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BMP187  作者: ST
第五章『迷宮の突破者』
301/336

天竜無双 ~騎士の槍~

【戦況報告(紅12対白9)】



「13式:激戦衝」


破壊音と共に、旧校舎の壁が砕け散る。

九尾を叩きつけて衝撃で対象物を破壊する技なのだろう。

壊れた壁の向こうからは、九尾を身に纏った天竜院透子先輩が見える。


「あの人は、ターミネーターかっ!」

出入口に砲撃城砦ガンキャッスルを構えて準備していたのに、壁を壊して侵入されて意表を突かれた峰達哉が叫ぶ。


「さすが、天竜院先輩。相変わらず、完璧なまでにお美しいぜ……」

「いや、美しいでいいのか、あれ!?」

珍しく、峰が三村に突っ込む。


なにはともあれ、まともに闘って勝てる相手ではないので、上の階に向かって逃げ出す二人。


「しかし、どうする? バトルマニア的に何か策はないのか?」

「……左脚を痛めているな。付け入るスキがあるかどうかは分からないが……」


まさか策があるとは思っていなかったので、峰からの回答に三村は驚く。


「あの人に怪我をさせるとか、どんな化け物だよ……」

「澄空か剣だろう」

まぁ、他に居ない。


「ダメージ無効化結界があるのに、なんでダメージが残っているんだよ……」

「澄空だな」

まぁ、他に居ない。

原理は不明だが、なぜか澄空悠斗の一部スキルはダメージ無効化結界を貫通する。


「伏せろ峰!」

「っ!」

三村に頭を押さえつけられた峰の上を、光輝く帯が通り過ぎていき、階段の手すりを切り飛ばす。


「66式:神薙か……」

「澄空の同級生の俺が言うのもなんだが、あんなのを高校生の模擬戦闘に参加させないで欲しいんだが……」

天竜院透子との戦闘経験の有無が影響しているのか、いつもと違い、峰の方に弱気な発言が目立つ。


「しかし、どうする? このまま上に逃げても……」

「そうだな、降りるか」

峰に答える形で窓を開け、峰の肩に手を伸ばす三村。


超加速システムアクセル連携起動チームプレイ

峰を力場で保護したまま、加速度を調節した超加速システムアクセルで、旧校舎から中庭に脱出する三村。


「よし逃げるぞ」

「その迷いのなさが今は心強いな……」

珍しく三村を褒める峰。


だが。

彼らの横を通る形で、光の帯が旧校舎の窓から地面に伸びてくる。


「32式:白雲渡り」

光の帯の上を滑るように。

さきほどの超加速システムアクセル以上のスピードで、三村達の前に天竜院透子が降りてきた。


「やっぱり逃げるのも無理か……」

「やるしかないようだな」

腹をくくる、三村と峰。


「良く見ると、確かに左脚を庇っているな……」

「それでどうにかなる実力差ではないが……」

「いや、俺に少し考えがある」

珍しく主体的に戦術を考案して、峰に伝える三村。


それなりに長く付き合ってきたコンビなりに、極めて短い時間で作戦を確定させる二人。


「……やる気になったか」

九尾を従え、左脚を庇いながらも、抜刀する天竜院透子。


「……本当にあれと闘わないとだめなのか……?」

「抜刀の天竜院先輩と闘えるとは光栄だ」

「……おまえ、本当に三村だよな?」

三村と透子の因縁を知らない訳ではないが、あまりに男らしい三村に狼狽してしまう峰。


「71式:天鎧」

九尾が透子を庇うように展開する。

銃帝・飯田謙治の銃撃すら自動で防ぐ絶対防御陣形である。

砲撃城砦ガンキャッスル!」

そこにあえて空圧弾をぶつけていく峰。


(防御能力が高いのはもちろん、九尾一本あたりの耐久力も凄まじい……!)

