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BMP187  作者: ST
第五章『迷宮の突破者』
290/336

作戦会議(アンフェアな内容も含む)

「強かったねぇ……」

天竜院透子に付き従う【五竜】の一人、風間仁美はしみじみと語った。

舞台上で澄空悠斗と闘った後の、風紀委員室でのミーティングである。


「舞台上でなら強力なBMP能力は使えず、本当の実力を測ることができる……。強さだけは認めざるを得ないな……」

「…………」

良き笑顔で認めてしまっている金森貴子と、『認めてどうするの……。透子様が死んじゃうかもしれないんだよぉ……』といった表情で見つめる水鏡彩音。


「条件は同じだったけど……。全能力解禁となるとますます勝ち目はなくなるわね……。透子様ですら勝てないかも……」

「すでに一度完敗してると思うんですけど……」

「……そうだった……」

色々と現実を受け止め切れていないリーダー火野了子に、特に悔し気な様子もなく諭す土御門凛。


澄空悠斗が想像した通り、舞台での戦闘は、演劇部に彼が巻き込まれたことを知った五竜が、演劇部部長の徳大寺に依頼して参加したものだった。

裏新月祭での闘いに向けて情報収集をするつもりだったが、レベルの違いを露呈する結果となったのだ。


「しかもこんなことになっているし……」

と火野が指し示すのは、さきほど情報提供された裏新月祭のメンバー表である。

主要メンバーはだいたいこんな感じだった。


○紅組

・天竜院透子

・式春香

・式雪風

・火野了子

・風間仁美

・土御門凛

・金森貴子

・水鏡彩音

○白組

・澄空悠斗

・剣麗華

・三村宗一

・峰達哉

・本郷エリカ

・飯田謙治

・火村直樹

・雪藤薫子


「数は互角だが……」

「澄空君と麗華様は反則だよねぇ……」

金森と風間が頭を抱える。


「澄空君と闘う前に麗華様に負けてしまえば、それで終わりだからね……」

難しい顔の火野と「麗華様なんで出場するんだろう……。透子様が死んじゃってもいいのかなぁ……」といった悲し気な表情の水鏡。


「賢崎藍華が出場しないというのが不幸中の幸いね……」

「式の鬼子も出るようだが……?」

「敵になるよりは百倍いいけど……。あの人が想像通り動いてくれることはまずないと断言できるわ……」

リーダーらしく金森の質問に答える火野。


「やはり、透子様と闘う前に、私達で澄空君を倒すのが一番と思います」

「それこそ、ついさっき完敗したばかりではないか……?」

「裏新月祭は薔薇を奪えば勝ちですから、やりようはあると思います。ただ、5対1の状況にするのが最低条件ですが……」

難しい顔で思案する土御門。


「裏新月祭のルール上、複数で闘うのは難しいわね……。しかも5対1となると、何らかの不正をしないと……」

「リーダー……。私達、透子様のためなら、今更退学なんて怖くないよ」

「それは私も同じだけど、そもそも技術的に可能かといった問題が……」


「ずいぶん面白そうな話をしているのね?」


唐突に現れた声に、全員が身構える。

戸を開けた気配すらなく、文字通りいきなり現れたのである。

こんなことができる存在は一体しかいない。


「迷宮の幻影獣……!?」

「すっごく面白い出し物だったわよ? 養護教諭辞めなければ良かったかな?」

悪びれず、とらえどころのない笑顔を浮かべるのは、やはり四聖獣ミーシャ・ラインアウトだった。


「今度は何の用だ……!? 貴様のせいで、我々は透子様に見苦しいところを見せてしまったのだがな」

「いやぁ……、透子さん、折り重なってぐーぐー寝てる貴方達を見ても、あんまり驚いてなかったわよ」

「それはそれでつらいにゃぁ……」

否定するほどの根拠もなく、うなだれてしまう風間。


「ま、できない子達だとしても、そちらの美人さんが言うように5対1ならどうにかできるなら、手助けしてあげてもいいわよ」

思いがけない申し出に、一瞬、五竜の動きが止まる。


「一体、貴方は何を企んでいるの? 透子様も貴方と何を話したのか詳しく教えてくれないし……」

「取り乱して不適切な行動をとっちゃったからね……。後でソータに会った時のために言い訳のネタを作っておきたいのよね」

「言い訳だと……?」

「天竜院透子は、これから必要になるのよ。将来的に……あとわりとすぐに。死なせないようにすると、悠斗君の利益になるでしょう?」

「その言い方……、天竜院の掟を知ってるんだね……?」

「最初はギャグかと思ったけど」

風間の問いに笑顔で答えるミーシャ。


「私も一つ聞いてもいいでしょうか?」

「あらなに、美人さん?」

「なぜ、貴方はそんなに存在が薄いんでしょうか? まるで、今にも消えてしまいそうに感じるのですが……」

「あら、分かるの……? 隠してるはずなんだけど」

「生命を感じる能力が若干備わっていまして……」

「私の迷宮ラビリンスはちょっとやそっとじゃ見破れるものじゃないけど?」

「……五竜という呼び名は、神一族にルーツがあるという意味もあります……」

「……神一族? ひょっとして、中央の土……? 黄龍……へぇ」

珍しく驚いたような表情を浮かべるミーシャ。


「ちょっとレベル外かなと思って調べなかったけど……、なるほど、見くびるのは幻影獣の悪い癖という訳ね」

「神一族にルーツがあるといっても昔の話よ。今は、大した力もないわ」

「それを決めるのは、貴方達でも私でもないのよね。……決めた! 貴方達も透子さんと一緒に悠斗君のモノになっちゃいなさい」

火野の発言に対し、突然、とんでもないことを言い出す幻影獣。


「それこそ貴方の決めることではないと思いますが……。それより、質問に答えてもらっていません」

「もうすぐ消えるのは本当よ。悠斗君にやられたダメージは治らないからね。10年くらい生き永らえている幻影獣もいるみたいだけど」

「治らない……だと? どういうBMP能力なんだ……?」

「BMP能力というより、悠斗君個人の特権といったほうが近いかも。ほら、主人公にやられた悪役って基本退場するでしょ? そういうノリだと思うわ」

やられたミーシャ自体は気にしていないようだが、まともな感性を持って聞く側には底の知れない不気味さのある話だった。


そして……。


「……分かったわ」

「え?」

五竜リーダー・火野了子の唐突なセリフに、ミーシャも一瞬疑問符を浮かべる。


「貴方の提案を受け入れる。澄空悠斗を倒すために、共闘しましょう」

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