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BMP187  作者: ST
第五章『迷宮の突破者』
292/337

天竜無双 ~淑女の刃~

新月学園には、『裏新月祭観戦用VIPルーム』というものがある。

各界のVIPが将来有望なBMP能力者を見染めたり、若き新月学園生達の闘いを眺めながら特に関係のないVIP同士のコネクションづくりをしたりする部屋である。

壁一面に裏新月祭用の監視カメラと連動したモニターが並んでいるこの部屋は、裏新月祭時以外には何に使っているのか、非常に気になるところだ。


裏新月祭開催当日の朝、俺は、そんな部屋に、賢崎さんに呼ばれて来ていた。


「なんでこんな部屋に?」

「私は新月学園生であると同時にVIPでもありますので」

という賢崎さん。

そうだった。この人は、新月学園生であると同時に大学(※どっかの有名大学)卒業者であり、最強BMP能力者の一人であり、企業経営者(※VIP)であり、眼鏡系(※戦闘時は時々外す)美少女であり、BMP能力者の守護者たる賢崎一族の次期後継者なのだった。

「……漫画みたいな人だな……」

「【澄空さんの婚約者候補】は入れました?」

「へっ……?」

「冗談です」

……び、びっくりした。

心読まれてるじゃないか……。


「裏新月祭は少しルールがややこしいので、復習に協力しようと思ったんです。どうせソードウエポンはそういうことに無頓着でしょうから」

「ご、御明察です……」

家庭でのことまで読まれとる……。


「基本的にはこんな感じですね」



○裏新月祭の基本ルール

1:ダメージ無効化結界はあるが、精神へのダメージはあるので、大出力系BMP能力の使用は自己責任で。

2:胸元に差した薔薇の形をしたデバイスを、奪われるか破壊されると敗退となる。

3:紅組・白組はそれぞれ30人ずつ。どちらかのチームが全員敗退すると試合終了。

4:1対1の戦闘が基本。同チームの複数人が集合している場合、薔薇デバイスから警告が入る。即離れないと、敗退扱い。

5:バトルフィールドは旧校舎を中心とする一区画。場外に出ると即敗退となる。

6:薔薇デバイスは燃やすことも可能。



「どうです? きちんと頭に入ってましたか?」

「…………」

……初めて聞いた。


「……今、初めてルールを聞いたという表情ですね……」

「すみませんです……」

表情まで読まれた。


「気を付けるべきは『4』のルールです。運次第では多対1の状況もあり得ますので、実力者でも簡単に負けることもあります。『2』のルールにより、薔薇デバイスを破壊されても負けですし……」

「な……なるほど」

やばい。

ルールを知らないとエラいことになるところだった。

というか、このルールを理解せずに俺が裏新月祭を勝ち残れると信じている麗華さんの信頼が重いやらエラいやら。


「……そういえば」

「? どうしました?」

「『6』はどういう意味があるんだ? 壊せるんだから、燃やせるのは当たり前だと思うんだけど」

「ああ、それは特別ボーナスみたいなものです。なかなか難しいので、【ローズブレイカー】の達成者は過去、城守さんだけだったと記憶しています」

「?」

城守さんだけ?

ただ、火で燃やすだけという訳じゃないのか?


などと思っていると、賢崎さんがくすっと笑った。

「達成条件は内緒にしておきますね。澄空さん、こういうのなんだかんだで達成しちゃう体質ですから。少しは面白くしたいです」

「?」

そんな体質、あるんすか?



☆☆☆☆☆☆☆



【戦況報告(紅30対白30)】



裏新月祭開始後10分経過したが、まだ敗退者は誰もいない。

フィールドはそれなりに広大とはいえ、そろそろ誰かが戦闘開始してもおかしくないと思っていた白組・本郷エリカは、旧校舎第1別館の廊下で、いきなり最悪の相手と出くわすことになった。


「テ……天竜院先輩……!」

「エリカ君か……」

美人でスタイルがいいのは間違いないが、それを感じる余裕がないほどの肉食獣のような覇気と腰に下げた刀の迫力が半端ではない。

たとえBMP能力を使えることを知らなかったとしても、このルールで一番会いたくないタイプの人間だった。


「廊下のど真ん中でじっと立っているから妙だとは思っていたが、すでに罠を設置済みだったか」

(あアア……バレてマス……!)

豪華絢爛ロイヤルエッジ……。体育祭の時は何とか視認できたが……、あの時よりもさらに洗練されている。俄かには信じがたい隠蔽率だな……」

(体育祭ノ時、見えタンですカ……!?)

三村はもちろん、悠斗や小野でさえ見えていなかったというのに。

(デ……デモ、今は見えテいないトイウことデスよネ……?)


「52式:会敵柵」

わずかな希望を一蹴するかのように、天竜院透子の腰のあたりから伸びる光の尾が空間に張り巡らされる。

傍目にも分かるほど、はっきりと豪華絢爛ロイヤルエッジの位置が明らかになる。

「あ、アア……」

とてもではないが、本郷エリカの敵う相手ではなかった。


天竜院透子は抜刀すらせず、しかしわずかの油断もなくエリカに近づいていく。

「~~~~」

エリカは逃げることすらできず、その場でへたり込んでしまう。

「っ!」

が、次の瞬間、透子は大きく飛びのいた。

完全に不可視化された刃の一つが、背後から襲ってきたのだ。

(一つだけとはいえ……、この隠蔽率で動かせるとは……)

「マダっ!」

今度は、なんと不可視の刃を手でつかんで投げつけるエリカ。

「ふっ……!」

しかし、透子はほとんどそちらを見ずに、抜刀して切り払う。

「は……ハえっ……?」


「86式:女郎蜘蛛」

「ヒッ……」

透子の光の尾……九尾のうち数本が、エリカを拘束する。

エリカは両手を上げたポーズで、身動き一つとれなくなった。


「恐ろしい罠だったな……」

特にそう思っている風もなく、拘束されたエリカの前に立つ透子。

「カ……勝テルとは思っテなかッタですケド……」

「見た目は妖精のように麗しく、刃は死神のように鋭いが……。人を騙すには、君は誠実すぎるな。誰かを支えて闘った方が向いているようだ」

そういって、エリカの胸元の薔薇デバイスに手をかける透子。

「無念デス……」

「すまない……な?」

言い終わらないうちに、透子がふっとエリカから身体を離す。


「え……エ……え?」

九尾による拘束も解かれて、疑問符を浮かべるエリカ。


「2対1か……?」

「冗談だろう?」

透子が視線を向けた廊下の先から、二丁の拳銃を構えた裏新月祭参加者が姿を現す。


「澄空に譲らないといけないからな。五帝でいるのは今日が最後なんだ。五帝最強をかけて勝負させてくれよ、剣帝」

そう言って、構えを取る銃帝・飯田謙治。


それを聞いて天竜院透子は……。


「喜んで」


ニイッと獰猛な笑みを浮かべた。

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