空圧弾の威力は、飯田謙治の銃撃よりも高い。

だが、その空圧弾を連続でぶつけても、天鎧を破れないどころか、全く動かず待機している尾すらある。

つまり、全然攻撃力が足りていない。


「(三村……)」

「(十分だ。注意を引き付けるだけでいい)」

アイコンタクトで通じ合う二人。

さりげなく、三村が峰の背に姿を隠す。警戒されないように。


そして。


「事象探索式選択憑依型自己強化ブースト……」

賢崎所有の怪しげな施設の怪しげな美少女に授かった『どこかにある可能性』を無理やり引っ張ってくるチート級の自己強化を纏い。


絶対加速システムゼロ!」


峰の背後からスタートし、九尾の警戒圏すら潜り抜け、透子の背後に瞬間移動する。

「な……に!」

途中過程なく死角を取られたというのに、反応して背後に振り向いてくる透子。


拘束式猪突猛進バインドドライブでどうにかなる状況ではない。

(いくぞ……!)

やれる。

いや、やるしかない。

猪突猛進オーバードライブの派生技にして完成形。

加速せずに加速するという矛盾をねじ伏せる、零距離からの突進攻撃。


零距離式猪突猛進イノセントドライブ!」

「!」

脚は全く動かさず。

身体を加速させることもなく。

『加速する意思』のみを拳に込めて放つ渾身の右ストレート。


この技が完成してれば、ルーキーズマッチで犬神彰相手に金星を挙げることすら可能な技。


……だったのだが。


「…………やっぱり強いなぁ……」

透子の左手で受け止められた自らの右拳を見て、三村が呟く。

「驚いたのは、私なんだがな……」

透子の左手に九本の尾が全て巻き付いている。

天竜院流94式:九掌。

九尾の全力をもって、ただ一つの攻撃を止める防御技である。


「まさか、君相手に九十番台を使う日が来るとは……」

「少しは見直してくれました?」

「少しどころではないな」

納刀し、左手に巻き付いていた九尾を解き、その尾で三村の身体を縛り上げる透子。

「て……天竜院先輩……! 激しすぎます……!!」

「以前闘った時に言わなかったか? 私の身体に触れたければ、竜の咢に手を突っ込む覚悟で来いと」

九尾の数本で拘束した三村の胸元を、さらに透子が右手で掴み上げる。

「……言ってたし、今まさにそんな感じです……」

何かをあきらめたような感じの三村。


「本来受け身不可の投げ技だが、右手だけは自由にしておいた。しっかりと受け身を取れ」

「天竜院先輩、慈悲深いぜ……」

慈悲深い人は一般的に受け身不可の投げ技を選択しない可能性が高いが、とりあえず受け手が納得しているならば、慈悲深いということにしていてもそんなに問題はない。


「次……。次があればだが……。今度こそ私が負けるかもしれないな……」

「? 天竜院先輩……?」

「なんとか生き延びて……。いつの日か……。騎士の槍が天の竜を貫く日が来ることを楽しみにしている」

「え?」


とん、と軽くジャンプをする透子。

空中で急激に三村の身体の向きが変わる。


「88式:紅霞」

地面が爆発するような衝撃を伴って、三村の身体が地面に叩きつけられる。

透子の指示通り三村は完璧な受け身を取り、ダメージ無効化結界も正常に機能したが。

三村は意識を失った。


「さて……」

透子が峰に振り返る。

「続きをしようか……峰君」

「俺を澄空の前座程度の男だと思っていると痛い目を見ますよ」

空圧弾を撃つ体勢をやめ、意識を研ぎ澄ませる。

実力差は明白である。

だが、万が一、爆撃領域ビーストイーターで九尾の制御を奪うことができればワンチャンスがある!


「君こそ」

だが。


「私が実力差がある程度で油断するような女だと思っていると、痛い目を見るぞ」

「…………」


やっぱり駄目かもしれなそうだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] そういえば三村と天龍院の因縁ってもう出てましたっけ? [一言] すっかり遅れましたが300回突破おめでとうです
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