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BMP187  作者: ST
第五章『迷宮の突破者』
280/336

出場の波紋

「澄空君が、裏新月祭に出場する!?」

風紀委員室で執務中だった、風紀委員兼五竜筆頭の火野了子は、思わず叫んだ。


「なぜだ……。出場しないと言っていたのに……」

「今更『境界の勇者』が学園に要求もないと思うし……。ささみチーズフライはずいぶん前に学食に復帰してるよぉ、澄空君……」

「…………?」

疑問を口にする金森貴子と風間仁美の会話に、「ささみチーズフライって何?」といった視線を向ける水鏡彩音。


「透子様が『一瞬で勝負が付いてしまったから、できればもう一度闘いたい』と言っていたけど、澄空君も同じようなことを思ったのかも……」

額に手を当てながら、火野が呟く。

「透子様が思ったより手ごわかったから、興味を持ったということか? 武に関わるものとして分からなくもないが……」

「こっちはもっと深刻な事情があるのにぃ……」

金森の推察に、風間が半べそをかいたような顔で続く。


「事情を話して辞退していただくことはできないのでしょうか?」

三村曰く「五竜の中で一番美人」らしい、土御門凛が意見を言う。

「麗華様と一緒に暮らしているのよ……。事情を知らない可能性は低いわ……」

「じ、じゃぁ、透子様に死ねってこと……」

「死にたくなければ、辞退してしまえってことかもしれない。あんな顔して恐ろしい男だわ……」

「そのくらいでなければ境界になど至れないのかもしれないが……。正直、意外というか……幻滅だな……」

「最低よ」

「…………」

「……そうね。透子様は逃げられない。天竜院が愚かと言えばそうなんだけど……」

リーダーらしく、火野がメンバーに答える形で話が進んでいく。


「大事な話です。推測ではなく、澄空君が事情を知っているかどうかは確認するべきでは?」

土御門が冷静に窘める。

「そ……そうね。それは最低限やっておかないと」

火野も同意する。

「私は、澄空君はそんなにひどい人じゃないと思う」

風間は悠斗を信じている。

「そうだな。いくら強くても情けを知らない者を透子様が認めるはずがない」

金森も、透子が認める者は信じられる。

「…………(こくこくりと)」

無口な水鏡も異論はないらしい。


たかが文化祭ではあるが。

真なる竜に付き従う五竜にとって、最大の試練が訪れようとしていた。



☆☆☆☆☆☆☆



「というわけで、本日から我がクラスの一員となる、式雪風君です(はーと)」

「「…………」」

(はーと)を付けようが付けまいが、緋色先生の『というわけで』に説明が付属されていないのは今更ながらの話だが……。


「あの……緋色先生。ずいぶん若い……というか小学生くらいに見えるんですが……。あ、いえ、先生の見た目ではなく、式君の話ですが」

「雪風君は小学生よ。うちの高校は学力及び実力か、やんごとない事情があれば飛び級は難しくないわ。まさにやんごとない事情で入学した人に批判する権利はないと考えます」

「…………」

その考え方には大筋合意するが、今質問したのは俺ではなく増田君ですよ、先生……。


などという俺と先生の心理戦はおいておいて……。


「…………(ぺこりと)」

なぜか妖艶ささえ感じる無垢な表情でお辞儀をする雪風君。

途端に女子(+一部の男子)が色めき立つ。

……まぁ、見目麗しい学友が増えることに文句をいう者はいないか……。

「ちなみに、お姉さんの式春香さんも上のクラスに転校してきてます」

「!?」

異議ありです、先生!

いくら見目麗しい学友でも、ケースによっては異議おおいにありです、先生!

……などとこの場で言っても仕方がないが……。


「あと、ちょっと理由があって雪風君は言葉を発することはないから、みんな工夫してコミュニケーションをとって頂戴」

深刻かつ難しいことをさらっという緋色先生に、当然のごとく頷くクラスメイト達。

……このへんは、最上位成績クラスだと感じるなぁ。

温かい笑顔に迎えられながら、指示された自分の席に向かう雪風君。


「では、本日のホームルームはここまで……」

「待って、緋色先生」

ホームルームを終了しようとした先生を意外な人物(※なんと麗華さん)が止める。


「ホームルームで討議して欲しい議題がある」

「め……珍しいわね。というか……珍しいわね」

動揺したのか、語彙が出てこなかった緋色先生。

「? ダメ?」

「ダメではないけど……。世界の救い方とかそんな話はちょっとホームルームには荷が重いかなぁ……」

「ホームルームでそんな議題は出さない」

(※無表情ながらも)心外そうに言う麗華さん。

でも、俺もちょっと思った。


「議題は悠斗君のこと」

「へ? 俺?」

寝耳に水である。


「【澄空展】なのに悠斗君がキャストに居ないのはおかしいと異議を申し立てたい」

「そこ!?」

他ならぬ俺が声を上げてしまう。

確かに俺はキャストから外れていたが……。


「しかし、剣さん。澄空君には【澄空展】に展示する証言を提供するという重大な役目があります」

と、増田が言う。

「でも、当日は役目がないし。ウェイターなどで触れ合うことで、より悠斗君の人となりを発信できると思う。100年前には握手会及び総選挙商法で大ブレイクしたアイドルユニットがいると三村が言っていた」

俺は頭を抱えた。

麗華さんはなぜ三村と話をしてしまうのだろう。


「しかし、あえて表に出さないことで神秘性が増すという考え方もあります」

再度、増田が言う。

「もちろんそれも一理あるけど。三村が『たまたま美男美女でキャストが組めたし、澄空はあえて入れないほうがいいかもな』と言ったのが、気になる」

「…………」

三村君。

俺の陰口は、俺に言ってもいいけど、麗華さんに言われると困る。

困ることが起きる。


「もし、悠斗君の容姿が原因でキャスト漏れしたと言うのなら、暫定恋人として、えと、美少女枠? である私が、『悠斗君はそこそこイケメン』? と異議を申し立てたい」

申し立てないで!

