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BMP187  作者: ST
第二章『ウエポンテイマー』
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不思議な関係

『クリスタルランス5人目:ダガーウエポン・坂下 陸。(能力名:連携攻撃ラピッドアタック)』の場合


最強BMPチーム『クリスタルランス』は、リーダーの緋色瞳をはじめ、5人中4人が初期メンバーのままだが、一人だけメンバーが交代していた。

それが、彼、坂下陸。ダガーウエポンの称号を持つBMP能力者だ。

『無敵』と言われた前任者には及ばないらしいが、次代を担うホープとして、世界の注目を集める能力者の一人である。


そんな彼が、なぜかこの日、一人で水族館をさまよっていた。


「別に事件が起こりそうな雰囲気もないよな……。先輩方が月に一度の合同練習をキャンセルするくらいだから、よほどのことだと思ったんだけど……」

二人の先輩、茜嶋光と犬神彰が突然『今日、水族館に行くから、練習行けなくなった』と言い出したため、心配して後を追ってきたのだ。


が、電速パルスを尾行をするのは無理だったらしい。見事に捲かれたというわけだ。


「まぁ、単なる息抜きだったら、邪魔しちゃ悪いしな。このところ、忙しかったし……」

幻影獣との闘いで彼女らが疲れを感じているとすれば、クリスタルランスの中ではまだまだ実力不足の自分も原因の一つである。

休息の邪魔はしたくなかった。


「帰るか」

帰って修行しよう。そう思って、踵を返した時だった。


「あれ……」

前方から見覚えのある女性が近づいてくる。

羨望の視線を当然の如く集めながら、とらえどころのない表情で歩いてきているのは……。

「つ、剣さん!」

思わず叫んで駆け寄っていく。


「ん?」

女性が、軽く視線を動かしてこちらを見る。

そんな仕草でさえ、撮影して永久保存しておきたいほど美しい。

「えーと?」

「お忘れですか? 以前、剣さんに挑戦して、ボッコボコに負けた坂下陸です!」

まるで、それが誇らしいことであるかのように胸を張るダガーウエポン。

「ん。覚えてる。あの後、クリスタルランスに入ったって聞いた」

歴代2位のBMP能力値を持つ麗華でさえも、クリスタルランスには一目置いている。

チームとしての実力は紛れもなく世界一だし、アローウエポンこと茜嶋光には、個人部門のBMPランキングでも上を行かれているのだ。

「入ったって言っても、補欠みたいなもんですけどね。なんせ、前任があの人だし……」

「まぁ、そうかもしれない」

前任者、ブレードウエポンと呼ばれる男は、引退した今でも歴代最強と言われている。


「ところで、剣さんはどうしてここに?」

「ん? 悠斗君と見学に来た」

「ユウト? ひょっとして澄空悠斗ですか?」

途端に渋い顔になる坂下。

彼は悠斗には会ったこともないが、、あまり良い印象を持っていなかった。

別に、突然出てきて、いきなりBランク幻影獣を倒して英雄と呼ばれようが、上条博士とあの人が共謀して『彼こそ救世主』とかなんとか国会で演説させてごっそり予算をぶんどっていこうが構いはしない。

しかし、なぜか彼の尊敬するクリスタルランスの他のメンバーがやたらと悠斗のことを気にしているのだ。

特に茜嶋光などは、第五次首都防衛戦以降、あからさまに『ユトユト可愛いユトユト格好いい』などと言い続けている。

どう考えても何らかの接点があるのは間違いないのだが、誰もそれを教えてくれないのだ。


仲間外れにされているようで、面白くはない。


「今から悠斗君のところに戻るけど、一緒に行く?」

と、両手に持った缶ジュースを揺らしながら、問いかけてくる麗華。


一瞬迷った坂下だったが。

「ええ、是非」



◇◆◇◆◇◆◇



「いきなりゴメンな。うちら、クリスタルランスのメンバーなんや」

「え?」

ま、またクリスタルランス?

最近、えらく縁があるな。


「うちは、電速パルスの犬神彰。で、こっちのぽやぽやしてるのが、アローウエポンの茜嶋光」

「え、ええ!!」

また、驚いた。


電速パルスが女性だってのは聞いたことがあったけど、遠距離戦闘系最強とも言われるアローウエポンの正体が、こんなぽやぽやしたお姉さん系の女性だって?


