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BMP187  作者: ST
第五章『迷宮の突破者』
304/336

おうさまとそれいがい

「「禁術・竜咆哮!!」」

「レーヴァテイン!」


五色の光の奔流と、俺の炎が(※否応なく)激突する。

全力のレーヴァテインを同じ学園の生徒に向けるのは気が引けるが、そのレーヴァテインと互角の技を受けると、俺の方が消滅する。

……というか。


「禁術と互角……?」

「そんなバカな……」

火野先輩と金森先輩が驚愕しているが、そんなバカな、は俺のセリフだったりする。


五竜のBMP能力はいまいち良く分かっていないが、BMP能力値の見当は付いている。

たとえ五人がかりでも(※出力だけは)人類最強クラスの俺のBMP値と互角なわけがないのだが……。


《竜咆哮か……》

知ってんですか、アニキ!?

《術者の精力を限界まで搾り取る禁術だ。といっても、別に副作用とかはないんだが……。2・3日は動けなくなる》

十分危険じゃないですか。


《いなしてしまえ》

へ?

《どう考えても二発は撃てねえよ。この攻撃を横方向から力を加えていなしてしまえば、もう足腰立たねえよ》

マジか……。

《エロくていいじゃねえか》

まぁ、エロいのかもしれないけど。


「ふっ……」

腕に力を入れる。

ほんの少しだけレーヴァテインの出力が増した(※ような気がした)。

《悠斗?》

いなすわけにはいかない。


五竜が裏新月祭に出場して、ここまで俺に突っかかってくるのは、そもそもが俺のわがまま(※ゲーム研究会で【絶対無敵! BMPブレイバーズ】を読みたい)が原因だ。


……実績のない部活に部室は使えない。他に欲しい人もいるんだろうから。

先輩方は職務に忠実なだけだ。


迷惑をかけたから、せめて全力で。


「5人がかりでビクともしない……」

「彼に余力があったら終わりだぞ」

風間先輩と金森先輩の声が聞こえてくる。


余力はない。『劣化複写』である以上、もう出力は上げられない。


でも、もう少し。あと少し。

本気の想いには本気の想いを。

全力には全力を。


「…………っ!」

両腕に力を込めて。

全力で……ねじ伏せる!


《しょうちしました》

「え?」

《え?》

翔の声じゃない?


《ごきぼうにおうじ、はじまりのげんえいじゅうのけんのうのいちぶをしよう。せかいけんさくしきせんたくふくしゃがたじこきょうか、ぎゃんぶるれーとをあんろっくします》

「な…………」

な、なんだなんだ。

抑揚のない、しかし幼い少女の声で、聴きなれない単語が次々に俺の中から聞こえてくる。

というか、この声……。


「つっ……!」

レーヴァテインが異常に発熱している。

出力が……上がっている……?


《さぁ、おうさま》

レーヴァテインの出力が制御できない……?

《むくのたみに……》

いや。

【今は】、これが、もともとのレーヴァテインの出力……?