と心の中で言ってみるが、もちろん誰にも聞こえていない。

というか、麗華さんのセリフは三村が考えたものと思われる(※「?」が付いてたし)。

俺の暫定恋人は、なんであんなに三村のことが好きなんだ?


「し、しかし、麗華様! 確かに戦闘時の澄空君は卒倒しそうなほどイケメンですが、通常時は、なんというか、率直に言って落差が大きいかと!」

クラスメイトに「様」付けする女性徒は倉咲京子さん。

なんで「様」を付けるかと言うと……、麗華さんのことが好きなんだろうたぶん。


「……戦闘時と通常時でそんなに変わるの……? 悠斗君」

自信をなくしたように俺に聞いてくる麗華さん。

いや、俺に聞かれても。


「あの……私は普通にイケメンだと思うんですけど……。雰囲気補正とかじゃなくて……」

「私は……やっぱり雰囲気イケメン系かなと……。いや、ブサメンでは決してないけど……」

「……結構、振れ幅が大きいんだよな、顔面偏差値」

「それぞれ好みの顔のタイプはあって当たり前なんだけど……」

「なんか違和感があるよな……」

教室に困惑した空気が漂い始める。

俺は帰りたい。


その時、パンっと音がした。

緋色先生だった。


「BMP能力者のプレッシャーね」

「「?」」

クラス中の疑問符を受けながら、緋色先生の言葉は続く。


「BMP能力者のプレッシャーは本人の『主義主張』だからね。無言で終始魅力を発信しているというか……。BMP能力者に美男美女が多いというのは、単純に顔のつくりがいいだけじゃなくてそういう事情もあるのよ」

まじで!

じゃあ、高BMP能力にも係わらずフツメンの俺にも罪はないんですね!?

「いや、実際に顔のつくりがいいBMP能力者が多いのは確かなんだけどね」

「…………」

せっかく生まれかけた希望を確実に折り取りながら、緋色先生の説明は続く。


「悠斗君のプレッシャーは威圧感がないという特徴はあるけど、『主義主張』はしっかり発信されてるんだと思うわ。しかも不安定……というかきまぐれだから、受取側によって印象が大きく変わるのよ。私の見る限り、出力が安定しないだけじゃなくて、場合によっては自分のことを悪く発信している時もあるわ」

マジですか!

自分的には徹頭徹尾フツメンのつもりなのだが……。

俺の顔面偏差値がそんなややこしいことになっていたとは……。


「麗華様! いくら澄空君が本当はイケメンだとしても、受取側によって評価がブレブレではまずいです。『クラスで3番目だか5番目に可愛い女の子』とかいうコンセプトで大ブレイクしたアイドルユニットが100年前に存在したように、アイドル稼業で大事なのは安定感です!」

倉咲さんが熱弁をふるう。

……ひょっとして、この人、ただ単に麗華さんと会話したいだけなのではなかろうか。


「く、倉咲さんの言うことも一理ある……」

追い込まれる麗華さん。

今更ながらに我がクラスの名誉のために言っておくが、俺がキャストをするかどうかを問題だと思っているのは麗華さんと増田と倉咲さんだけ(※おそらく倉咲さんは除く)である。


「ゆ……」

麗華さんの瞳がすっと細くなる。

カラドボルグ全開時に似たその瞳を見た時に、俺は猛烈に嫌な予感がした。


「悠斗君は、女性化時には、結構美人」

「「!!」」

クラス中に衝撃が走った。


「そ……ソードウエポン! 何を言ってるんですか!?」

ここまで無干渉だった賢崎さんが、さすがに口を出す。


「証拠もある」

「いや、そういう問題ではなく!」

表情からは分からないが、かなり切羽詰まっているらしい麗華さんは、賢崎さんの静止も聞かず、カバンからタブレットを取り出そうとする。

俺のために切羽詰まってくれるのは嬉しいが、正直、そのネタはやばすぎる!


「麗華さ……!」

カバンの上から手を押さえつけようとしたのだが、蚊にたかられたほどにも感じていない麗華さんの動きを一瞬たりとも止めることができない。

振り払おうとする素振りさえなく、ただカバンからタブレットを取り出す動作で、俺は振りほどかれて尻餅を着いた。

あ……相変わらず、あの細腕のどこにこんなパワーが。


などと言っている間に、屋上で俺が女性化した時の画像がクラスに公開された。


「な……」

「え」

「あ」

「う……」

クラスメイトの発する声は様々だったが。

今度の反応は共通していた。


誰かがそれを言葉にする。


「……美人やぁ」

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