「うん。そういう訳で、私の弟になると色々便利。というか、もう10年前から姉弟だったような気さえするよね?」

しませんよ。

「だから、飛ばしすぎや、光」

「彰は、クールすぎると思う。自分だって凄く楽しみにしていたくせに」

「悠斗君が戸惑うやろ、言うてんのや」

と、なんだか言い合いをしている女性二人。


……訳が分からん。


「という訳で、どうかな? ユトユト」

どうかな、と言われても……。

確かに、こんな美人のお姉さんがいれば嬉しいのは間違いないが。

ここで『分かりました。これからよろしく、お姉さん♪』などと言えるほど、俺は三村ナイズされていない。

「えーと、とりあえず、ちょっと連れがいるんで、また今度ということで……」

「連れ? ああ、ひょっとして、剣麗華? おたくら、同じ学校やったもんな」

ど、どうして、そんな情報まで?

「ユトユト。お姉さんに黙って彼女作るのは良くないと思う。ちゃんと紹介しないと」

そして、いつの間にか、お姉さんになっているし。


「べ、別に彼女じゃないですよ」

同居は、してるけど。

「ほんとに? 嘘、吐いてない?」

「ほ、ほんとです。もう、全然」

「欲しいとも思ってない?」

「お、思ってないことはないですが……。麗華さんは、いくらなんでも、俺とじゃ釣り合いが取れないというか……」

いきなり元気になったアローウエポンに押されるまま、余計なことをしゃべりまくる弱気な俺。


「そっか。分かった」

と、いきなり光さんが、ポンと手を打った。

「ユトユト」

「は、はい」

というか、そのニックネームは、決定なのか?

「ユトユトは、お姉さんより、彼女が欲しいということ?」

「え?」

「そういうことなら、私も彼女で構わない。10年前から、そうだったような気がする」

10年前って、俺、小1ですよ。


「ん? ひょっとして、妻の方がいい?」

『いや、そういうことではなく…』と言おうとした俺の耳に。



「それはおかしい」

聞き慣れた声が耳に入ってきた。


「悠斗君がBMP能力に目覚めたのは、1か月前。クリスタルランスと婚姻関係を結ぶほどの出来事が、10年前にあるはずがない」

麗華さんだ。


一応、助け舟を出してくれているんだと思うだけど。

なぜだろう。事態がややこしくなるような予感しかしない。


それに、横に連れてるイケメンは誰だ?


「うわ! あんた、剣さんかいな? 美人さんになったなぁ……」

猫っぽい方の女性、犬神さんが声を上げる。

「美人さんなだけでは、お姉さんは認めない」

そして、いつの間にかできた、俺のお姉さんの気合いが膨れ上がっている!


「アローウエポンと悠斗君は、血縁関係はないはず。そのくらいは、私も知っている」

「ソードウエポンこそ、悠斗君と同居とはどういうこと? いくら同じ高校に通っているとはいえ、おかしい」

「おかしくない。悠斗君の覚醒時衝動に対応するため、それなりの実力を持つBMPハンターがそばにいる必要がある」

「ならば、ソードウエポンよりBMPランクが上で、お姉さんである私が同居すればいい」

「悠斗君に、お姉さんはいない」


いつの間にやら、物凄い勢いで人が集まってきていた。

どちらか片方でも呼べれば、どんなくだらないイベントでも成功しそうなほどの美女二人が、どこかずれたような言いあいを真剣な顔で繰り広げているのだ。

注目されない方がおかしい。


「あ、あのな、光……」

「つ、剣さんも……。みんな、見てますし……」

猫っぽい女性とイケメンが、美女二人をとめようとしている。

そして、『あんな美女二人が取り合いをするなんて、ユウトって、いったいどんな男前だ』とかいう声も聞こえるが(※真横にいるのに、俺のことだとは思われてないらしい)、俺にも何がなんだか、さっぱり事情が分からない。


まあ、とりあえず。


とりあえず、今日は家探しどころではないことだけは分かった。

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