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BMP187  作者: ST
第五章『迷宮の突破者』
261/336

追想~しゅうまつにむかうまえに~:現実~天竜の気持ち~

★☆★☆★☆★



月夜と食べる夕食時。

恒例となったアニメ『絶対無敵! BMPブレイバーズ』を見ながら、僕がチャーハンの素で適当に作ったチャーハンを二人で食べていた。付け合わせの野菜は、スーパーの出来合いだ。


「悠斗。最近、BMP能力の訓練をしているという話だけど」

「付き合っているだけだよ。僕にはBMP能力はないみたいだし」

「どんなことをしているの?」

「間は本当にBMP能力を覚醒したみたいで、十六夜師匠に、なんか色々教わってる。緑川は何が楽しいのかずっと応援に来てて……、僕と真行寺はインパクトスペルの練習をずっと」

なお、チャーハン、めっちゃ美味い。

やっぱり、チャーハンはガーリックやでー。


「インパクトスペル? あれは掛け声程度の意味しかないと聞いているけど?」

「師匠のBMP能力には、タイミングを取るか何かで必須なんだってさ。真行寺は、師匠と同系統のBMP能力を発現するらしいよ」

「悠斗は?」

「……ついでらしい」

自分でもなぜ今だに付き合っているのか超絶謎である。

ひょっとして、僕は自分で思っている以上にお人よしなのかもしれない。


「ちなみにどんなインパクトスペル?」

「師匠のインパクトスペルは技ごとに決まっていて、今やってるのは、殲滅結界シャットダウンって技らしい」

「……なんとなく強力そう」

「師匠の最終奥義らしい」

と僕が言うと、月夜が眼を見開いた。


「いきなり最終奥義?」

「奥義は基本の中にある。ならば逆もまた然り。らしい」

「良く分からないんだけど」

「僕も全然分からない」

いや、まじで。


「一度師匠が実演してくれたけど、地形が変わりそうな技だった」

「基本なんだよね?」

「基本らしい」

師匠はそう言ってた。


「あと、『この技は誰かを守るために使う』だったかな?」

「? 地形が変わるんだよね?」

「地形は変わる」

でも、師匠はそう言ってた。

……他にも何か言っていたような気がするけど。


「ずいぶんと変わった師匠さんみたい」

言いながら、月夜は少し笑っていたように見えた。

勘違いかもしれない。

月夜のことは師匠以上に良く分からないから。



『一生一度の本気モードを!』



「ん?」



『BMP能力全開! ブラックアウトランページ!』



唐突に、テレビから叫び声がした。

どうやら、いつの間にかクライマックスになり、ランページちゃんが必殺技を放ったらしい。

ちなみに、ブラックアウトランページとは、世界を黒く塗りつぶす技らしい。実際に画面が真っ黒になり、元に戻った時にはだいたい敵は滅んでいる。細かい説明は一切ないけど、なんか凄いのだけは分かる。


「あれもインパクトスペルの一種だよね」

「まぁ、そうかもしれない」

月夜のセリフに何となく返す。


「私も、あんな感じでやってみようかな……」

「? 何を?」

「最期に、世界を黒く塗りつぶす必殺技を使うとき」

「…………」

なんかとんでもないこと言い出した。

……そういえば。


「月夜のBMP能力って、どんなものなの?」

「……ふむ」

と、何を思ったのか、僕の目をじっと見てくる月夜。

「悠斗、今、何を飲んでる?」

「? 牛乳を飲み終わったところだけど……?」

……あれ?

僕の目の前には、8割ほどまで満たされた麦茶の入ったコップがある。

あれ?

牛乳は?

……いや、そもそも、僕、牛乳っていつ買ったっけ?


「……なにこれ?」

「これが私の【アイズオブブラック】。記憶を書き換えることができる」

「……怖いんだけど」

「発動条件は「目を合わせる」だけで、防御不可。書き換えることができる記憶の質にも量にも制限がないからね。アイズシリーズの頂点だと言える」

「……超絶怖いんですけど」

「なお、アイズシリーズの頂点だから、他のアイズシリーズの効力を全て無効化する。相手がアイズシリーズの能力者でも全く問題なく効果を発揮することができる」

「……無敵じゃないですか」

……というか。


「なんで、月夜、世界征服とかしていないの?」

「? そんなもの、何が楽しいの?」

「…………」

そう言われると、何が楽しいんだろう。

『絶対無敵! BMPブレイバーズ』の悪役組織・ホワイトウィドウズの面々は大喜びで世界征服してたけど。


「でも、少なくとも、僕の相手をしていていいような人には思えないんだけど……」

「そんなことはない」

いつになく強い口調で、月夜は言い切った。


「……私のBMP能力は、歴代の黒神当主の中でもかなり強い」

「え?」

終末標準ラグナロクスタンダードに近いことが起き始めているのかもしれない」

「……へ?」

何スタンダードって?


「……これから先、強力なBMP能力者と幻影獣が次々生まれてくるということ」

「そ、そうなの?」

「とりあえず、悠斗と同い年に最強のBMP能力者がいる」

マジで!


「あとは、一つか二つ上の……賢崎に、全属性使い(オールマスター)がいる」

「お……オールマスター?」

『最強のBMP能力者』の話をさらっと流そうとしたので食い下がろうとしたが、『オールマスター』さんもメチャクチャ気になる。


「あとは、『天竜』かな」

「また流した……って、天竜!?」

もはや人じゃないじゃないか。

「そういう通称なだけで、ちゃんと人間」

「いや、そりゃ、そうなんだろうけど……」

そして、貴方の方がむしろ人間離れしている、という言葉はもちろん呑み込むぜ。


「悠斗より少しだけ年上だったはずだけど……。次の『天竜』は色々な意味で特別だから、なかなか自分の天竜にするのは難しいかもね」

「…………?」

なんのこっちゃ?



★☆★☆★☆★



新月学園風紀委員室。

新月学園五帝最強にして、新月学園風紀委員長の天竜院透子と、その忠臣たる五竜が、本日も授業後の執務に励んでいた。


「「…………」」

今日何度目か。

五竜の面々は、透子の表情を盗み見ながら、お互い顔を見合わせる。


ミスが多いとかではない。

だが、微妙に集中していない。

こんな透子を見ることは、五竜の面々でも滅多になかった。


「あの……透子様?」

ついに。遠慮がちに、リーダー格の火野了子が話しかける。

「? なんだ?」

「差し出がましいようですが、澄空君のお見舞いに行ってきてはいかがでしょうか?」

「?」

「……」

「……もしかして、集中できていなかったか?」

「いえ、そんなことはないのですが……」

言いにくそうな了子。


「気持ちは有り難いが、麗華様と鉢合わせする可能性があるからな。今、あの方に何と声をかけて良いのか分からない」

「そうですか……」

「今が一番つらい時期だというのに……。進歩しないな、私は……」

後悔を滲ませる透子。


「あの! 私も聞いてもいいですか?」

今度は、風間仁美が声をかける。

「なんだ?」

「もし澄空君が目覚めたら、透子様は澄空君の天竜になるんですか!?」

『聞いちまったぜコヤツ!』的な他の4人の目線も気にせず、まっすぐに透子を見つめる。


「魅力的な計画ではあるがな……。麗華様が傍にいる以上、難しいだろうな」

「澄空君だったら、二人同時攻略ぐらい……あいたっ!」

金田貴子にぽかっと叩かれる仁美。



「彼自身の望みは知らないが、目指すべき場所が遥かな高みであることは明白だ。今の私の翼では、おそらくお役に立てないだろうな」

そう言って、歴代最強とも言われる天竜は、静かに瞳を閉じた。

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