《おうさまのいをしめしましょう》



☆☆☆☆☆☆☆



剣麗華のダインスレイブと天竜院透子の護刀・正宗が激突する。

身長は透子の方が高いが、腕力はほぼ互角だった。


「悠斗君が……」

「ん?」

鍔迫り合いのさなか、麗華が語り掛ける。


「悠斗君がしてるみたいに、拳と拳で語り合うなんて、私にできるわけがないと思ってた……」

「……普通はなかなか難しいだろうな」

「あと、そのまま口説いたりするときもある……」

「それは凄いな……」

「でも……」

ダインスレイブに力がこもる。


「この距離なら、話し合うしかないよね……?」

「真剣の鍔迫り合いのさなかにそんなことが言えるのも、貴方くらいのものだよ」

呆れたように返しながらも、透子のその声は優しかった。


「ごめんなさい、とーこ姉。ずっと謝りたかった」

「それだけはやめて欲しい。謝るべきことは私の方にしかないんだ」

「でも、私のせいで、とーこ姉は目を……」

「視力はもう戻ってきている」

「え?」

強く弾いて、透子は麗華と距離を取る。


「どのみち、片目が抉れた程度で弱くなるほど、天竜の歴史は浅くはないさ」

「で、でも、私がとーこ姉の強さを奪ったから……」

「強さなどもとからないさ。それが分かったから、貴方から逃げ続けていただけのこと……」

後悔し続けながらも逃げ続け。

答えも出ないまま、今日、突然に迷いと相対することになっている。


「本当に強いと言える人間に、貴方はもう会っているだろう?」

「……私は、とーこ姉が弱いなんて思わない」

ダインスレイブを構えなおす。


「今からでも、戻ってきて欲しい」

「……今の貴方に私の力が必要とは思えないが……?」

「私じゃなくて、悠斗君の力になって欲しい」

「えっ?」

思わず、普段とは似つかないかわいらしい声が出た。

そして、少し噴き出した。


「参ったな……恋人関係とは聞いていたが、貴方がそんな風に思う日が来るとはな……」

「悠斗君の天竜になって欲しい」

天竜の契約は他人が強制するものでも勧めるものでもない。

その本質を知る者ならなおさら。

しかし、それでも剣麗華はそう言った。


「悪いがそれはできないだろうな」

むしろ晴れやかに透子は答える。


「貴方にそこまで想われる男に、堕ちた天竜など不要だろう」



☆☆☆☆☆☆☆


「なになになに! なんなのこれー!」

風間先輩の悲鳴が木霊する。

まぁ、無理もない。

レーヴァテインの出力が、体感で2倍近くに膨れ上がっている。


《す、すまん、悠斗。何が起きているのか、俺にもさっぱりだ……》

アニキのせいではない。

《ぎゃんぶるれーとはきんきょりもーどでりょうこうにさどうしています。へいこうせかいかんきょりはきわめてたんきょりです。げんかいしんしょくりつもきわめてけいびです》

こいつのせいである。

意味は分からないが、意味を考えたくないくらい恐ろしい単語を連発している。

あと、姉御……鏡明日香の声に似ている。

俺の頭がおかしくなっただけならいいのだが……。


「…………」

しかしやめるわけにはいかない。

あとでどんな副作用があるとしても、このバトルは圧倒的に(※先輩方の納得のいくように)勝ち切ると。

そう決めた。


「出力計算は何度もしていた……! 少しくらい特別なイベントでパワーアップしたくらいで、こんなことになるはずがないのに……!」

火野先輩が振り絞るような声で叫ぶ。

断定してもいいが、その出力計算とやらに間違いはなかったと思う。

「計算できないくらいのぱわーあっぷ……」

「魔神め……!」

水鏡先輩と金森先輩もご立腹である。

あと、音のニュアンスの問題ですが、せめて魔人にしてください。


「リーダー……」

この声は……。

土御門先輩か……?


「【主人公】というのは負けない者の別称だと、そう教わって来ました」

「凛……?」

「自分の人生の主人公は自分だ、とか。そういう類の教訓だと思っていたんです。中央の土の……黄龍の教訓がそんなのはちょっと素敵だなって……」

「…………」


「まさか本物がいるなんて思わないじゃないですか」


《まだしゅつりょくをあげることができます。げんざいのじょうげんちはせかいふくしゃごのじょうきょうがはんえいされています》

レーヴァテインの出力がさらに上がる。

……恐ろしいことにまだ余裕がある。


「たとえ魔人が相手でも! 私達が端役に過ぎないとしても! 透子様だけはそんな扱いをさせたりしない! 南の朱雀の力を借りてでも! みんな力を振り絞りなさい!!」

竜の咆哮がさらに勢いを増す。

だが。

《まちがいさがしです。それくらいです。おうさまの、ほんもののしゅつりょくをおみせください》

いくら俺でも、ここまで急激に出力があがると、それを使うことに恐怖を覚える。

だが、これ以上、先輩方に恥をかかせられない。

これ以上、恥ずかしい姿をさらしたくない。


だから、俺は、こう叫ぶ。


「爆ぜろ炎剣! レーヴァテイン解放!!」

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