と言いながら隠蔽率が中途半端で、うっすら見えている。


まあ、それはともかく。


「はっ!」

麗華さんが剣を抜いた。

まるで神話に出てくるかのような壮麗な剣。

麗華さんの『幻想剣イリュージョンソード』で実体化した断層剣カラドボルグだ。


そのまま振りぬく。

次元断層を作る剣が、空間を切り裂く。


それに伴い、エリカの豪華絢爛ロイヤルエッジが、ガラスが割れるような音を出して砕け散った。


そのまま連続でカラドボルグを振る麗華さん。

その度に乾いた音がし、空間が豪華絢爛ロイヤルエッジの破片で満たされていく。


しばらくそんな光景が続き。

唐突に、麗華さんが剣を納めた。

豪華絢爛ロイヤルエッジはもう見えない。すべて、破壊したのだ。



「ジャスト15秒。さすがね、麗華さん」

ストップウォッチ片手の緋色先生。


「す、凄ぇ……」

麗華さん凄ぇ。

格好いい。


「悠斗君には、これからとりあえず、これをやってもらう」

「…………へ?」

「とりあえず目標は30秒以内で。悠斗君には、ちょっと簡単すぎるかもしれないけど」

「え、ええ?」

「準備いいデスか? 悠斗さん。さっきより、ちょっと難しい配置にしマスから、ガンバってくださいネ」

ええええええ?

麗華さん、エリカが連続で無茶なことを言ってくる。



「あれ、わざとじゃないですよね。先生」

「当り前でしょ」

「二人とも頭いいのに」

「期待が大きすぎるのね。ヒーローはつらいってとこかしら」

「澄空、めっちゃ気まずそうな顔してますけど」

「そりゃ、可愛い女の子二人の前で『ごめん。俺、もっと無能なんだ』とは言い出しにくいでしょ」

「助けないんですか」

「逆境を乗り越えてこそ、ヒーローよ」


そして、三村とこども先生が、勝手なことを言い合っている!

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